忘れていった酒・2
「君、依頼終えたんでしょ? これからどこに向かうの?」
「ああ、一応ギルドに戻らねえと」
「どこ?」
「企業秘密だよ」
「どの国が一番近い? そこまで送ったげるからさ」
言われて、どう送るのか分からないまま、とりあえず答える。
「ゴルザコフ共和国」
頷いたジュンは、いきなりヒューイに抱きついた。
「うぎゃあっ!?」
視界が胸で覆い隠される。
ヒューイは思わず目をつぶった。
何故か一瞬、辺りが無音になった、音が遠退いたような感覚がする。
と、ジュンが体を離した。
「着いたよ」
「おまっ、何しやが……」
怒鳴ろうとしたヒューイの言葉が、そのまま途切れた。
二人は、ヒューイが見知った大通りの近く、裏路地に立っていた。
「ここでいいかな?」
済ました顔で言うジュンに、ヒューイは疑いの目を向ける。
「いいけどお前……術者か?」
術者とは一般に、呪術、魔法、祈祷、その他もろもろを職業にしている人間を一括して指す。
ジュンはにやりと笑った。
「違うよ。確かにチカラは持ってるけど、本業は戦士だ。傭兵稼業だよ」
「戦士たあまた、穏やかじゃねえな」
「どうも。どうせ生まれたときから、蝶よ花よと育てられたわけじゃないしね。九歳の時にはもう、並みの兵士なら手玉にとれたし」
そこは沈黙を守ろう。ヒューイはその間に冷や汗をぬぐった。
どうやら自分はトンデモナイ人間に出会ってしまったらしい。まず、人間かどうかすら定かではない。
「酒場、入らない?」
考えていたヒューイは、ジュンがふらりと酒場に入ったのを見て我に返り、慌ててあとに続いた。
「おい!」
周囲の視線を気にせず奥の席に腰を下ろしたジュンは、焦るヒューイを見てにやにやと笑いを浮かべる。
「何か?」
「何かじゃねえだろ! 物騒だ!」
「大丈夫大丈夫。あ、ドリンクバー行ってくるね。ウェイター来たら、鳥の丸焼き一羽、頼んどいて。あ、ドリンクバーおかわりも」
「しっかり食うつもりだな!」
脱力したヒューイをよそに、ジュンはひらひらと野郎の並ぶ列に入っていく。
ウェイターがあの、と恐る恐る声をかけてきた。
「ご注文は……」
「鳥の丸焼き一羽に豚の丸焼き一匹! それからドリンクバー二人分! あとカーラーの火酒とウェストの梅酒!」
「かしこまりました!」
怒声に反応して飛び上がったウェイターに呆れたヒューイは、先ほどまでジュンが座っていた席に、誰か別の人間が座っていることに気付いた。
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実は自分、某学校に通う学生なのですが……インフルエンザで学級閉鎖となりました…
せめてこの間だけでも毎日投稿を目指してがんばります!




