10 異世界で暮らすhaerdness
ソファに座る、料理人理恵、剣士ヴィスカ、魔法使い星魔、放心状態の茜、3人はテレビを見てくつろいでいたのだが、やはりこの少女だけはテレビという存在に驚かずにはいられなかった、夕食後の何の変哲もないニュース番組に気を取られていた。
近い、テレビを見るときは部屋を明るくして離れてみるのが常識だが、画面というより、薄型液晶の平面さを横から見ているという、テレビ本来の機能をご存じでないのかもしれない、いや知る由もないだろう。
テレビの画面を見た後に、横からの薄さを確認し、またテレビの画面へと顔を向け、それを無限に繰り返す。
「この板版に人が・・・」
ブラウン管の時代ならまだしも最近のテレビは薄型になりすぎた傾向がある、箱ではなくもはや板だ。
その板の中に人が入る隙間など理恵の黒臣に対する愛の中に他人が入りようがないのと同じくらい無に等しいのだが、確かにテレビの中には人が映し出されている。
きっと板の中に人が入り込んでいると錯覚しているのだろう、だがそれはトッドのような二次元的な絵ではなく立体感のある次元での絵なのだ、板の中に人が入っていると思ってもおかしくはない。
そしてその板をじっくりと吟味している少女を傍から同じような目で見ている少女がここにも1人。
そう茜だ、さっきからあの少女は一体何をしているのだろうか異世界人とは言っていたがそんなわけはないと思いたいのにもかかわらず、テレビというもはや見慣れたものをさも物珍しそうに見る彼女に苛立ちさえ沸いて来ていた。
ドットの集合体でしかない画面なのだから側面から見たところでテレビの本質は分かりようのないものだが、それを昭和の黒電話を初めて見たかのような、ぶりっ子少女が「私これ初めて見た、なにこれキャーすごーい、写真撮っちゃお。パシャリ」とでも脳内で聞こえてきそうで、それをさも真剣に見ていれば茜が面白くないのも当然だろう。
「あ、あの・・・用を足したいのですが・・・」
女性ということもあって、星魔という男性のいる場所、さらに王族の前で用を足すなどという言葉に恥じらいを感じるヴィスカだが、聞かぬは色々な意味で一生の恥になりかねない一大事なのだろう、ソファに座る皆に対して、トイレの場所を尋ねるヴィスカ。
「茜連れてって上げて」
早く仲良くなってもらいたい理恵の親心で茜について行ってあげるように促した。
「こっちよ」
「はい」
先ほどの好奇心はどこへやら、ヴィスカは申し訳なさそうにトイレへと向かう茜の後ろに付き従う。
「ここよ、座ってズボンを下ろせば用を足せるから、水は勝手に流れるわ」
怒っている、ヴィスカはそう直感した、長年魔物を討伐してきた野生の感がそう告げていた、この赤髪のまも・・・女性は自分に向かって敵意をむき出しにしている、王族で自分が仕えなければならない存在だというのに、どうしたものか。
今はこの人のいうことを黙って聞いておこう、そうしなければ噛みついてくるかもしれない。
ヴィスカはトイレに入ると戸を閉め、しばらくすると、ヴィスカが入ったはずのトイレの中から悲鳴にも聞こえた声が。
「うあああああああああ」
その声はリビングにまで響き、星魔は声のしたトイレへと急いで駆け付けた。
「どうした!」
トイレの扉が開いたかと思ったら。
「お、王子こやつは、こやつは一体!」
今や珍しくもない自動水洗トイレ、使用者が用を足し終え便座から立つと、自動で流れるシステムだ。
それをまた生きている魔物などと勘違いしたのかもしれない。
「こやつの名はトルネードイレギュラー! こやつにつかまったものは渦潮に巻き込まれ2度と帰ってきたものはいないという、伝説の生き物、略してトイレだ!」
毎度ご苦労様です。
ヴィスカにトイレとは何ぞやと説明をしていると。
「ただの厠よ厠」
「ああ、厠でしたか・・・勝手に動くものでしたから、一体何事かと思いました」
「自動で排泄物を流してくれるのよ、見たことない?」
「はい・・・」
テレビを見ていた時のような興味本位で今度はトイレを見定めていた。
しかし、距離を取り、なるべく近づかないように、渦潮に巻き込まれないように慎重にその様子をみていた。
「はぁ・・・」
またも茜からため息が漏れた。
トイレにこれほど反応できるとは・・・茜の苛立ちは増す一方だった。
「茜、一緒にお風呂に入ってあげなさいよ」
トイレの一件がしばらくして落ち着いた後、またも理恵が茜に声をかける。
「昨日はすぐ寝ちゃって入れなかったし、多分入り方もわからないと思うの、だからお願い一緒に入ってあげて!」
まるで苦虫を嚙みつぶしたような顔で理恵のお願いをあからさまに嫌がる茜に対して、両手を合わせ懇願する理恵、なかなか理恵の願いを嫌がらない茜だが、今日というこの場面においてだけは、難色を示した。
茜からすれば、この訳の分からない子と、風呂で2人きりの時間を過ごすというのは、拷問にも似た耐え難い何かを彷彿とさせるのであった。
側から見て状況が芳しくないと分かったヴィスカが。
「あの、私1人で大丈夫です!お風呂ぐらい1人で入れます!」
ただの強がりだということはこの場にいる誰もが分かったことだろう。
「ね! お願い茜! 1人で入ろうとする少女をあなたは放って置けるの!?」
旅に出ようとする少女を黙って見送れるのか? とでも言うように理恵は何度も懇願してきた。
可愛い子には旅をさせよ。
1人で入らせてもいいのだろうが、やはり仲を取り持ちたい理恵の熱意に負け。
「分かったわ母さん、ヴィスカちゃんだっけ? 一緒に入りましょう」
ヴィスカに声をかると、小さく頷くだけだった。
脱衣所へ向かう茜とヴィスカ、茜は何も考えず着ていた衣類を脱ぎ洗濯かごへと置いた。
だが目の前の少女はどうだろうか、なにかもじもじと脱ぐのを躊躇っていた。
茜も最初は、年頃の女の子であれば他人に裸を見せるのを躊躇うのも当然かも知れない、しかもさっき会ったばかりの人間に、さらに他人の家でだ。
躊躇される洋服を脱ぐ三代要素があるとしたら1つぐらいは引っかかるものがあるかも知れない。
「脱ぐのが恥ずかしいの? いいのよ遠慮しなくても、私たち女性同士じゃない」
まずはリラックスさせなければ、先程のあからさまな態度を見られていれば、この人に裸を見せていいものかと直感がエマージェンシーを知らせているのかも、茜はそうも考えた。
「いえ、そう言うわけでは」
彼女は茜の身体をまじまじと見てそう告げた。
あまり他人の身体を見ることは褒められたものではないが茜の貧相過ぎる胸を残念におもってのことなのかも知れない。
だが、ヴィスカはそうではなく、自分の着ている服に手をかけて、脱ぐべきか脱がぬべきか考えていると言ったところだろうか。
「えいっ!」
突然手をかけられたヴィスカの服が、宙を舞った。
ヴィスカの腕を跳ね除け、躊躇いなど不要と言わんばかりに、ヴィスカの身体が露わになった。
その光景を見て思わず絶句してしまった。
茜の華奢な白い肌とは打って変わって、無数の傷、傷、傷。
四肢や顔には傷1つない少し焼けた綺麗な肌をしていると言うのに。
外側だけを見たのでは想像の及ばないほどの無数の傷。
深い傷、浅い傷、彼女というものの歴史を思わせる。
決して茜たちのような命の危険など殆どないような色鮮やか日常ではなく。
血や泥に塗れた、薄暗い日常。
ヴィスカの体にはそんな傷が無数に刻まれていたのだ。
これでもかと言うほどに。
彼女の身体を見た茜の表情は、まるで異形の存在。
この世にあってはならぬものを見てしまったかのような、そんな顔をしていたのだろう。
「すみません! お見苦しいものを見せてしまって!」
ヴィスカは自分の身体を床に縮こませ。一度宙に舞い床に落ちた服を手繰り寄せて服で身体を覆った。
しまった!
茜にひどく重くのしかかった何かが、心の中でその言葉をこだまさせた。
「いや、違うの! 謝らないで!」
床に縮こまっているヴィスカを抱き寄せ、謝る必要はないと、伝えなければならない。
「ちょっとびっくりしちゃっただけなの、異世界人だなんて、最初は信じていなかったから、ごめんなさい」
お互いの心音が分かるほど、茜はヴィスカをしばらく抱きしめていた。
しばらくして、2人は落ち着きお風呂の中へと入っていった。
シャンプーやリンス―、ボディーソープに、シャワーの出し方、何から何まで知らない少女に茜は事細かく教え、頭の先からつま先のてっぺんまでを洗ってあげた。「つま先はくすぐったいです」などとリビングにまで聞こえた声は、理恵を安心させるのには十分だった。
「その傷のこと聞いてもいい?」
お互い打ち解けた末に茜が意を決したように口にした。
「この傷は、魔物との戦いや、戦争の時などに負傷したものです」
ヴィスカは、自分の身体についた傷を感慨深そうに見ていた。
「本当に異世界人なんだね」
「私もよくは分かりませんがどうやらこの世界は私の元居た世界ではなさそうです」
「そう・・・でも、腕や足や顔に傷がないのはなんでなの?」
ふと出た疑問だった、それを嫌な顔せずヴィスカは。
「そういった露出の多い部位は、女性だからと言い高威力の回復魔法をかけてもらったんです、私は残っても構わないといったのですが、お父様がどうしてもと聞かなかったので、男性にはあえて戦での傷を残す方もいらっしゃいましたので、私も気にはしなかったのですが」
「優しいお父さんなのね」
「はい、それはもう、私が旅に出るので剣を習いたいと言い出した時がありまして、その時には考えが変わるまで部屋から出さんと丸1日部屋に閉じ込められたこともありました」
それを聞いて茜は過保護にもほどがあると一瞬思ったのだが、ヴィスカの傷がまた目に入り、それもそうかと唯々納得するばかりだった。
「なんでヴィスカちゃんは旅をしたいと思ったの?」
「私は、世界が見てみたかったのです、その時はただの好奇心半分で言っただけだったのですが、それでもあの世界に私という存在を知らしめたかったんだと思います。」
「なにそれ」
茜は破顔一生。
「でも、言い出したおかけで、剣という世界を知れましたし、短い期間でしたが私が元居た世界の髪の毛1本分ぐらいは知れたと思います、それがどれだけ些細な事でも、私は言ってよかったと、思っています」
にこやかに笑うヴィスカに茜の心は釘付けだった。
「可愛いね」
「あ、ありがとうございます」
照れながら笑うヴィスカはさらに可愛かった。
「私も1つ聞いていいですか?」
「なに? なんでもいいわよ答えてあげる。」
上機嫌で答える茜。
「その、この世界では茜様の赤い髪は非常に珍しいようですが」
茜がお風呂に入るためにお団子にしてあった髪を触りながら。
「そうよね、ヴィスカちゃんも可愛い緑色だけど、私の赤が気になっちゃう?」
「あ、はい向こうの世界でもあまり赤い髪の方はお見受けしませんでしたので」
「赤い髪の人もいたにはいたの?」
「いえ、いませんでしたね、人間の中には少なくとも、魔物の中に髪の毛がそのまま血管でできているものはいましたが」
「じゃぁ私も魔物なのかも、美味しそうなヴィスカちゃんを食べちゃうぞおおおお! ぐああああ!」
と言いながら茜はヴィスカの脇腹をくすぐり始め、お風呂場にヴィスカの笑い声が響くのであった。
2人はお風呂から出て、茜がヴィスカに「ドライヤーかけてあげる」と言い出し、2人はバスタオル姿でドライヤーをかけ始めた。
始めは居心地の悪そうな顔をしていたヴィスカだったが冷風に変わると、気持ちよさそうな顔をし、ただただ茜に髪をゆだねていた。
髪が乾くのと同時にヴィスカが、「これを少しお借りしてもいいですか?」ドライヤーを手に持ち、バスタオル姿のままリビングへ赴いた。
「王子! こやつは! こやつの名前は! 一体何というのですか!」
魔物とわかるや否や王子もとい星魔に確認を取りに行くヴィスカ
「うわっ!」
バスタオル姿で少女が自分の前に姿を現したとなれば、現役男子高校生なら、誰でもこんな反応をするのではないだろうかというお手本のような驚きをする星魔。
「こやつの名前はドライヤーだ! ドライヤー!」
顔を覆い、ヴィスカから顔を背ける星魔に対し、「どうしたのですか王子!」と詰め寄るヴィスカを見かねて茜がヴィスカの腕を引っ張り、その場は幕を閉じた。
「じゃぁそろそろ寝ましょうか、ヴィスカちゃん私の部屋で今日から一緒に寝ましょう」
理恵が徐に告げた。
昨日ヴィスカはリビングのソファで寝かせたのだが、ずっとこのままといいわけには行くまい、身体を痛めてしまうかもしれないし、風だって引きかねない。
黒臣と寝るために買ったキングサイズのベットだが、今はもっぱら、黒臣が不在なのでキングベットを1人で使う理恵がスペースの余っている私のところで寝ればいいわと言わんばかりにヴィスカを誘った。
「それじゃぁパパがかわいそう、帰ってきたときに自分の寝室が取られてたなんて、いやでしょ、ヴィスカちゃん私と一緒に寝ましょ」
いつの間にかヴィスカの後ろに立ち、ヴィスカに手をまわしながら抱き寄せる茜。
「えー、ずるーい私もヴィスカちゃんと寝たーい」
なぜか駄々をこねる理恵。
「わ、私も茜様と寝たいです、殿下のベットを使うのは忍びないので」
「じゃぁいいわ今日は星ちゃんと寝るもん!」
理恵が星魔に抱き着くと星魔は少し嫌な顔をしながら、1つため息をついた。
◇◇◇
2人は茜の部屋にいた、その部屋は茜の髪に負けず劣らずの赤! という自己主張の強すぎる部屋だった、髪の色だから赤を好きになったのか、赤が好きだから髪が赤になったのかと聞かれれば生まれつきなので前者なのだが、それでも赤と気持ち程度のピンクの部屋は少し目に悪かった。
そんな部屋の電気を消し、2人は1つのベットに横になっていた。
「そっか、昨日呼び出されたんだ、ヴィスカちゃんも大変ね、あんなのに勝手につれてこられて」
昨日の一連の流れを聞きヴィスカを憐れむ茜。
「そうですね、最初は困惑もしましたが、でも私は人生に無駄なことなどないとも思います、必ず何かの出来事には意味があると思うんです、いや思いたいだけかもしれませんが、でも今こうして茜様と出会えて一緒に横になってこうしてお話しできているだけでも私はこの世界に来た意味があったのではないかと思います」
ヴィスカが横で寝ている茜のほうに向きはにかんで見せた。
茜は思わず、ヴィスカを抱きしめ。
「そうね、私もヴィスカちゃんに出会えてよかったわ」
「そうだ茜様パフェってご存じですか?」
「どうしたの急に」
本当に唐突に放たれた話題に少し戸惑いを見せる茜。
「私今日、王子と優子様に連れられて、ショッピングモールという城に行ってきたのですが、そこで食べたパフェという食べ物がおいしくておいしくて、それを食べるために私はこの世界に来たのではないかと思うくらい」
先ほどと言っていることが違うのだが、そう思わせてしまうくらいパフェというものの魔性の魅力に取りつかれてしまったヴィスカ、目がパフェ一色と言わんばかりにヴィスカの目は輝いていたことだろう。
「ヴィスカちゃんも女の子ね、今度一緒にスイーツを食べに行きましょう! おいしいものはまだまだいっぱいあるんだから!」
「はい!」
スイーツという言葉に胸を躍らせながら2人は静かに眠りにつくのであった。
一方そのころ高校生にもなって母親と一緒に横になっている星魔は。
「星ちゃんまだ起きてる?」
「うん、どうしたの母さん」
「ヴィスカちゃん大丈夫かしら?」
「どうしたの急に、今日出かけたときのヴィスカはすごく、なんていうかこう、強かったよ」
今日あった事件をすべて話すのはよくないことだけは星魔にもわかっていた、だからあえて濁すそんな言い方をしたのかもしれない。
「見てればわかるわ、ヴィスカちゃんの持っていた剣、持ち上げてみたのよ私、でも私の力じゃ、ピクリともしなかったわ、あの子の力は本物ね、お母さん異世界から来たって言われて、あまり信じていなかったけど、あの剣を片手で持つヴィスカちゃんを見てはっきりしたわ、あの子はこの世界の人間じゃないって」
「そっか」
「でもね、外面的な強さを過大評価して、内面的な強さにまで結び付けちゃだめよ、誰しも弱い部分はあるの、だからそれをしっかりカバーしてあげてね」
「うん」
理恵は星魔の頭をそっと撫でた。
「頼むわね」
それ以上は何も言わなかった、ただただ流れる静寂の時間。
理恵はもう寝たかもしれない、だが星魔だけは眠れなかった。
そう夕方に寝てしまっていたからだ。
まぁ一概にそれだけではないのだが。
昨日今日と本当に色々あった、何から思い出しても頭の糖分を吸い上げられるような考えさせられるようなことばかりだ。
ヴィスカが来たこともそうだが、明らかにそこからの日常がいつもの知っている日常ではない気がした、だがこれが続けば、この日常に慣れていってしまうのだろうか、日々紡がれていた、日常という螺旋階段から、一歩踏み外したようなそんな感覚がした。
◇◇◇
サモンズ王国内領地に聳え立つ国内10本の指に入ろうかと言うほどの規模を持つ豪邸、その豪邸につけられた名前は【アリーシャ邸】そう端的に言ってしまえば、ヴィスカの実家である。
そのヴィスカの実家に住むのは、サモンズ王国、近衛騎士団団長、この家の家主であるアリーシャ・ヤタク。
そしてその妻アリーシャ・チア。最後にその2人の娘である少女、アリーシャ・ウトカ。の計3人そして使用人たち。
そして今現在その家に在宅中のすべてのものがヤタクの書斎に1人残らず招集されていた。
「あなたヴィスカは」
そう告げたのは、凛々しくも美しい顔立ちで、金色の髪を携えた女性チアだった。
「分からない、正直なところ今どこにいて、生きているのか死んでいるのかさえ・・・」
「そんな・・・」
その場に居る人々から次々に同様の声が漏れる。
「お父様、なぜ突然姉上は・・・」
そう聞いたのは、チアに似た金色の髪を持ちショートに切り揃え、母親によく似た顔立ちの少女ウトカ。
彼女は父親に質問しながらも自分が焦り動揺していたことに気づく。
先程生死すら分かっていない状況だと告げられたばかりだ、つまりは何も分からないと言われているのだろう。
「ヴィスカの捜索願いは明日の朝にでも出よう、先程いなくなったのだそう遠くへはいけまい、しかし」
ヤタクは言葉を濁した。
「しかし!?」
この部屋にいる誰もがヤタクの次の一斉に固唾を飲んだ。
「この世界に居ないかも知れない」
一同に動揺が走る。
「つまりそれは・・・」
「奥様!」
執事長のアルード・アドラが、倒れそうなチアを抱きかかえた。
「大丈夫でございますか!?」
「え、えぇ・・・」
アドラは立てそうにないチアを近くの椅子に座らせた。
「すまない誤解を招く言い方だったかも知れない、この世界と言うのは、他の世界にいる可能性があると言うことだ」
「他の世界?」
ウトカは正直何を言ってるのか理解出来ていなかった。
どうやらヤタクは他の国のことを示しているわけではないらしい、だとすると世界と言う意味が分からなかった。
この世界とは別の世界が存在する、その概念すらないのだろう。
「ああ、にわかには信じられないが、異世界と呼ばれる場所にいるとサモンズ王は言っておられた、その世界にはこちらの常識が通用しないともな・・・」
「そ、そんな・・・姉様」
「なに、ヴィスカのことだ、案外けろっとしているかもしれない」
ヤタクのその言葉は気休めに過ぎなかった、いや自分に言い聞かせたのかもしれない。
ヴィスカは簡単に死ぬ玉ではない、心にそう言い聞かせ、闇夜を照らす月を窓越しに見て、ヴィスカに思いを馳せるのであった。
最初はお風呂の入り方を教えるだけだったのですが茜がそんなに簡単に納得するはずない!じゃぁ証拠を見せなければと思い書くに至った話なのですがなんかそれなりにサービスシーン?になりつつある。 まぁ今後のお約束シーンに向けてこの話は大いに役立つので今後に期待!予定は未定




