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十一、ようやく諸悪の根源と対決ですわ! 王子様、準備はよろしくって? 四 (完結)

 ひときわ輝く炎の球が父を中心に生まれたかと思うと、弓矢……いや、破城槌のようにまとまった火柱となって劇場の壁に激突した。壁は簡単に崩れさり、兵隊達は肝を潰して逃げ散った。


 炎と一体化した父は、劇場を抜けてからまっすぐ本館を襲った。あわてて逃げだす召し使い達など目もくれず、本館の正面玄関にしがみついて炎を移す。ドアや壁に燃え広がる炎がますます父の力を増大させた。


「わあああぁぁぁ!」

「やめろ! やめてくれ!」


 長男と次男の幻影が、今一度劇場にでてきた。生きたまま焼かれている。すぐには死ねないからさぞや苦しかろう。


「ト……トピア! サイゾ! いますぐやめさせろ! さもなくば火あぶりだ!」


 この期におよんで長男はわめいた。ヤンブルが失笑し、タズキは唾を吐きつけた。


「公爵家はこれでおしまいですわね。ご自分達が、他人様のみならずお父上にもなしたことが跳ねかえってきてどんなお気持ちかしら? お熱いですか? 火加減はいかが?」

「お、お前ごときニセ令嬢が……我らになんと……ふとどき極まりない……」


 次兄も次兄だ。


「焼け死んでまで身分意識を持たれる気高さ、まことにご立派です」


 自らを苦しめてきた圧力の元が完全に滅びさるのを実感して、サイゾも自然と解放されたのだろう。


「死にたくない!」

「死にたくなーい!」


 兄弟の断末魔をきっかけに、炎に包まれた本館は屋根から完全に焼け落ちた。

                        ☆ 


 あれから数週間。私達は思い思いに散らばった。わざわざたしかめはしていないものの、一応決闘には勝ったことでもあるし追手の気配はない。念のために全員が公爵領からでて当分近づかないくらいの打ちあわせはした。


 ヤンブルは、結局新しい盗賊組合を作ると張りきっていた。うまくいったら招待状をだすと請け負ってくれたものの、どこまで本気かわからなかった。


 タズキは、そんなヤンブルについていった。一人は嫌だし三人も嫌だ、だからヤンブルの事業……と、表現していいものか……がある程度うまくいったらまた考え直すとのこと。


 レメンは、ようやく私をあきらめてくれた。おたがいのためにほっとした。かと思ったら、出前占い所なるものをいく先々で開いている。なぜか私の旅先の街で。


 私は結局、サイゾとともに旅を続けることにした。ちゃんとした形で男性とおつきあいするのも、それが定住を伴わないのも、なにからなにまで新鮮で楽しい。当然ながら、結婚詐欺師は廃業した。


 公爵領は実質的な権力の空き地となり、複雑な政治の駆けひきが繰りかえされているそうだ。無政府状態で混沌がまんえんするかと思いきや、平民は意外と落ちついている。とんちんかんな税金や兵役がなくなり、みんなで自由を満喫しているのだろう……たとえ束の間にしても。


 私もまた、人生で初めてえた自由をできるだけ楽しみたい。


 終わり

 皆様、ご読了ありがとうございます!

 疑似婚約破棄(?)とディストピアと脱獄ドラマを噛み合わせた本作、楽しんで頂けましたでしょうか? トピアのしたたかさに感銘を受けられましたら、是非とも星・お気に入り・ご感想・レビューコメントなどよろしくお願いいたします!

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