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六、白馬の騎士様と遊園地デートですのよ! インチキでございますけど! 四

「まず、期間と権限が限定される。定年までいられるのではないし、あくまで正規職員の補助要員にすぎない。そして、レメンはれっきとした囚人だが自らの釈放を目的としていない」

「ええっ!?」


 私とリバーガは声を合わせた。


「そもそも、彼女は殺人犯であるだけでなく、教唆も共犯もしでかしている。だが、司法取り引きで我々に協力するのと引きかえに死刑のやり方を選べるようにした」

「おい、結局死ぬんじゃねえか。意味ないだろ」


 リバーガでなくとも指摘するだろう。


「いや、本人ははなから物理的な意味で自分とともに死ぬ相手が欲しかったんだ。で、同じ刑務所の囚人相手ならよかろうという結論になった」


 よくない。ものすごくよくない。


「回りくどすぎるだろうが!」

「まあ聞け、リバーガ。レメンは、最初は善良な薬学生だった。担当講師のセクハラに仕返ししようと、薬草茶に手足が一時的に痺れる程度の毒を混ぜたんだが……たまたま薬草茶の成分と化合して猛毒となり即死させた。それからは、夫婦の浮気相談を専門にした占い師になった」

「つまり、浮気した配偶者の殺害に手を貸していたのですね。自分が調合した毒で」


 少しずつ、私にも状況がわかってきた。タズキの自白と照らしあわせれば簡単だ。いつぐらいからかはともかく、レメンの人格はすっかり歪んでいる。それを刑務所側に利用されているわけだ。


「そういうことだ。あと、リバーガやヤンブルに対する懲罰房いきの案件も無効になった。よかったな」

「ふざけるな! お前ら、正気の沙汰じゃねえ!」

「強盗殺人犯にいわれたくないですね、リバーガさん」


 レメンはニコニコしていた。それだけに、私はぞっとした。


「さ、このくらいでいいだろう」

「いえ、まだです。解毒剤があるようにレメン様はおっしゃっていました。本当にあるんですの?」

「ああ、この階のどこかにな」

「レメン様はご存知ですの?」

「いや、知らない。ただし、レメンを傷つけたり殺意をむけたりしたら解毒剤は自動的に廃棄される」

「この……クソメンヘラが!」

「汚い言葉遣いは不衛生ですよ。だいたい私は解毒剤まで用意したくなかったんです。でも、あなた達にも最低限のチャンスがないとだめっていわれました」


 そうだ。知るべきは知った。だがしかし、闇雲に歩きまわってもとうてい有意義な結果につながらない。考えないと。


「解毒剤ってのはこのジュースかい?」

「ヤンブル!」


 ヤンブルが、私達のうしろで緑色のガラスビンを左手にかかげた。栓はなく、中身は満杯より少し減っている。


「俺もしびれがきていたし、試しに飲んだら効果てきめんさ。泥棒を野放しにしたのが運のツキだな」

「そんな……今すぐ戻して!」

「おいおい、聞き入れるわけねえだろ。看守の旦那も邪魔しないよな?」

「ああ、解毒剤の投与には干渉できない」

「じゃ、お墨つきってことで。まずは女性からだな。味はメロン味だったぜ」


 にやっと笑うヤンブルに、私も笑い返した。

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