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瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第5章 調査
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64. 竹内夫妻2

「穂積蓮とは仲が良かったんですか?」

 百合華が聞いた。


「いえ。だってあの子、汚いし暴力的だったから。」


「怜と同じだよ。いつも同じ服着て臭かったって。」

 竹内がフォローを入れる。


「でも怜はいじめられる側だったけど、蓮は…暴れん坊だったんですか?」


「蓮もね、からかわれる対象だったの。赤毛のくるくるパーマで、肌が誰より白くて、鼻が大きくて高くて。明らかにクラスで目立ってた。見た目に違和感があるのに日本語喋るから、そういうのを意地悪な子たちが冷やかしてたの。」


「……なるほど。」


「蓮はね、そういうことがあると、椅子持ち上げて投げたり、冷やかした相手殴ったりで、問題児だった。先生が止めに入ると先生を殴る蹴るしたりね。言葉より手がでるタイプだった。」


「それはいつ頃から…?」


「1年の最初頃からよ。でも、蓮もやっぱり運動会とかは参加してなかった。学校に来る目的が、怜と同じで、給食だったのよ。」


 百合華が合点する。


「蓮はね、大きめのタッパーを持ってきていた気がするわ。給食の時間になったら、『いただきます』する前にガツガツ食べて、半分位残して、残ったのをタッパーに次々詰め込むの。唐揚げとか、魚とか、ほうれん草の胡麻和えとか…もちろんご飯の残りとか。他の子が残してたらそれも奪ってたわ。先生?何も言えなかったみたい。よくわからないけどね。」


「それから…」


 竹内が話し始めた


「給食が終わると、怜と蓮はすぐ家に帰っちまうんだよ。授業なんて関係なしでさ。」


「で、だ。俺じゃ無いやつなんだけど、俺はもう不良やめてたからな。うん。俺のクラスのやつが、怜たちの家を見てみようぜって話しになったらしいんだ。給食終わって、そいつら…2、3人の目立ちたがりのガキどもがさ、学校抜け出して怜たちを尾行したんだよ。」


「どんな…家だったんでしょう」


「笑うほどすっげえオンボロの、文化住宅っていうの?2階建で木製のさ。今にも崩れそうな家だったって。次の日大騒ぎになったよ。

 それ聞いた後、俺も近く通った時見たんだけど、確かにひどかったわ。人住めんの?って感じ。住んでるんだけどさ。昇り降りするとカンカンカンカンって鳴りそうな鉄の階段が一個ついててさ。あれアパートって呼ぶのかな。多分リビングとか無さそうな家だった。」


「いつ頃見に行かれました?」


「小4か小5くらいかな。記憶っておぼろげだな、悲しいねえ〜。」


 小学5年生なら…時期的に、まだ五谷にいてもおかしくない。

 スナック【のぶ絵】からお金を奪って消息不明になったと思ったら、五谷にまだ住んでいた。推測通りだ。


「その建物って…まだあります?」


「いやあ、さすがに無いよ。もう新しいマンションが立ってる。」


「場所は…」


「小学校からだいぶ遠かったよ。歩いたら1時間位あったんじゃないかなあ。それを兄弟は走って帰ってたから追うの大変だったって、目立ちたがり屋が自慢げに言ってたなあ。

 具体的な場所は、またあとで簡単な地図書こうか?」


 百合華は「助かります」と言った。

 竹内は続けた。


「そうそう、思い出したんだけど、怜はいつも変な髪型だったけど、1年に1、2回はスッキリさっぱり短髪になるんだ。坊主になってた時もあったけど。こんな話、役に立たないだろうけど。」


 竹内は笑ったが、百合華はピンときた。

 ———もしかして、年賀状のため?他にも目的が…?


「授業参観とか、懇談会とか、PTA活動なんかに母親の弥生が参加していた記憶はありますか?」


「無いね、全く無い。」


「私も無いかな、お母さんは見たことないと思う。」


 先ほどスナック【のぶ絵】でスマホで撮らせてもらった年賀状の写真を見せる。


「この中央の派手な人が母親なのですが…」


「なんだこの写真。あの貧乏で臭い兄弟がこんな写真撮ってたのかよ。」


「ああ、なつかしいなあ、この赤毛。蓮だよ……」


 しばらく2人には感慨に浸ってもらおう、百合華は焦らせないよう気をつけた。


「でもこの母親は記憶にねえなあ。化粧濃いなあ〜普段からこんなだったのかな。」


「私も思い浮かぶ人はいないかな…参観とかに来てたら目を引くでしょ、もし普段も化粧こんなだったら。」


「はい、普段もこんな感じだったようです。」


「じゃあなおさら、見た覚えは無いや。」

「私は見て無いと思う。」


 夫妻は声を揃えて言った。


 百合華は気になっていたことを聞いた。


「以前こちらでお話を聞いた時、怜が中学に入るか入らないかくらいの時期に急にいなくなったとお話されていましたが、当然蓮の方も一緒にいなくなったんですよね?」


「そう。忽然(こつぜん)といなくなったの。2年の…1学期か、2学期か…忘れちゃったけど、何の挨拶も無く。いなくなった時、担任の先生が「穂積君は引っ越しました。」って言ってたけど、どこへ、とか具体的な話は無かった。」


「あいつらが居なくなったからって他のやつらの生活は変わらなかった。でも、倉木さん。引っ越したあいつらが、たまたま家族でドライブしてた俺の後輩に目撃されたんだよ。」




「どちらでですか?」百合華は尋ねた。




「となりの市の、施設だよ。」


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