第30話 勇者、仕事の成果を報告する
「して、首尾の方は?」
「抜かりなく終わったよ。それと、戦利品だ。できれば誰にも使われないよう封印してくれ」
「これは……鏡……魔鏡か?」
「あぁ、完全な魔鏡を手違いで作ってしまってな。使われ方によっては危険な物だ」
「カーライルさん、真・魔鏡ですよ!」
横からフランが呼び方について訂正するが、何だそのダサいネーミングは?
「その魔鏡は完全に魔法を跳ね返すのですよ、アルベーリ様」
「ふむ……それは確かに危険だな……。わかった、厳重に保管しよう。しかしだな……」
「どうした?」
「……この魔鏡の名前は跳ね返す君でどうだろう?」
「魔鏡の名前なんかどうでも良いだろうがっ!」
真剣な顔をしてたから真面目な話かと思ったら、魔鏡の呼び名を考えてたのかよ!
呼び方なんて何でも良いだろうが。
「えー、それはダサいですよー。アルベーリ様は、ネーミングセンスが無いですねぇ。やっぱり真・魔鏡が良いですよ。ね、カーライルさん?」
「いやいや、魔法を跳ね返すのだから、跳ね返す君がわかりやすくて良いだろう。な、カーライル?」
何故二人共俺に聞いて来るんだ……魔鏡の呼び方なんて、心底どうでも良い。
適当にあしらって、今日はさっさと休む事に決めた。
これ以上こいつらに付き合ってたら疲れるばかりだからな。
ちなみに、フランがうるさいから風呂にはしっかり入った……というより、「人を注意する暇があったらお前が風呂に入れよ」と言ったら、ようやく自分の姿に気付いたフランが恥ずかしそうに走り去って行ったのは余談だな。
翌日、アルベーリの執務室で報酬を受け取り、次の魔物の情報を聞こうとしたところで、窓からフランが乱入して来た。
「鏡が売れましたー。これでしばらく小遣いに困る事はありません!」
そんな事を口走りながら、アルベーリの部屋へと入って来るフラン。
窓からというのもアレだが、魔王の前でそのお気楽な口調で良いのかこいつは……。
「ほぉ……ならば今度、我と小遣いを賭けて勝負だな……」
「いくらアルベーリ様が相手だからって、負けませんよ!」
「ふはははは、我も今月は小遣いがピンチなのだ。この機会に潤沢な資金を得るとしようじゃないか!」
何故か、いきなりアルベーリがフランと賭け事をする話になっているが……魔王が賭け事をしていて良いのか?
不法賭博場を良しと言っていたから良いのか。
しかし、魔王は小遣い制なんだな……世知辛い。
「んな事はどうでも良いから、まず魔物の情報をだな……」
「おっと、話しが逸れてしまったな。次の魔物だが……」
「もう次に行くんですか? 連日2件の問題を解決したんですから、もっとゆっくりしましょうよー」
「いや、これは仕事だからな……それに魔物で困っている人もいるんだろ?」
「そうだな……今日明日は休暇としよう。我もたまには休みたいしな」
「おいこら魔王。いきなり休暇なんて良いのかよ。困ってる国民を放っておくのか? それに、国の執務があるんじゃないのか?」
「まぁ、その辺りは何とかなる。適当に仕事をしていれば十分だ」
いい加減過ぎる魔王だと思っていたが……ここまでとは……。
これで何で200年も統治が続いてるのか、魔王国一番の不思議だ。
「さすがアルベーリ様。話が分かりますね! ではさっそく、小遣いを賭けて……」
「それがしたいだけだろ、お前は。そんな事は許さんからな」
「えー、カーライルさん横暴ですー」
「小遣いを増やす良い機会だと思ったんだが……」
「あんたもかよ! そんなに賭けがしたいのかよ! ……はぁ……もう良い、俺は一人で適当に休んで過ごすから……勝手に小遣いでも賭けててくれ……」
「まぁ待て、落ち着けカーライルよ。賭けはしないから、とにかく休みを有意義に取ろうじゃないか」
「えー」
アルベーリは賭博を諦めて俺に声を掛けてくるが、フランの方は不満そうだ。
どれだけ賭け事をしたいんだお前は……。
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