人を想う涙・4
気が付くと、周りの兵は皆倒れている。単に酔いつぶれただけだ。
ジルもその中の一人だったらしいが、ふと目が覚めた。
近くで団長と副団長が肩を寄せあって寝ている。
ジュンを探すと、外のバルコニーから、夜の景色を見ていた。
「ジュンさん」
隣に並ぶと、彼女は楽しいとは別種の笑みを浮かべながら、虫が奏でる音と、草が風に吹かれて揺れる音を聞いている。
やがて彼女は、閉じていた目を開いた。
「ジル君。目が覚めちゃったのかな?」
「みたいです。あの……」
ジュンが瓶を引き寄せる。そのまましゃがみこむ。
「僕が花を置いた墓は、誰の墓だったんですか?」
彼女の表情が、強ばった。
「すみません! 無礼でした、やっぱり今の質問無しで!」
「いや」
ジュンは悲しい表情を隠そうとせず、膝に顔を埋めた。
「旦那だよ」
ジルは、声を出せなかった。彼女はそれを知ってか知らずか、話を続ける。
「性格はそうだな……団長君にそっくりだった。騎士っていうより戦士みたいで、負けず嫌いで、強くて、格好よかった。最後は暗殺で倒れたんだけどね」
「……そんな」
「だから、あれは堪えたなあ」
無理に声を出した彼女は、顔を上げ、見える満月の光を一杯に浴びる。
その顔に、真珠のような涙が一筋、流れ落ちるのを見た。
ジュンは夢中で瓶の酒をあおる。ジルが静止の声を出せないから、飲み続ける。
やがて、彼女は完璧に瓶を飲み干した。瓶を置いた彼女は、静かに瞳を閉じ、安らかな寝息をたて始めた。
ジルはただ、その光景を眺めていることしかできなかった。彼の頬に、冷たいものが流れ、顎を滑って落ちた。




