回想
草原。風の吹き荒れる草原に、女性が一人立っている。
彼女は長髪をなびかせ、ローブをはためかせ、目の前に広がる墓地を見下ろす。
この墓地は、近辺に人が住む前からここに在った。故に誰も、何者がここに埋められているのか、知ることはなかった。
そしてここには、近くの森に住む魔獣ですら立ち入ることができなかった。故に、人々はここを「聖なる土地」と呼んだ。
「聖なる土地、ねえ……」
女性は呟きながら低く笑い、手に持つ沢山の花束を、大理石のように白い墓の一つ一つに手向けていく。
何故彼らがここに永久に眠らなければならなかったのか。彼らがここで戦死したからだ。歴史にも残らない遥か昔、彼らがここで命を散らせたからだ。
では、彼らの物語は永遠に闇に葬り去られてしまうのか。
「否」
女性は寂しい笑みと共に、腰に提げていた剣を地面に突き立て誓いを立てる。
「俺が生き続ける限り、君たちと生きた日々が世界から消えることはない。この剣にかけて誓おう。君たちの物語は、俺が必ず、後世に語り継いでやる」
それだけを言い切った女性は、墓地から背を向けて歩き出した。
遥か昔、人々は神隠しに怯えていた。人外なる魔境、あり得ない事柄に恐怖していた。
それ故に人々は自分たちを助けてくれるであろう「神」に助けを求めた。神々はそれに応え、神隠しの発端の生き物に迎え撃った。
その中、神と人との間に、幾人もの子ができた。子は人の体に神の力を宿し、人々から崇められ、自ら先陣を率いて戦った。だから、子が死ぬのも早かった。
「俺は君たちのように死ぬわけにはいかない。君たちが守った世界がどのように移り変わるのか、見届けなければいけないんだ」
女性は呟きながら、ふと周りを見回す。森に入ったからだろう、昼とはいえ辺りは暗い。
彼女が立ち止まった場所に近い茂みが、乱暴に揺れる。茂みから獅子が飛び出し、女性の頭部を噛み砕かんと飛びかかった。
女性は獅子の姿を確認すると、興味を失ったかのように肩を竦め、獅子から視線を反らす。そしてなおかつ牙を避けると獅子の喉元を掴み、握り潰した。
「甘い」
森の中に絶叫が響き渡った。
蝶佐崎ダイと申します。初投稿です。
何とぞ至らないところもあるとは思いますが、よろしくお願いします!
ぜ、ぜひ感想書いてやってください(土下座




