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第33話 悪役アビロス、チーム戦開始

 学園内の訓練場に移動した俺たちSクラスのメンバー。

 ここも、入学試験会場と同じく特殊な結界が張られており、気絶や死亡レベルのダメージを負うとフィード外に強制退出させられる。本当に死んでしまうことはない。


 よって、通常の武器が使用可能である。


 組み合わせはアビロスチーム対3チームという変則。

 メリンダチームにはステラとウルネラ。

 マノンチームにはマリーナ。

 そして、クレスチームには俺とナリサで対応することにした。


 ウルネラとナリサの実力がわからない以上は、俺の知っている範囲で配置するしかない。


「へぇ~~僕らの相手はアビロス君かい? これはいいな、君をボコボコにして僕の魅力をステラに堪能してもらえるというわけだ~~ハァハァ」


「ねぇ……アビロス君、なんかあの人変だよ」

「ああ、あんまり見ちゃダメだ。俺がクレスとやる。ナリサは、他の2人を抑えてくれるか」

「う、うん。頑張るね、出来る限りアビロス君の足を引っ張らないようにする」


 よし、ナリサの顔がキュッとしまった。

 いいな。こういいう顔ができるやつはたぶん頑張ってきたやつだ。


「よし! では、はじめ! 出し惜しみなどするなよ!」


 ラビア先生の声と共に、訓練場で各自展開する生徒たち。



 んん? なんだあれ?



 ナリサは、小さな試験管のような細い瓶を大量にぶらさげている。西部劇のガンベルトに弾丸が入っているかのように。


 腰から一本取り出すと、クピっと一気飲みする。

 するとナリサの周りから何かがフワリと流れてくる。―――なんだこれ? ―――香り? 


「―――注目の芳香(アテンショナルアロマ)!」


 クレス以外の2人が、フラフラ~とナリサの方へ歩き出した。

 ナリサは続けて小瓶をスッと飲み―――


「―――怠惰の芳香(レイジーアロマ)! さあ試合は始まったばかりです。あせらずゆっくりやりましょう」


「あ、そうだね……えっと俺はネッツだ。君は?」

「ああ俺は……」


 なんだ? 2人が急に自己紹介をはじめたぞ。これ……もしや精神かなにかに影響を与える効果があるのか。



「アビロス君! わたしは高い魔力も、強力な攻撃力も体力もありません! でも―――香りだけは負けないんです!」



 ハハッ、いいな! 【香り属性】とでもいうのか。こんなもの原作にあったかな?

 やっぱこの世界は面白い! こんな戦い方もあるのか。


「ナリサ! 凄いぞ!」

「あ、アビロス君……ほ、本当に?」

「当たり前だ! なにを驚くんだ。とんでもない才能と努力の賜物だろ」

「ふえぇ~~はじめて褒められた~毎日必死に調合していたかいがあったよ~~」

「なに? ナリサ、これは自作なのか?」

「そうだよ。良かったらあとで簡単な調合の仕方を教えるよ? そ、そのわたしの部屋で……そこにしか調合機器がないから……」


「―――マジか!? いいのか?」

「う、うん。わたしは全然いいよ。そ、そのアビロス君が良ければだけど……」


「いくいく! いや~~楽しみだな―――」


「―――アビロス!! 戦闘中ですよ! 

 なにニヤニヤしてるんですかっ! 真面目にやりなさい!」プンっ!


 めっちゃ遠くから怒られた……

 なんか今日、機嫌悪くないかステラ? ウルネラとは上手くやっているのか?


「うわぁ~~聖女さまってすっごい声とおるんだね。まあ、アビロっちが無自覚にねぇ~ナリサもかわいいしねぇ~そっか~~なるほどなるほど~」

「ちょっ!ウルネラさん、余計なことを考えないように! 目の前の対戦相手に集中ですよ!」


 まあウルネラとコミュニケーションは取れているようだし、大丈夫か。内容ははっきりとは聞こえんけど。なんか楽しそうにやっているぽい。



「くっ……ステラだけでなくその娘まで惑わしているのか! やはり君はクソ悪人だな」 


 おっと、俺のターゲットであるクレスを放置していた。

 例によって、こいつとは会話が成立しない。


「どんなクスリを使った! 教えろ! 俺も使ってステラを……ハァハァ」


 いやクスリやってるのおまえだろ……


「クレス! いったいなにを勘違いしているのか知らんが、俺たちもはじめるぞ!」

「へぇ~~クソ悪人の君が僕にかなうとでも?」

「ハハッ、そいつはやってみないと分からないな」

「ふん、わかるさ! ボコボコに叩きのめしてやる!」


 そういうとクレスは獲物を引き抜いた。

 レイピア、細身の剣だ。


 たしかクレスの武器はスピード。そしてその速度を活かした突きが最大の武器のはず。手にもつレイピアがきらりと光る。


「さあ、君を叩いてステラの目を覚ましてあげるよ!」 


 クレスが構える。


 俺も黒刀【ダークブレイド】を抜いて、グッと地を蹴り勢いよく飛び出した。



 さあ―――俺の力がどれほどなのか、試させてもらうぜ!



 いきなり飛び出したのは、クレスのバトルスタイルを考慮してのことだ。

 クレスは素早いフットワークで間合いを詰めて、高速の突きを連発してくる。


 相手から突っ込まれると防戦一方となる可能性があるので、それは避けたかった。


 俺は先制攻撃を仕掛けるために、一気にクレスとの間合いを詰めたのだが……



 ―――あれ?



 なんか打ってこないな? どうした? カウンターでも狙っているのか?


 まあいい―――打たないならこちらからガンガン打ち込んでやる!


 俺は間合いを詰め切ったと同時に、黒刀の斬撃を放つ。

 高速フットワークで回避されて、即反撃される可能性は十分にあり得るが、突っ込まなければ始まらない!


 が、回避もクソもない。クレスにようやく動きがあったかと思うと、レイピアで防御した。


 んん? なぜ持ち前のフットワークを活かさない?

 それにレイピア自体は防御にはむかないぞ。たぶん。


 よくわらんが、俺はさらに斬撃を数回打ち込んでみた。


 またしても似たような対応。

 すべてレイピアでの防御。しかもけっこうギリギリのタイミングだ。


 なんだこいつ、やる気あんのか? いや、なにかの戦術か?


 俺はいったん後ろに跳んでクレスと距離を取った。不気味すぎるからだ。



 ええ! ちょっと待て。なんかもうハァハァ言ってない?

 肩で息しているような。


 いや、それともステラに興奮しているのか? 戦闘中だぞ? うわぁ~~こいつガチの変態かよ……


「へぇ、口だけじゃハァ、ないようだねハァハァ。凄まじい付与魔法だ。まさか全ての身体能力を上げられるとはね……ちょっと驚きだよ。それにクスリもやっているな、無理やり力をあげるヤバイやつをね、ハァハァ」



 ―――はい?


 付与魔法? クスリ? 何を言っているんだ?



 いや、俺は普通に走って、普通に打ち込んだだけだ。しかも様子見でかなりゆるく。


 やっぱこいつヤバいな。クスリのやりすぎで、幻覚をみてるのか? 

 ずっとハァハァ言ってるし。だとしたら実力なんか出せないんじゃないか。



 だが―――



 もしこいつがクスリなんかやってなくて、ただの変態だったら?


 ハァハァが体調不良などではなかったら?



 そうだとすれば俺は……


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