表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/78

十一、ようやく諸悪の根源と対決ですわ! 王子様、準備はよろしくって? 一

 まばたき一回分にさえならないままに、私達は兄弟が用意した場所にあらわれた。


「なんだこりゃ……どっかのパーティー会場か?」

「公爵家の私設劇場ですわ」


 説明しつつ、奇妙な懐かしさと憎しみが同時に湧いてきた。座席は外されたままで、パーティーをやるのでもないから舞台以外はがらんどうだ。劇場らしく、壁は分厚いカーテンでおおわれていて外はわからない。天井から魔法の照明がほどこされているから暗くはない。まだ夜にはなってないとは思う。


 私達は舞台ではなく床のまんなかにいた。観覧席にも誰もいない。


 この劇場を舞台にした、自分が企画してきたはずの偽婚約者披露パーティーは全部公爵家の手のひらの上だった。理解どころか屈辱を感じる余裕すらないまま逮捕されこうなった。


 それを見物していた公爵は死んだ。私がだましていた三男のサイゾは、勘当されてまで私に寄りそっている。さらには、サイゾは身分も肉体も人格も偽っていた。結婚詐欺師も顔負けの演技力だ。同時に長男・次男兄弟の計画の一部でもあった。


「では、規則を説明しよう。こちらは名代として一名をだす。お前達は全員が束になっても一人ずつあたっても構わないが、お互い魔法はいっさいなし。血を炎にかえたり、なにかほかの用途にするのも含めてな。武器は好きに使え。どちらかが死ぬまで戦う。お前達が勝てば無罪放免、負ければ死んで終わりだ。こちらは魔法でお前達の戦いを監視している。劇場の周りはこちらの軍隊によって囲まれており、反則は即座に決闘を中止して処刑だ。嘘だと思うなら手近な窓からたしかめてみろ」


 次男が、声だけで説明した。どこにも姿はない。長男にいたっては発言すらない。


「本当だ。兵隊が大勢いる」


 タズキが小走りに壁までいき、カーテンの継ぎめをめくった。オレンジ色に顔が染まっている。時間帯が夕方なのも理解できた。タズキの頭ごしに、風に揺れる中庭の木々も。


「どんな相手とやるっていうんだ?」


 ヤンブルの質問が、図らずも合図になった。


「トピア! あれ!」


 レメンの指が伝える方向に、私だけでなくみんなが注目した。音もなく舞台に現れたのは……。


「父さん!」


 火あぶりにされて死んだはずの私の父。異端を意味する白い線が斜めにはいった緑色の服をきせられ、全身から赤い炎がゆらめき続けている。そのくせ、身体がかすかに透けてむこうがわがちらちら見えた。


「ル……イーゼ……ルイー……ゼ……ゼゼゼ……」


 父……と表現できるかどうか……に名前を呼ばれ、逮捕されてから初めて恐ろしさにふるえた。父はまさしく亡霊となり、長男達に操られて私にも仲間にも害意を持っている。


 ここまで思いきったことをするなら、竜の血にまつわる秘密も……私がまだ知らないことまで……とうに把握しつくしていることだろう。


「あんなの、ふつうの武器じゃ歯がたたねぇぞ!」


 ヤンブルが、みんなの予想をそのまま口にした。タズキがカーテンのなかにもぐりこみ、窓かなにかをゆすったり叩いたりした。びくともしないようだ。


「魔法だろ、これ! 自分らできめといて!」


 タズキでなくとも同じように訴えたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ