表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乾杯!  作者: 蝶佐崎
5/21

人を想う涙・4

 気が付くと、周りの兵は皆倒れている。単に酔いつぶれただけだ。

 ジルもその中の一人だったらしいが、ふと目が覚めた。

 近くで団長と副団長が肩を寄せあって寝ている。

 ジュンを探すと、外のバルコニーから、夜の景色を見ていた。

「ジュンさん」

 隣に並ぶと、彼女は楽しいとは別種の笑みを浮かべながら、虫が奏でる音と、草が風に吹かれて揺れる音を聞いている。

 やがて彼女は、閉じていた目を開いた。

「ジル君。目が覚めちゃったのかな?」

「みたいです。あの……」

 ジュンが瓶を引き寄せる。そのまましゃがみこむ。

「僕が花を置いた墓は、誰の墓だったんですか?」

 彼女の表情が、強ばった。

「すみません! 無礼でした、やっぱり今の質問無しで!」

「いや」

 ジュンは悲しい表情を隠そうとせず、膝に顔を埋めた。

「旦那だよ」

 ジルは、声を出せなかった。彼女はそれを知ってか知らずか、話を続ける。

「性格はそうだな……団長君にそっくりだった。騎士っていうより戦士みたいで、負けず嫌いで、強くて、格好よかった。最後は暗殺で倒れたんだけどね」

「……そんな」


「だから、あれは堪えたなあ」


 無理に声を出した彼女は、顔を上げ、見える満月の光を一杯に浴びる。

 その顔に、真珠のような涙が一筋、流れ落ちるのを見た。

 ジュンは夢中で瓶の酒をあおる。ジルが静止の声を出せないから、飲み続ける。

 やがて、彼女は完璧に瓶を飲み干した。瓶を置いた彼女は、静かに瞳を閉じ、安らかな寝息をたて始めた。

 ジルはただ、その光景を眺めていることしかできなかった。彼の頬に、冷たいものが流れ、顎を滑って落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ