七、結婚詐欺師に賭博の駆けひきなんて、十年早いんじゃなくて? 二
というのは皮肉な冗談で、他人事とはいえちっとも素敵じゃない。
「あぁ!? あんた喧嘩売ってんの?」
「い、いえ、みんなで死ねたら楽しいなと思って……」
「楽しいわけねぇだろ! 余計なこと吹いてんじゃねえぞ、タコ!」
「ご、ごめんなさい……」
放火魔に怒鳴りつけられて涙ぐむ毒殺魔。世も末だ。私は詐欺師だけど。
「で、俺達は全員が二回勝たなきゃならないのか?」
リバーガが、私も含めた一同を現実にもどした。
「いいえ、あなた達のうち誰か一人が私達二人に勝てば構いません」
レメンは淡々と説明を続けた。
「そのときまでに、俺達の誰かが負けていれば負けた奴は?」
リバーガはあくまで用心深い。
「なんの罰則もありません」
すらすらとレメンは答えた。確認すべきことはまだあった。
「なら俺達の誰か一人がお前達を二人そろって破るまで、お前達だって負けてもなんの罰もないということか」
「そうです」
「勝負の進行は、俺達から二人でてお前達それぞれと同時に当たらせるのか?」
「それでも構いませんが、一人の勝負が終わってから次の一人になってもいいです」
制限時間がある以上、私達から二人だして個別に勝負させる方が効率的ではある。その代わり、相手の癖や手筋をじっくり研究しにくくなる。
「試合中の助言や相談は?」
「許可されています」
「まだ参加してない人間の見学は?」
「それも許可です」
「カードやルーレットに細工はしてないだろうな?」
「疑問があれば、いつでも好きなだけ調べてください。こちらはいかなる不正もしません。なお、あなた達の不正は自動的に全員失格となります」
「ゲームはなにをするんだ?」
「ルーレットは偶数・奇数当てです。カードは『五枚札』です」
『五枚札』は、一人五枚のカードをきめられた役に沿うようそろえて勝負する。どこの賭博場でもふつうにやっている。
「俺達が勝てば上の階に進めるのか?」
「いえ、そもそも無罪放免です」
「無罪放免!」
ヤンブルが露骨に驚いた。あまりにも大胆な条件に、私も顔にこそださないが仰天したのは同じだ。
「よし。少し相談する」
リバーガが口を閉じた。制限時間は二十四に減っていた。
「二人でいくか、一人でいくか」
リバーガは私とヤンブルを交互に眺めた。
「お二方は、賭けごとにどれくらいお詳しいんですの?」
「俺は多少かじったくらいかな」
ヤンブルは右手であごをさすった。
「こっちも似たようなものだ」
私はというと、ほんのニ、三回くらい。かじった中にすら至らない。
「なら、俺達で……」
「お待ちくださいませ」
リバーガがなにをいいたいかは先回りできる。どうせ私が一番あてにならない以上、ヤンブルと同時にでるのが一番能率的だというのだろう。
「なんだ?」
「リバーガ様、ヤンブル様。同時にではなくお一人ずつ当たってくださいな」
「それだと浮いた台がでて時間を浪費するだろう」
リバーガの心配はもっともだった。
「ここまできて、ただのゲームで終わるとは考えにくいです。誰かがゲームの内容をじっくり考えておいた方が、まさかのためになりますわ」
もちろん、最初の一人が連勝してあっさり終わる可能性もある。




