七、結婚詐欺師に賭博の駆けひきなんて、十年早いんじゃなくて? 四
ちなみに道化はどんな数にも模様にもあてはめることができる。
「はい」
「一はどうなる?」
多くの場合、数字の一はカードの中では十三よりも強く最強とされている。
「一般と同じ、一番強い数字です」
「俺のカードは仲間が見てもいいんだな?」
「はい」
「交換はどっちが先?」
「あなたからです」
「手札のカードの組み合わせで、一部が相手より強くて残りが弱かったら?」
「それも、こちらの勝ちです」
「たしかに、ちょっと不利だな。でも承知したぜ」
「では、始めます」
レメンは箱の封印を破ってカードをだした。たしか占い師だったということで、手際よく混ぜていく。そうしてから、まず自分、次にヤンブルの順番で一枚ずつ交互にカードを配った。残りは山札としてテーブルに置かれる。
『五枚札』は、とにかく二枚以上同じ数のカードがそろうか続き番号になれいい。もちろん、そろった枚数や数が多いほど強い。
ヤンブルの手札は、私達からは簡単に目にできた。三が二枚に八、九、十二が一枚ずつ。『一双』成立……同じ数字が二枚一組になっている。役としては最低だ。数もそれに近い。
「二枚交換だ」
ヤンブルは九と十二を捨て、レメンは山札から二枚渡した。むろん、レメンからは中身が見えないよう伏せてだす。
新しくきたのは四と八だった。これで、三と八の『二双』。『一双』の一つうえの役。ビリから二番目の役ながら、『一双』を別とすれば一番狙いやすくもあった。
カードは、サイコロと少しだけ似た部分がある。一から十三までの数字をどれか無作為に一つ引くなら、七がもっともでやすい。だからヤンブルは七に一番近い八を残し、役の強さを一つあげた。
それで、レメンは……。
「私は交換なしです」
無表情に彼女は伝えた。
「そりゃすげえな。じゃあ勝負だ。俺は二双。三と八」
ヤンブルは自分の手札をテーブルにさらした。
「私も二双です」
レメンもまた手札をだした。
「四と七。規定により私の勝ちです」
レメンの四の一双は、ヤンブルの三の一双を上回っている。
「うわっ、しまった。ルーレットじゃ勝ったし、少しは参考に……」
ヤンブルの言葉が終わる前に、私の全身にびっしりと霜がついた。比喩ではない。物理的に霜がついて、つき刺されるように冷たく痛い。そのくせ衣服はなんともない。
『残り十三』
「おい、どうした!」
ただならぬ冷気とあっては、リバーガでなくともすぐに感づく。
「わ、わかりません……急に……」
歯の根も合わなくなり、喋るのも難しい。




