幼馴染
三題噺もどきーにじゅうきゅう。
過去の話。
お題:喜び・幼なじみ・眼鏡
私は幼い頃、病弱だった。そのため、医者の勧めで静かな田舎町に住んでいた。
とても澄んだ、綺麗な空気が好きだった。
季節の移ろいに合わせて花開く木々が美しかった。
周囲には、たくさんの子供たちが住んでいた。
田舎町の割には、多かったと思う…あまり分からないが。
というのも、家はこの辺りでは裕福な方で、近寄り難い雰囲気があったのだろう。
大人でさえ尋ねるのをためらうのに、子供など来るわけがない。
その上に、病弱で家にこもりがちだった私には友達などいなかった。
でも、彼は違った。
彼は私に、友達になろうと、言った。
その時の喜ばしさと、いえば……!
彼のその時の笑顔は今でも記憶の中に光っている。
私よりは大きな、けれど子供らしい、小さな手で、私を連れ出してくれた。
初めて、幼馴染というものが出来た。
幼馴染、と言ってもいいのかどうかは分からないところではあるが。
彼は、可愛らしい丸眼鏡をかけていた。
幼い頃から目がよくないらしい。
その隙間から見える、本を読んでいる時の眼差しや、私の話を聞いてくれた時の優しい目。
私は、彼のすべてが好きだった。
近所にあった、大きな木の下で、2人並んで話をしたり、本を読んだり―そんな日々が続けば良いのにと思った。
それでも、私が、ここにいたのは病気の療養も兼ねてだった。
だから、私の体調が良くなれば帰らなければならない。
そうして、私は都会に帰った。
彼には、一番に伝えたかったけど、どう伝えれば良いのか分からず、結局何も言うことは出来なかった。
それから、数年後。
私はまた、その田舎町に来ていた。
彼はまだ、このあたりに住んでいるのだという。
私のことを覚えているだろうか。
あの時、突然いなくなったことを怒っているのだろうか。
聞きたいことは、山ほどあるのだ。
早く、彼に会いたい。