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サモンズキング  作者: 保育園生の絵日記
異世界からの少女
17/25

15 彼と彼女はまだ何も知らない。

 決着のつかないまま終えたあの戦いには何の意味があったのか、それはブードの自己満足でしかなかった。

 だがその自己満足はもはや彼にとってはどうでも良いことのようだ。

 ブードは戦いが終わるとすぐさま地面を見渡し、なにやら怪しげな儀式を始め、地面を元の一面芝生畑にしてみせた。

 一同の驚く様子を余所にブードは魔法を使い玄関の扉を開け家の中へと1匹入って行った。

 そしてブードは次なる任務に向け切り替えた。

 この世界にきて約7時間程度だというのにブードはやけに落ち着いていて、世渡りの作法をどこで学んできたのか、敬うべき人間をしっかりと心得ていた。

 この家の守護神と言うべきであろう。


 そう、理恵だ。

 

 「あらさっきのカラスさんじゃないのどうしたの?」

 茜達が帰ってくる前にブードは一度理恵と顔を合わせていたらしい。


 「申し遅れました、私ブカディ・アルドと申します、以後ブードとお呼びください。挨拶もほどほどにさせていただき、本題へ入らせていただきます。突然お邪魔することになり申し訳ありません、私も今日からこの家に住まわせていただきたいのですがよろしいでしょうか?

黒臣様にはしっかりと挨拶を済ませておりますので」

 この家の決定権を握るものを掌握すべくブードは意を唱える前に黒臣という名を出し、決定打に持って行った。


 「そうあの人に会ってきたの、なら問題ないわね、いいわ今日からよろしくね」

 理恵は可愛くウィンクをして見せた。


 「うっ!?」

 ブードはわざとらしく翼を広げて1回転し。


 「そのような色気には慣れておりませんので少々立ち眩みがしてしまいました、失礼。この家にいる間に私の心が持つかどうか心配になってきましたな」


 「あらお上手」

 理恵は微笑みながらブードに返した。


 「ただいまー」


 「お邪魔しまーす」

 ブードに遅れて入ってきた2人の声が家中に響いた。

 

 「お母さん、修也も今日お夕飯食べていくって」

 キッチンに3人で顔を見せ、修也が家に来たことを知らせる。


 「修也君いらっしゃい。あら、ヴィスカちゃん泥だらけじゃないお夕飯の前に茜とお風呂に入ってきたら?」

 修也への挨拶もほどほどに、先ほどまでの戦闘で泥だらけになってしまったヴィスカを気遣う。


 「あ、はい」

 ヴィスカも自分の身体を見渡した。

 

 「一緒にブードちゃんも入ってきなさい」

 理恵の何気ない一言がブードに火をつけた。


 「よ、よ、よ、よろしいのですか!?」

 またも機械のように理恵と茜の方へ交互に振る首は側から見ると今にももげてしまうのではないかと言うほどに動いていた。


 「その翼じゃ自分の身体も洗えないでしょうに、いいわ、私が洗ってあげる」


 「ひゃっほおおおおおおおお!!」

 ブードは直立不動に両翼を広げスクリューの如く天井スレスレまでひとっ飛びし、地面へと着地した。


 「失礼少々取り乱してしまいました、鳥だけに」

 色々と冷静になり、その証につまらないダジャレをも残すブードは先ほどの喜びの舞を毛の先ほどさえ見せなかった。


「お、おいブード俺の茜姉に触れるんじゃないぞ!」

 修也が血相を変えてブードに忠告をすると。


 「何を言っておられるのか・・・むしろ触れられるの私のほうなのですぞ、あの柔らかいお手で私めを洗ってくださると言っておられるのだ茜様は、貴様のような邪な考えでお風呂なるものに入るわけではないのだ!」

 

 「あーはいはい分かった分かったさっさとお風呂に行きましょうねー」

 渦中の茜はどうでもいいと言わんばかりに話を受け流し、ヴィスカ、ブードと共にお風呂へと向かった。


 昨日とは違いそそくさと服を脱ぎ浴室へ向かう3人は泥を洗い流し、2人は湯船につかり、ブードは風呂桶の中に湯を張りくつろいでいた。


 「お風呂と言うものはなかなかですな」


 「気に入った?」

 浴槽から顔をだし、ブードへと顔を向ける茜。


 「はい!先ほどはありがとうございました、身体を洗っていただくなどと、私の一生の宝になりましょうぞ!」


 「そう、でもさっきはなんで2人で戦ってたの?2人は同志なんでしょう?」

 お風呂に入る事になった原因を思い出し、ふと疑問を口にした茜。


 それに、いの一番に応対したのはブードだった。

 「我々は向こうでは相容れぬ存在お互いの力を見極めておかなければいざという時茜様達を守れませんからな」


 「2人はなんで敵対していたの?」


 「それぞれの種を代表するものでしたので」


 「私は違いますがブード様は魔物の代表格でしたね確かに、人類代表はお父様で、私はその娘としか言いようがありません」


 「銀朱のヴィスカがよくそのようなことを、謙遜も行き過ぎると他者を失望させてしまいますよ」


 「謙遜などではございません、現に私はお父様に一度たりとも勝ったためしがないのですから」


 「今までは、ね」


 「どういう意味ですか?」

 ヴィスカは怪訝そうにブードを見ながら言った。


 「気づいていないのですか?あなたはこちらの世界にきて、いや王子に呼び出されて格段に強くなりました、前の世界とは比べ物にならないほどにね、王子の加護のおかげでしょう、まぁ何はともあれ本当によかった、あなたが強くなればなるほどに私は茜様を守るのに集中ができるというもの」


 「ブード教えて、なんで私にそんなに固執するの?」


茜の質問攻めに嫌がる素振りもなくブードは流暢に返す。

 「そうですな、なんと言いましょうか」

 ブードは迷っていた、真実を告げてはならない、この世界にこれたこと、そこに茜がいたこと、その現状を楽しむためには、嘘をつく必要がある、だが、相手は茜だ、慎重に言葉の取捨選択をしなければ、怒らせるならまだしも、傷つけてしまう可能性さえあるのだから。


 「最愛の人だからでしょうか?」


 「それってプロポーズ?」

 茜の上に座った状態で湯船に浸かっていたヴィスカが両手を顔の前までもってきて金よりも輝かしい瞳をブードへと向けた、これは単にプロポーズと言う言葉だけに反応したのではないだろう、あの人嫌いのブードが人に対してそういったセリフを吐くなど今まで考えられなかったからという意外性からのほうが強いのかもしれない。


 「はは、そんな恐れ多いことですな、主に愛の告白などとは、ですが否を唱えれば嘘になり、肯を示せば私はこの場には居られなくなってしまうかもしれません」


 「そんなことないわ、2人ともずっと一緒にいられるわよきっと、ね」

 茜はヴィスカを抱きしめ、片手を伸ばし、ブードの頭に手を伸ばし、指でさする。


 だがこの言葉は茜の独りよがりだったのかもしれない、家での癒し、風呂場という日本人なら誰しもがくつろげるこの場所で三者三様な思惑が犇めいているとは気づかなかった、いや気づけなかった。


 まだ2人という巨大な存在を、この世界に来た意味を知る覚悟さえ茜にはなかったのだから。


 ヴィスカの心の波が大きく揺れ動くのも。


 ブードの本当の思いでさえも。

 

 彼女はまだ何も知らない。



 時を同じくしてリビングでは、風呂場の方を恨めしそうに見やる修也とぐったりとうなだれている星魔の姿があった。

 

 「どうしたんだよ星魔元気ないな」


 「あ、あぁちょっとな」

 含みを持たせた言い方にまだ聞いて欲しいと言う念が込められていることに長年の感で気付く修也は追撃をした。


 「大方さっきの戦いのことだろ?」


 「魔法なんてものは、所詮あったら良いなのないものねだり。だから人は手の届かない魔法というものに夢を抱いて心躍らせるものだと思うんだ」

 やけに最もらしいことを言う星魔


 「何を今更お前だってヴィスカちゃんとブードを召喚したじゃないか、ブードに至っては俺の目の前で」


 「あんなものは・・・いや、まぁ確かにあれも魔法か・・・」


 「ああ!そうだぜ!確かに星魔があの2人をこっちの世界に呼んだ!それはあの戦いを見れば確かだ!それをなんだ今更、後悔でもしてるのか?」


 「いや、そうじゃない、くもない」

 

 「何だよはっきりしねーな。今までお前が望んだものがこうもはっきりと目の前に現れたんだぜ?もっと喜んでも良いはずだ、お前の夢が叶ったんだよ!」

 何故か修也は星魔を励ますように諭した。


 だが星魔の心の闇は一向に晴れなかった、茜や修也が帰って来る前から行われていたそれは、決して遊びなどではない本当の殺し合い(たたかい)だった。

 夢見がちな少年の何でもできる華やかな魔法、空を飛んだり、手を触れずに物を動かしたり、火を出したり。

 ただその認識の甘さが彼の闇を一層深くさせていた。

 現実と理想の乖離、彼が夢見た世界が今、日常を飲み込もうとしていた。


茜たちがお風呂からあがり、その場にいる全員でご飯を食べ、修也とブードが一悶着を起こし終え、修也が自分の家へと帰り、一同が就寝の準備をしていた時、星魔は自室で物思いにふけっていた。

 そこへ1人、いや1匹の訪問者が。


 「ブード来たか」


 「申し訳ないノックもせず、この手ではノックはできない物ですので」


 「ああ、いい分かっている」


 「それでお話とは?」

 夕飯を食べ終えた後に星魔がブードに部屋に来るように前もって言っておいたのだ。


 「ブードは、向こうの世界への帰り方を知っているのか?」

 星魔の頭の中では、ヴィスカを元の世界に返してあげるただそれだけが彼の頭の中を支配していた。


 「向こうの世界ですか・・・簡潔に申し上げますと私にもわかりかねます、こちらに来るのにも星魔様のお呼びがあったから来られたのです、私といえどもそうやすやすと世界間の移動はできるものではございません」


 「そうか・・・なにか、帰れるようになる手段でも何でもいいのだ、何かないか?」


 「ふうむ、これは魔法というもの根本から説明せねばならぬようですね」


 「た、頼む」

 魔法、その単語が彼の心の中に沈殿していく。


 「魔法それは、奇跡。昔から魔法とは世界を潤す神の御業だと考えられており、不用意に使う事ならず、生活に彩りを持たせるための1つの手段だったのです、そして悪用されるのを防ぐため伝記として書物などに書き写すことなどは禁忌とされています、そのため伝承と言う方法も一切ありません、各個、神子のみが使えるものとして魔法と言うものは存在しているのです、それゆえ自分自身が使えない魔法はそもそも存在しないものと考えた方がよろしいでしょう、私は異世界に行く手段を持った魔法は存じえません。私から言えることは以上でございます、ですがこれはあくまで魔物からとしての観点ですので人側からしたら何かしら手段を知っている者もあるいは・・・」


 「なるほど」

 星魔の唯一の希望が途絶えた、ブードなら方法もしくは解決策を知っている物だと思っていた、だが、そう簡単に行きそうにもないらしい。

 

「ですが、そうですね、先ほどの話を覆して申し訳ありませんが、ないのなら作ってしまうという方法もあるのでは何のでしょうか?私が見てきた人族はみなそうやって成長していきました。ましてやこちらの世界は向こうの世界とはだいぶ文化や建物の様式も違うようですので、私たちが元居た世界でできなかったことも、こちらの世界ではできる可能性はあるのではないでしょうか?」


 「そうか、そうだよな!」


 「はい、もしくは現在ある力のみを使用して、向こうの世界に帰る方法を知っているものをこちら側に呼び出すという方法もございます」


 「だがそれはリスキーすぎやしないか? 全く違う世界からの魔物も呼び出してしまうことになるかもしれん」


 「ごほん、僭越ながらこちらで覚えた言葉を引用させていただきますと、若者がリスクを恐れるなでございます。いざとなれば、私かヴィスカめが退治してくれましょうぞ!」

 カラスと言うその小柄な身でありながらもブードの身体がこの時だけは大きく逞しく思えた。


 「それでは、失礼します」

 話を終えブードは1人星魔の部屋を後にし。


 「これだから成長と言うものは面白い、人族に残された1つの可能性、我々魔物は無駄ともいえる長い年月を生きているからこそ成長と言えるものかも怪しいが、進歩を積み重ねてきた、だが人間は短い年月でさえ自分の物にしてしまう。それゆえに進化も退化も操ってしまうのだ・・・」

 ブードが星魔の部屋の前でぼそぼそと独り言を言っていると隣の部屋の茜がドビラを開け顔をだした。


 「さっきから何か聞こえると思ったらブードあなただったのね」


 「おや、これはこれは茜様お邪魔してしまいましたかな?」


 「いや大丈夫よ独り言なら星魔でなれているから」


 「なれと言うものは恐ろしいものですな」

 ブードが嘲笑気味に言う。


 「それよりブードなに言ってたの?」


 「いえいえ、人の成長を喜んでいたのですよ」


 「星魔の場合は退化とか言って笑ってたんでしょ、わかるわ」


 「そんなことございませんよ、星魔様もああ見えてしっかりと考えておいでです」


 「ふーん、そう、ところでブードあんた寝るときどうするのよ」

 茜はブードに近づき撫でながら聞いてきた。


 「寝る?・・・ああ、そうですな、どこか一定の場所を決めておいた方がよろしいですかな?何かあった時のために呼びやすいでしょうし」


 「なんなら私たちと一緒に寝る?」

 ぴょこっと扉からヴィスカが顔を覗かせた。


 「不用意に男性を女性の部屋に招いてもよろしいのですかな?」


 「ああ、ブードって男性だったのね、カラスとしか思ってなかったわ、大丈夫でしょいざとなったらヴィスカちゃんが私を守ってくれるわ」

 ヴィスカは急に振られ困った挙句胸を張って見せた。


 「ふふ、私も舐められたものですね、まぁ今はお言葉に甘えるとしましょう」

 こうして茜、ヴィスカ、ブードの2人と1匹が茜の部屋でこれから眠ることとなった。

なんか臭くなってきた希ガス

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