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勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~  作者: 龍央


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第26話 勇者、鏡を割り続ける



「割るのは気持ち良いんだが、音がうるさいな……」

「仕方ないですよ。それとも、魔法で音を消しますか?」

「いや、ここでそれをやったら周りの音まで無くなるからな。話もできなくなっちまう」


 フランと話しながら、俺はバックミラーと呼ばれる魔物に拳を叩き込む。

 拳を受けた鏡は、大きい音を立ててばらばらに崩れ去り、それと同時にギョロギョロ動いていた目も消滅する。

 どうやら、鏡部分を割ると死んだ事になり、上部に付いてる目が消え去るようだ。

 どこに消えて行ってるのか、わからないけどな。


「しかし、鏡を拳で割るなんて……馬鹿ですか?」

「お前に馬鹿とは言われたくないんだがな……まぁ、コツがあるんだよ」


 また別のバックミラーを割りながら、フランと話す。


「どんなコツですか……。素手で叩き割るなんて、どうやっても手がズタズタになる事しか想像できません」

「ええとだな……こうやって割るだろ? そうしたら鏡が割れて飛び散るわけだが……その瞬間、こうやって破片を避けるんだ。……つまり、ガーンでバリーンでシュッシュッって事だ」

「説明されても意味がわかりませんよ。擬音で説明されるとさらにわかりません」


 フランに説明するように、少し動きを遅くしてみたんだが……わからなかったか……。

 擬音に関してはフィーリングだ。


「見えない速度で拳を動かしてるのはわかりますけど……」

「簡単な事なんだがなぁ」

「それができれば魔族は苦労しません!」


 フランと話しながらも、両手で別々のバックミラーを破砕して行く。

 しばらくして、簡単に数えられるくらいの数になったところで、終了だ。

 これで間引きができただろう。


「しかし……この破片の山はどうするんだ?」


 俺が破砕して散り散りになった鏡の破片を、せっせと集めるフラン。

 その手には分厚い皮手袋をしている……破片で怪我をしないためなのはわかるが、用意が良いな。


「もちろん、売るんですよ。いやー、カーライルさんのおかげで良いお小遣いになりそうですよー」

「高く売れるのか?」

「アルベーリ様も言っていましたが、貴重な素材ですからね。溶かして固めればそれだけで、また鏡として使えます」


 多分、魔物の鏡としての性質が残ったままの素材なんだろう。

 普通は溶かして固めただけで鏡になるわけはないが、この素材は違うようだ。


「魔力を込めて生成すれば、バックミラーと同じ性質も備えるそうですよ」

「魔法を跳ね返すのか?」

「反射と被弾で半々ってとこらしいですけどね。まぁ、それにも熟練の技術が必要らしいですから、そうそう数はできそうにないですけど……」


 半々……全てを跳ね返すわけじゃないのか……。

 半分を受けてしまうって事は、受ける瞬間に離すか、魔法に向かって投げれば、使い切りで一度だけどんな魔法でも身代わりにできそうだな。

 全ての魔法を跳ね返す鏡が簡単にできるようなら、対魔族の防具になりそうだったんだけどな。

 ……魔族と戦う気はないが。


「ふむ……溶かして固める……魔力を込める……こうか?」

「……へ?」


 フランに言われた事を考えながら、まとまった破片を魔法で熱して溶かし、さらに追加の魔法で冷やして固め、その途中で魔法に使わない魔力を注いでみた。

 簡単に試してみたら、山積みになっていた破片が、人の胴体くらいの大きさの鏡になり、フランはそれを見て顎が外れた。

 ……顎大丈夫か?


「……いたたた……んっ……と」


 外れた顎を自分の手ではめ直すフラン。

 器用な事をするなぁ……かなり痛そうだが。


「……ちょっとカーライルさん! 今何をしたんですか!?」

「ん? ちょっと魔法で、さっきフランが言ってた事を試してみたんだが……?」

「試しただけでできる訳が無いでしょう! さてはカーライルさん、熟練の職人ですね!?」

「いや、そんなわけないだろ。俺は勇者だ」

「何か間違ってます。きっと勇者だったのは勘違いなんです。実は、元々鏡を作る職人さんだったに違いありません!」

「だから違うって……」


 などと、しばらくそんなやり取りが続いた。

 俺、職人じゃないからな?




別の作品も、連載投稿しておりますので、ページ下部のリンクよりお願い致します。


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