幕間 〈ここらで検証してみようか〉
MBTI診断なる性格診断によると、"俺は寛大で活動的な陽キャ" らしい。
・・・ったく、嘘だろ?
嗤える。実際は正反対じゃん? 全く当てにならない。俺は目立つのが嫌いで、隅っこで地味に過ごすタイプだけど? 髪だけはハイブリーチとマニパニで目立つかもだけど。
で、俺。全然寛大じゃねーし、すっごいねちっこいけど? やられたらやり返さないと気がすまない。『バカか? おまえお子様かよ?』って、自分でも思うけど。
寛大になれてたら、こんな苦労してないって。自分で自分がうっとおしい。
真夜中、ため息交じりで悪霊退散の呪詛を解き放つ時刻をセットした。
***
どんな世界にも生霊のような厄介な存在が漂ってる。
この、"言霊使い" が集まる仮想世界にも、もちろん存在した。
俺はそこのちょっとした "危険ワード" をうっかり踏んでしまったせいで生霊たちに祟られてしまった。知らなかったが、俺のようなタカ派の新参者には、特に取り扱い注意ワードだったようだ。
それについてはやられても黙ってやり過ごすのが正解だったらしいが、もう遅い。
普段は通常モードだが、俺に触れると悪霊化する厄介なアバターたちが現れた。俺に敵意を放ちながらニヤついている。
仮想区内 "言霊使い" が集う地方に送り込んであった俺のナイーブなアバターは、悪霊が放つ臭気に当たって、急激にうまく動かなくなっちまった。
そこの区内に、言霊呪術で創った俺の住処は、地下迷宮の奥の奥の地底湖だった。人知れず静かに清水をたたえていた俺の泉が、悪霊の影響を受けて涸れてゆく・・・
このままでは水は枯渇する。このまま奴らにざまぁとされるのは悔し過ぎる・・・
俺の地底の泉に価値があるかというと、俺以外に価値を見る者などいない。
だが俺はここの整備、建設には、睡眠時間を削って相当の時間を注ぎ込んでる。それなりに頭だって使ったし、俺の経験の結晶が詰まってる。失いたくない。
この仮想空間内の、深き地下迷宮にある俺の泉までたどり着く人は、希少と言える。
稀に誰かが偶然にここまで来て泉を眺めることもあるが、そのまま立ち去る人が大半だろう。
地下迷宮の空気は重く冷たい。俺の泉の水も、凍るかどうかギリの摂氏零度を保ってる。
この区内に集う人たちに好まれ、喜ばれる心地良い温泉とは対極だ。
特に、夢見がちな人には冷た過ぎるから、水面にも触れられやしない。それが俺が一人こつこつ3年かけて作り上げた世界。
俺は俺の言葉の泉を護るために、試行錯誤しながらある術式を創り上げた。
この世界で、言霊以外の裏技の武器を使うのは卑怯者だ。
俺はあくまで正攻法で、練り上げた言霊の呪文を駆使して闘わねばならない。
そのために俺は、良くもない頭を回転させ、悪霊退散の術式を再び組み立てた。
これを解き放つのは丑三つ時。この時間帯は真夜中12時に当たる子の刻よりもさらに魔力が強まる時間帯だ。
真夜中、ため息交じりで悪霊退散の呪詛を解き放つ時刻をセットした。
呪文に効き目はあるのか、自分にも予測できない───
***
───さて、効き目は、アクセス解析というツールで確認出来る。
本当は見るのもストレスだったが、数日後確認した。
悪霊退散は成功したのだろうか?
現代の呪術の極意を駆使した自作の呪詛はどうやら効果はあったようだ。あの日を境に、次話からのアクセスが、突如半数になっていた。
俺をバカにしてニヤニヤ見張ってた奴らが大分消えた?
ただ、俺が痛い人だと呆れられたただけかもしれないが、呪詛自体は本物。理由はどうであれ良い結果だ。
***
地下深くに生息してる俺でさえ、たわいのないきっかけから、知らん人たちから悪意を向けられるようになった。
人に感情がある限り悪意は生まれ続けるのだろう。それは、ほんの些細な出来事から始まることだってあって────
人は羨み、妬み、嫉む。 憎み、嫌い、厭う。 絡み、縺れ、拗らす。
悪意に正当な理由なんていらないさ。
だから、向けられたら極意を持って制すしかない。
どんな世界にいようが人に感情がある限り、誰も悪意からは逃れられない。
もちろんあなたも、ね?