二、ここがウワサの片道切符!? とりあえず身体検査ですわ。 二
そして、青い制服に白いエプロンを身につけた若い女性の職員と目があった。合板製の質素な机に面して座っている。
室内は白い衝立で区切られていて、職員の脇には身長体重計がある。もっとも、バネ式の秤にまっすぐな棒をつけただけの品だ。
職員は、黙って身長体重計を指さした。一対一で無用心のように思えるかもしれない。こうした場所は、暴れる人間がいたらたちまち麻痺させたり眠らせたりする魔法が部屋そのものにかけてある。そうしたことには、商売を通じて自然と知識があった。衣服は脱がなくていいようだ。面倒じゃないのは助かる。
おとなしく台に乗ると、羽根ペンがさらさら動く音がした。それが止まり、衝立に矢印が浮かぶ。
台から降りて、矢印のとおりに進むと次の区画にでた。白衣をまとった初老の男性が、無言無表情で診察台に……布団のない簡易ベッドといったところだろうか……顎をしゃくった。やはり、服は脱がなくていいのだろう。
診察台に横たわると、男性は私のすぐそばにたって小さな茶色い棒のような品をだした。鋭い針が端から伸びている。
『血の記録』……どの刑務所でも当たり前におこなう。針で相手の血を一滴とれば、本人を特定する記録が数字となってひとりでに棒に刻まれる。つまり、前科があればごまかすことはできなくなる。ちなみに本人の健康状態に異常があればそれもわかる。
左腕にチクッと痛みがしたものの、すぐにすんだ。天井に、診察台から降りるのを促す絵が現れた。降りたらまた衝立に矢印ときて、三つ目は更衣室だった。身長体重計のときと同じ制服の、また別な女性の職員が縄を外してくれた。そして、床に置かれた籠を指さす。新しい囚人服と下着が入っている。
下着は白一色で、囚人服はオレンジ色のツナギ風。シャツの胸にも背中にも両膝にも、はては下着にさえ荷車を引くロバのマークが染め抜いてあった。オーゲン商会のマークだ。そういえば、看守を始めとするどの職員の制服にもマークはついてない。なんにしても、裁判からつきあってきた古い方の囚人服は私物として出所まで没収。いらないけど。
それより、新しい囚人服は異様な仕たてだった。寝袋をそのままたてたような格好で、足はちゃんと動けるようになっている代わりに腕は服からだせない。上半身は『気をつけ』の姿勢で服の中に固定される。これだと背中のジッパーがしめられないと思っていたら、じっと眺めていた職員が手伝ってくれた。もちろん、親切心なんかじゃないだろう。