12 settlementのつかない戦い
天まで続くようなこの坂の上には言わずもがな学校があるこの作品が学園ものだからと有無を言わせぬ圧力により大多数の人間はこの言葉を鵜吞みにするほかないのだが、なぜ学校と言うものはこうも坂の上に君臨されているのだろうか、ロードバイクの少年しかり、宇宙人未来人超能力者と神に囲まれた凡人高校生しかり、人生とまで言われた名作アニメの高校しかり、坂の上に学校あり、この坂を超えられぬものが学校に通うべからずとでも言われているような、生徒はみなこの坂にふるいにかけられているのかもしれない、そんなんだから不登校児が増えるのだと教育委員会に物申してやりたいのもやまやまなのだが、実際のところ災害時における避難場所になるという点も相まって仕方のないことなのもひとつの事実として受け止めるべきだろう。
そんな坂にも魅力があることを忘れてはなるまい、坂の頂上まで続き青いペンキをぶちまけたかのような空を覆い隠すピンクの天幕は今はもう剥がれ落ちているのだが、レッドカーペットならぬピンクカーペットへとその身をやつし学校迄へとつなぐその道を彩っていた。だが端を見渡せば少し茶色く濁っている様も見受けられ、それも一つの様式美としてとらえるとするならば、形あるものみな壊れる。その一生全てを見られることを恐れず気高く生きた証なのだと物語っているかのように。
そしてこの坂の頂上にある召王学園は、創設からわずか10年程度の歴史で、中高一貫の私立学校で県内有数のマンモス校だ。
そしてこの召王学園の理事長は召王黒臣なのである、そのため茜や星魔、優子もこの学校に通っていてこの男も。
「隙ありぃ!」
星魔が教室へ入るとその言葉と共に掃除用具の箒がたたきつけられた。
召王学園には日常を脅かす問題児たちが多数・・・いや2人の問題児がいる。
一人は言わずもがな星魔で、もう一人は地毛は黒だが金色に髪を染めていて、生え際が少し目立ち容姿は言動さえまともだったらモテる部類に入りそうなこの少年、そう今不意打ちを仕掛けてきた張本人だ。
「っふ、不意討ちなど甘いわ!」
それをたやすく片手で受け止める星魔。
「この長い戦いに今日という今日は決着をつけてやる!」
「地を嘗めることになるのはお前だがな!」
不意討ちをした少年がもう一方の手に持っていた箒を星魔に投げた。
2人は箒をまるで剣のように構え、少し見合い・・・少年が星魔へと斬りかかった!
「はぁっ!」
「キィン!」
「先人は見習わなければなるまいて。」
「あぁ!」
「「キン!」」
2人は箒と箒がぶつかり合うたびに、セルフ効果音を自分たちの口で付けている。
そしてもう慣れたことかと言わんばかりに周りの生徒たちも机と椅子を教室の隅へどかし始め、生徒たちでまるでボクシングのリング、いやコロッセウムの決闘場の壁のように円を作りはじめた、それは教室内だけではなく、廊下のほうにまで観客を集めていた。
生徒たちは怒号にも似た歓声を上げるものや、2人の勝負のゆくへにお昼を賭けるもの様々だった。
それだけ大規模に発展しているのにもかかわらず、抑止力がないのは、2人の信頼の厚さと、もはや日常化した光景なのだろう、教室の隅では優子が呆れた雰囲気で椅子に座ってスマホをいじっていた。
2人の剣戟は型など関係なく、ただただ箒をぶつけ合うだけ、だがそれだけでは歓声など起きないだろう、それは2人の運動神経のなせる業だった。
箒をぶつけ合いながら、2人はまるでサーカス団のワイヤーありきのような動きをその身体能力だけで行っていた。
時には空中から斬りかかったり、時には後ろの生徒たちをボクシングリングのリングロープのようにして勢いをつけ斬りかかったり。
そのたびに場外から歓声があがった。
2人がチャンバラもとい戦い始めて何分たっただろうか、その戦いは終わるところを知らず、今もなお繰り広げられていた、そんななかピタリと歓声が止んだ。
「「キィン!」」
静寂の中に2人のセルフ効果音だけが鳴り響いた。
一瞬の隙をついて2人の頭上から辞書のような本が叩きつけられそうになった時、2人は思わずバックステップを踏み、その辞書の持ち主から距離を取った。
「っふ、またも不意を突かれることになろうとは」
「それにしても、俺らの背後を取るとは、星魔ここは一時休戦、2人であの悪の親玉を成敗してくれようぞ!」
「ああ!」
2人は同時に距離を詰め、悪の親玉に箒を切り込んだ!
「なんだと・・・」
その箒はいともたやすく食い止められ、2人は必死に箒の手を振り払おうとするのだが箒が電柱のようにピクリともしなかった。
「箒をあれほどチャンバラ道具にするなと言っておいただろ!」
たった1つの抑止力がそこにはあった。
「やだなぁ兄さんこれはれっきとした決戦ですよ、そんなちゃちなもんと一緒にしないでくだせぇ」
一番最初に不意を突いた少年が言うと。
「俺は兄になった覚えはないんだがね、仕道修也君」
「何をおっしゃいますか召王礼一先生」
「雅美姉さんがご結婚なさるって、ずいぶんと喜んでいましたよ」
「な、なんのことかな修也君」
質問しながらも眉を引きつらせている礼一。
「しらを切らなくても大丈夫ですよ兄さん、なんでも告白の言葉は、【君を幸せにするまで俺は死ねない】だったらしいじゃないですか」
修也が言ってやったとばかりにどや顔を礼一に向ける。
そのとたん観客だった生徒たちから歓声が上がった。
「まだその情報は誰にも言わないでくれって、お姉さんから言われなかったかな、修也君」
「あ」
修也は姉に釘を刺されたというより、その場の状況を今再確認していた。
咄嗟に口を押えた修也だがそれはもう後の祭りだった、観客をしていた生徒たちからまた歓声があった。
「そうなのですか兄上! これはこれはおめでとうございます」
修正が聞かなくなったのを尻目に星魔は兄に祝福の言葉を投げかけた。
「はいはい皆席について、HR始まるよ!」
そこで声を上げたのは優子だった。
生徒たちはそれに応えるように机を元の位置に戻し席につくのだった。
観客たちも各々教室へ戻っていった。
それに紛れて修也もこの場を立ち去ろうとしたのだが。
「修也、後で職員室に来なさい話があります」
「はいっ!」
身体をびくつかせ、まるでキツネにつままれたような顔で修也は自分の教室へと戻っていくのであった。
お昼休みに入り、星魔の教室1-1には祝福モードに突入していた。
といっても、女子生徒が大半なのだが星魔に「おめでとう」と祝辞を述べては立ち去り、またきたかと思えば祝辞だけを述べて立ち去る、まるで星魔が結婚でもしたかのような雰囲気だが、まだ結婚できる年齢ではないのは言うまでもない。
そして双子の犬も食わぬが始まった。
「こってり絞られちまった」
「当たり前じゃない、雅美姉が頭お花畑で話して言った後、お父さんにまだ言うなって時あんた、茜姉との将来の妄想し始めて心ここに在らずだったじゃない、全くお姉ちゃんに似て異性のことになるとダメダメよね」
「お父さんそんなこと言ってたか?記憶にないな・・・ なんで双子で俺たちここまで違うんだろうなぁ優子」
「知らないわよそんなの、二卵性で本当に良かったわ、こんなのが家に2人もいたらお父さんが大変だったもの」
どうやらこの脳天気さは母親譲りなのであろう。
「そうだよな、こんなにかわいい娘が2人も産まれてたら娘3人でお父さん家に居場所なかったよな、よかった俺男で」
「今まで生まれてこのかた15年間あんたとろくに会話できたことないのが不思議で仕方ないわ、同じお腹から生まれてきたなんて思いたくもないわ」
「そんなにおだてるなって」
「はぁ・・・」
全て罵倒していたはずの言葉をこうもあっさり、好機とでも言わんばかりに返されてしまう優子に、もはやなす術はなく、お手上げ状態と言わんばかりに立ち去ってしまった。
それを横で聞いていた星魔が。
「そういえば修也よ、姉上の手伝いはいいのか?」
茜はこの学校の生徒会長で、修也は名誉生徒会役員として活動しているのだ、まぁ単に茜の越権行為なのだが・・・
「ああ、俺の愛しの姫様はどうやら今日はご機嫌斜めらしい」
「姉上はいつもご機嫌斜めだろうが」
「それは星魔がいつもあることないこと言ってるからだろ」
「な、お前がそれを言うか!」
「星魔に合わせてるだけだもん、こんないたいけな男子高校生を捕まえて、なんてこと言うのよ!」
「キャラが定まらんなキャラが」
「まぁ何にせよ茜姉はやる事があるとか何とか言って、今日は生徒会休むんだって、生徒会の補佐じゃなく茜姉の補佐同然の俺は門前払いって訳、だからこうして愛しの星魔様とお昼をご一緒させてもらっているのですわ」
その途端教室にいる女子生徒たちの昼食を取る各集団が一瞬ざわめいたのは気のせいだろう。
「あ、そういやぁよ、優子から聞いたぜ、何でも異世界人? だかなんだかを呼び出したんだって?」
「ああ、ヴィスカのことか、我が歴史において奇跡的瞬間、人生の集大成とも言えようか」
「醜態の間違えじゃねぇのか?」
修也が茶化すと。
「舐めた口を聞きおって・・・そんなに信用ならんのなら、今一度異世界から召喚して見せようではないか!」
自信満々の星魔に対して、修也はやれるものならどうぞと言わんばかりに手を差し伸べた。
星魔は机の中からノートを取り出し、黙々と何かを書き始めた、昨日ショッピングモールから帰ってきた際に、見えたあれだ。
白紙のノートの上に幾重にも重なる幾何学的な文様を書き終えそのページをカッターで引き裂いたとき。
「いてっ」
カッターで指の先端を少し切ってしまう星魔。
「おいおい大丈夫か、ほれ、絆創膏」
自分の机ではなく、優子の机なのだがお構いなしに、絆創膏を取り出す修也。
その際に流れ出した一滴の血が、またも幾何学的な模様の中に消えていったのを誰も見てはいなかった。
「よし、これで呼び出せるであろう」
「やれるものなら」
「我、虚無より無を創造せしもの、汝永年の悲しみの果て、果てに夢みん、その夢、我が命によりこの世で」
◇◇◇
サモンズ王国、王宮内。
そこは王宮の中でも特に広い部屋、そう謁見の間だ、レッドカーペットにより道を作られ、その両脇には、天井を支える円柱が等間隔に並べられ、その1本の円柱ごとに甲冑を着た兵が1人ずつ立っていた。
そして、扉から一番遠い対面に置かれた、これでもかと装飾品の五月蠅さ漂う玉座。
その席に座る国王。
「この度はよくぞ参られた、剣の英雄、イスタ・ロウよ」
「国王様におかれましては、お変わりないようで、このロウも安心いたしました、失礼ではございますが、あいさつもこのあたりにして、さっそく本題に入らさせていただきたく存じます」
「うむ、その方がよかろう」
「我、剣の英雄、イスタ・ロウ、サモンズ内領地シャルド砦にてブカディ・アルドの捕縛に成功いたしました」
イスタ・ロウはそのまま腰に下げた剣を天に掲げると、場内から大きな歓声が上がった。
国王がその声を制すと、イスタ・ロウも剣を腰に戻した。
「はっはっはっはっは、これまたどうしたものか、そなたも面白い男になったな」
場内は歓声ではなく、動揺の声を上げ騒めき始めた。
「そなたの手綱に巻かれているその魔物はなんだ」
国王はイスタ・ロウが連れてきた手綱に巻かれたブカディ・アルドを指さした。
「ご覧の通り、ブカディ・アルドですが? さてはサモンズキング殿は私を試されておいでとみる、悪いお方だ、この剣の英雄が見間違えるはずがありません、数年前の強襲に居合わせ、ご助力させていただいたのが、この私なのですから」
「おお、そうだったな、我ももうボケが来ているのかもしれない、イスタ・ロウの顔すら忘れてしまっていた」
「まさかサモンズキング殿、そのような歳ではなかろうに、私めに何か恨みでも?」
その途端、サモンズキングが指を振ると、イスタ・ロウは謁見の間の中間あたりから、入口の大扉まで後方へ吹き飛んだ。
「あたたた、何をするのですかサモンズキングよ、いくらボケが進んだからと言ってこのような仕打ちは、あまりではないか」
「ようやく姿を見せたか、ブカディ・アルドよ下手な小細工をするとは」
後方へ吹き飛んだ瞬間、手綱とブカディ・アルドは消え、イスタ・ロウの姿はまるで魔物のような姿へと変化した。
謁見の間にいた騎士たちが剣を抜いた。
「よい、話があってこの場に来たのだろう」
立ち上がるブカディ・アルドには傷1つついておらずすぐさま立ち上がった。
「わかってるなら手荒な真似はよしてもらいたいね」
「魔法の効力を消すのは難儀でな、力の加減を見誤ったなすまんすまん」
「おいおい本当にボケが進んできちまっているんじゃねぇだろうなぁ」
「なに心配するな、貴様を屠れるほどの力はまだ健在よ、そんなことよりここへ何しにきた、貴様のような姫狂いがこの場に用があるとは思えんが」
「何言ってんだ、呼んだのはお前さんだろうが、サモンズキングよ、指名手配見たぜ、なんだあの強面の野郎は、本物の俺はもっとプリティだろうが」
「何を言うかその極悪非道を顔だけで表したようなやつが」
「ゴホン!」
「そうじゃったなすまないなヤタクよ」
先ほどから玉座の隣に立っていた、アリーシャ・ヤタクは話の脱線に乗じて会話に入ろうとしていた。
「ブカディ・アルドよ、そなたに聞きたいことがある」
「ん? なんだ聞きたいことってのは、やっと姫様の居場所を話す気にでもなったのか?」
「だからそれは」
「急報急報! アリーシャ・ヴィスカ様生存を確認、現在ブラック様の元に・・・」
「無礼者!」
「やっとだやっと探し当てた!」
連絡係としてやってきた兵に対し、罵倒するヤタク、そしてそれとは真逆に歓喜の声を上げるアルド
「やはりあの方たちは実在したのだ、あの方の残したお子に会える!」
「貴様、夢夢、向こうに行けるとでも思っているのか!」
「俺一人の力では、無理でしょう、ですが向こうから呼び出されてしまっては話は別、この日のためにこちらから呼びかけ、魔力の性質、形状、次の収束地点を探し出したのだ!」
その途端ブカディ・アルドの周りには黒い炎が立ち込める。
「先に行って持っていますよ! 数年後の戦いのに備えるんですね!」
そしてブカディ・アルドは黒い炎ごと姿を眩ました。
ネタ分かる人が本当にどれぐらいいるのか不安になってます。
キィン!
のあたりで入れていたのですが歌詞は利用規約に反するようで・・・ここなら本文じゃ無いので大丈夫だよね?・・・
まるでそのままテケテケテッテンテーンとペンギン村までみんなで集まってしまう勢いだ。
↑のネタはこれのことを指してます。




