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夏のホラー2023『帰り道』

遭難メモ

作者: 家紋 武範

○月13日

 下山の途中で猛吹雪にあい、カマクラを作って難を逃れる。田端も矢内も無事だ。俺達は、生きて帰ることを誓った。




○月14日

 互いに食料を出しあって平等に分配する。俺は持ち合わせが少なかったが、田端も矢内も快く分けてくれた。持つべきものは友だ。

 それにしても吹雪が止まない。




○月15日

 空は真っ白になったままで方角も分からない。俺達は互いにもう少しの辛抱だと励まし合った。

 しかし、こうも吹雪が続くものだろうか?




○月16日

 矢内が吹雪の中に救助隊を見たと言った。俺達はよろこんで吹雪の中に助けてくれと叫んだが、応答も何もない。何もなかったのだ。ぬか喜びだ。それでも矢内は見たと言う。田端が黙れと小さく言った。




○月17日

 矢内は未だに救助隊のことを口にする。そして食料の食べるスピードが早くなりすぎだ。あれでは明日まで持たないと止めたが、田端はほっとけと言った。矢内は興奮して田端の声が聞こえないようだ。




○月18日

 燃料を節約していたが、矢内が夜のうちに暖を取るために全て使ってしまったようだ。カマクラの中が暑い。田端はストレスいっぱいのようで、ハイテンションの矢内の言うことを全て無視していた。






○月20日

 早く、早く、吹雪よ止んでくれ!!






○月22日

 矢内が死んでいた。





○月24日

 久しぶりに肉を食べた。美味しかった。





○月27日

 まだ田端が食料を隠しているようだ。





○月30日

 もう人には戻れない。





○月34日

 家に帰りたい。




○月44日

 肉尽きる





○月51日

 てお たべて しま た








 □月31日。救助隊は雪の中に手帳を見つけた。しかしその手帳だけで、捜索していた三人の荷物もご遺体も見つからなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 怖い! 「かゆうま」を想起するスタイルですが、三人全ての遺体が見つからなかった、という所が何とも強烈ですね。 一人が二人を食べ尽くしたとしたら、彼は何処へ行き、どうなってしまったのでしょ…
[良い点] 人は異常に寒かったり、飢餓状態とかだとハイテンションになったりすることがあると聞いたことがあります。怖いです。 途中から日記の日付がおかしくなっていくところも怖いです。(2回目) 怖いです…
[一言] 矢内が死んでいた→→久しぶりに肉を食べた 矢内が食われてしまっているということですかね……? 食人鬼に成り果ててしまって、『もう人には戻れない』と。
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