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乾杯!  作者: 蝶佐崎
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導いた金貨


 ウォルはせっかちに時計を眺めていた。

「あと一時間……!」

「お前、待ち合わせの場所に来んの早すぎだわ」

 隣に立つヒューイの兄貴に呆れた口調で言われ、余計落ち込んだ。

「だって、ジョエルさんを待たしたくないんですもん……」

「まあその心がけだけは、買っといてやる」

 肩を叩かれると、余計(むな)しい。

 二人はジョエルとの待ち合わせ、公園で待っていた。まだ祭りのパレードも始まっておらず、場所も祭りの中心地からやや離れているからか、人もあまり来ない。

 烏がのんきに頭上を飛んでいった。

 ヒューイが呆れたように、なあ、と切り出した。

「どっか酒場にでも行って、時間潰さねえか? 騎士団の兄ちゃんはそうしてんだろ?」

「そうですけど……」

「じゃ、先行ってるぜ」

 ヒューイはふい、と足を向ける。

 古びた金貨を指でもてあそびながら。



 ジルはくしゃみを酒場に響かせた。周りの男たちから笑いが飛び散る。

「だれか噂でもしてるのかな……?」

 首を傾げてから、瓶の中の酒をコップにつごうと傾ける。

 酒は切れていたらしく、雫がぽとりとコップに落ちた。

「あーあ……しまった」

 財布の中身も軽い。

 財布に入れていた例の金貨を眺め、肩をすくめた彼は立ち上がり、酔いざましに外を歩こうと、出口の扉を開き、一歩外に出た。



 ジョエルはポケットの中で古びた金貨を転がしながら、まだ静かな町を歩いていた。

 あれから全く眠れず、結局国王の部屋で延々と愚痴(ぐち)を漏らしていたが、さすがに出ようと思い、酒場に向かっている。

 彼の行きつけの酒場は、Tの字になった道の突き当たりにある。


 左の道から、頭をかきながら面倒そうに歩く男性が現れた。

 酒場から、やや顔を赤くさせた、青年が出てきた。

 そして。


「あっ」

 ウォルが声を漏らすのと、それはほぼ同時だった。

 三人が、まるで謀ったかのように、同時に同じ金貨を落としたのだ。

 三人が瞠目し、互いの顔を見る。

 一番初めに声をあげたのは、トレラ砦から来た騎士のジルだった。

 ジルは瞳を丸くし、ジョエルを食い入るように見る。

「あなた! お名前は何と言うのですか!?」

「わ……私ですか? ジョエル・タチバナと申しますが」

「タチバナぁ!?」

 ジョエルの言葉にヒューイが目を見開き、過激(かげき)に反応した。

「まさかあんた、ジュンの親戚とかなのかよ!?」

「ちょっと待って! どうしてあなたもジュンさんのことを知っていらっしゃるのですか!?」

「私も聞きたいですね!」

 二人に詰め寄られたヒューイは、追い付いたウォルに助けを求めた。

「待て待て待て! おいウォル!」

「何故ウォル君を知っているのですか? まさかあなたが騎士団の?」

「それは僕です!」

 ジルが手をあげ、ジョエルが驚いたように彼を見る。

 二人の肩に、ヒューイの手が置かれた。

「するってえと、つまりあんたらが今回、俺の後輩のウォルが受け持った依頼の人らなんだな」

「ええ、そのようですね」

「はい」

「だったら」

 ヒューイがにやりと笑い、酒場を親指で指した。

「まだ待ち合わせの時間より一時間も早えんだし、中でゆっくり積もる話でもしようじゃねえか」



 三人はそれぞれ、自分がジュンに会った経緯とその後彼女がどうなったかを話した。もちろん現れた幽霊の話も、である。ジョエルの話の際には、少しながらウォルも補足を入れた。

 話し終えた三人は、椅子にもたれ、そろって溜め息をついた。

 沈黙を破ったのはやはり、我らが兄貴、ヒューイである。

「また何とも、なあ」

「ですね。世界はやはり狭い」

 ジョエルが呟き、ジルがしっかり頷く。

「知り合いが三人、集まるとは思いませんでした。聞いたら団長が羨ましがると思いますよ」

「陛下もです」

「案外、ジュンに遭遇するやつって多いんだな。だったら、やっぱまた会えるかもしれねえってことか」

 ジルが猛烈に頷いた。

「僕はそう思っていますよ。トランプしましょうって約束しましたから!」

「私も。言いたいことが沢山ありますからね。陛下から伝言も預かっていますし」

「俺はそんなもんじゃねえぜ? 今度会ったら口説く気だからな」

「おや。陛下は正式に申し込んで、あの人を王妃にする気でいますよ」

「おーっと! 国王が障害たあ、またハードルの高い相手だな」

 繰り広げられる会話と三人に、ウォルはただ見とれていた。

 どうしてだろう、三人ともが生き生きとしている気がする。

 ヒューイがこんなに快活に笑ったところを見るのも、本当に久し振りだ。

 やがて、四人のもとにビールが運ばれてきた。ウォルは未成年なので残念ながらジュースだ。

 ジョエルが嬉しそうに口を開く。

「ではひとつ、彼女との再会を願って、またこの場で出会えたことに乾杯でもしますか」

「いいですねえ!」

「だな」

 ウォルも頷く。

 四人はそれぞれのものを掲げ、勢いよくぶつけた。

「乾杯!」



これで一連のお話は終わりとなりますが、後日談があります。

是非見てやってください。

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