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七、結婚詐欺師に賭博の駆けひきなんて、十年早いんじゃなくて? 八

 ただ、レメンが素で頭をさげるのはやっぱり気持ち悪かった。むろん、おくびにもださない。


「あたしも聞いときたいことがある」

「なんですの?」

「あたしはガーゴイルが階段の守護者とは知らなかった。たぶん、レメンもだろ」


 レメンは黙ってうなずいた。


「なのに、どうしてトピアは気づけたんだ? あれで間違っていたら、ルールその二に触れて全員失格だぜ」


 アック所長が語った、所内ルールその二。食事、備品、施設などを無意味に、または脱走のために損壊してはならない。


「消去法ですわ」

「消去法?」


 素直に聞く態勢になったタズキは、それなりにかわいらしい。


「まず、アナウンスは教材としてカードとルーレットを用意したから始めなさいとは述べました。でも、階段の守護者については少しも触れていません」

「まあ、そうだよな」


 タズキでなくともそれは理解できる。


「つまり、階段の守護者にかかわるルールは変わっていません。極端なことを申しますと、リバーガ様とヤンブル様が勝負している間に私がガーゴイルを倒してもよかったのです」


 そう。『論理的整合性の追及、偶発的要素への対処、対人忍耐力の向上』。順番に解決しろとは命じてない。


「上着を広げたのは?」


 タズキの疑問はなおも続いた。


「オーゲン商会のロゴを通じて、刑務所側が魔法かなにかであなた達の頭ごしに勝負を操作している可能性を検証したかったのです」

「そういうことか。突拍子もないようでいてちゃんと考えてたんだな」

「皆様の勝負そのものは、干渉しなくとも胴元側がまず勝ちますわね。ルーレットで一回勝負を選ぶ人はまずいませんし、ゼロとゼロゼロが胴元の勝ちなら何回も勝負を重ねると自然に胴元が有利になりますのよ」

「でも、カードは一発勝負だろ?」

「はい。私達は誰か一人が両方に勝たねばなりません。カードを先に選んで勝ったら、一回で終わる勝負はもうしたくないと無意識に逃げてしまう方が大半ですわ」

「カードがルーレットのあとなら?」

「確率は必ず数字の偏りが元にもどるようになっていますの。ルーレットの三回勝負で負けたうえに、次の一回まで胴元が負け続けたら一勝三敗か三連敗、そんな可能性はまれですわ」


 そのカードも、同じ役なら完全に数字が上回らないと負けになる。しかも、一人脱落する度に魔法攻撃が特定の一人に集中される。


 いずれにしろ、階段の守護者が倒れただけでレメン達は勝負に敗れたのではない。私達の誰もが望む結果になった。無罪放免に釣られて勝負にだけこだわったら、まず私達の全滅は免れなかっただろう。


「いいだろう。納得できたよ」

「リバーガ様、ヤンブル様。この先、味方は多いほどいいですわ。お願いいたします」

「頭をあげてくれよ、姐さん。俺は姐さんの判断なら外れはないと思うね」


 顔を床にむけたまま、私は残るリバーガの決断をまった。


「こんなひねくれた仕かけが待ちうけているとあっては、俺も反対できんな」


 元冒険者だけあって、リバーガはこの種の損得勘定にさとい。


「ありがとうございます」


 姿勢をもどして、私は全員に感謝した。


「じゃ、話も固まったしぼつぼつ上いくか」


 ヤンブルの提案に誰もがうなずいた。

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