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九、おしまいにはカルト宗教ですの? まぁ。芸のないお話ですこと。 八

「さっき聞いただろう。三四二と……」

「それはできません」


 どこまでいっても看守は看守だった。


「なんだと!?」

「規則に反します。厳密には、死因の不明瞭な参加者をみだりに動かすのを禁じられています。なお、医師は階段の守護者としてすでに倒されました」


 あー、あの催眠術師か。死んでくれてよかった。


「ええいっ、その医師がいた階で……」

「それも規則違反です。職員は、自分の知る情報を参加者にもらしてはなりません。なお、地上階の医師は非常勤なので本日は退勤しています」

「なにをいまさら! どうせわかったところでこやつらにはなにもできん!」

「なーんだ、じゃああたし達がやってきたことも筒ぬけってわけだよな。ま、知ってたけど」


 タズキは遠慮も空気も無視した。


「でも、それならこうなる前にトピア達を止められたはずでしょう?」


 レメンがさりげなく重要な疑問を口にした。本人は意識していないにしても。


「二人とも私語をつつしめ」


 看守が厳しくたしなめた。


「ならば、所長だ。所長には裁量が認められていたな?」


 演説家の喋りかたに、力がもどってきた。


「はい」

「よ、よしっ。それなら所長として……」

「この場の全員に、所長の証拠を提示してください」

「き、貴様! 人造人間のくせにさっきからいい加減にしろ!」


 極端にひどく驚いたら、声もでなくなる。看守らしく融通のきかない人間なのかと思っていたら……。


 人造人間そのものは、珍しくはあっても特別じゃない。ある程度の力と金がある魔法使いや錬金術師なら、やろうと思えば作れる。ただ演説家との会話からすると、少なくとも彼が作ったものではなさそうだ。そして、演説家はアック所長の可能性が高くなってきた。


「それは当面の課題と無関係です」

「うぬぅ……。しばらく待っていろ」


『残り一』


 物知りお姉さんによれば、時間がない。


 まぶたごしに感じる光に、新しい種類のそれが混じった。


「うわっ」

「待っていたぜ。転移ターミナルをだす瞬間を」


 ヤンブルだ。


「おっと、お前も動くなよ」


 リバーガも。


「ヤンブル? リバーガ? 死んだんじゃ……」

「話はあとだ。とっとと地上階にいくぜ」

「地上階?」


 レメンが首をひねったときには、私も目をあけておきあがった。ヤンブルがアック所長を、リバーガが看守を、それぞれ当人の背中から自分の腕で拘束している。レメンとタズキはあいた口がいまだにふさがってない。男衆でないと、こんな荒事は不可能だ。それにはまず所長と看守をこちらに引きつけねばならない。レメンのもたらした毒薬とタズキの告白がなければ条件が満たされなかっただろう。なるほど、我ながら彼女達をつれてきて正解だった。

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