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瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第4章 準備
34/232

34. 取材準備

 穂積怜は、質問を許可する者として…


 ー穂積怜自身

 ー織田恭太郎(おりたきょうたろう)社長

 ー織田優子夫人

 ーバーオリオンの店長


 を選んだ。

 ただし、質問は1つまで、という条件付きだ。


 まずは穂積怜自身からだろう。

 聞きたいことが山ほどあり過ぎて1つに絞るのが難しい。しかし1つだけ突出して聴取しておきたいことがあった。


 そもそも、穂積怜にはパートナーが居るのだろうか?


 今、自分をこの取材に駆り立てる1つの原動力は、穂積怜への好奇心だ。当然憎しみもまだ残っているが、同時にもっと知りたい、近づきたいという気持ちも無いと言ったら嘘だ。


 この両価的な感情の波に振り回されながらも、やはり穂積怜への果てない関心を持っているのは事実だ。


 だがここで、実は彼女が、実は妻が居る…という事実があれば、百合華の好奇心や関心は急に萎んでしまうかも知れない。それこそわざわざ土足でプライベート領域に侵入する権利は無い。


 百合華自身は、まりりんのように、付き合いたいとか結婚を視野にとか、そのような意図があっての取材ではないが、さすがにパートナーがいるのなら秘密はその人とシェアしてもらった方が良い気がする。



 百合華は今日、会社を出てからLOFTに寄り、穂積怜の『調査ノート』を買った。

 ロルバーンのメモ帳。グレーの星がちりばめられているデザインが一番気に入った。表紙にゴムバンドが付いていて、すぐにメモが開かないからプライバシー保護にも少しは役に立つかな、と考えて買った。


 メモ帳には、最初に今日までに知っていることを自己コメントと共にまとめてみた。


 名前は穂積怜←最初はこれしか知らなかった

 38歳←全然見えない…

 身長は185←でかい!

 体重不明←細い

 髪の色は黒(地毛っぽい)←巻き毛

 目の色は不思議な色←何色?

 色白←うらやましっ

 織田社長とは【ただならぬ関係】←気になる

 重たいものを抱えている(桑山の推測)←意味深

 出版社勤務←織田出版

 元バーテンダー←バー・オリオン

 車はvolvo←カクカクした車

 無愛想←表情筋鍛えろ

 ユーモア無し←あってほしかった

 英会話上級←半年間の結実

 喫煙家←銘柄はわからない〜

 元々は昼ごはん抜き←煙草がご飯って言ってた

 コンビニご飯嫌い←なんで?

 超早食い←驚いたし

 ご飯は1人で食べる派←そういうタイプもいるよね

 子供が苦手…?←わからないけど…

 器用に電卓を操る←指がきれい

 神保正樹と仲良し←兄弟みたい



 そして今後知りたいのは…


 交友関係

 趣味

 好きな音楽・好きな映画・好きな本や雑誌…

 本当に好きな食べ物

 今までの恋愛について

 両親や兄弟、家族関係

 今のパートナーの有無…

 彼の過去全て…

 etc…



 最終的にはパートナーの存在が1番気になる気がする。

 なにしろそれは、織田夫妻やちょび髭店長に聞いても事実を知らないかも知れない。やはり本人に聞くのが先決かな?

 絶対他にも大事な事があるはずだ、と思いながらも、明日穂積怜に会うまでに他の決定打が出てこなかったら、【パートナーの有無について】のカードを1つ、使ってしまおう。そう思ってノートを閉じた。


 穂積怜が公私ともにあんな無愛想だったら、パートナーも大変だろうな…と余計な同情をしてしまった。

 でも美味しいカクテルを作ってくれるのは良いなあ…


 パートナーとはどんな所にデートに行くんだろう…


 38歳だもんなあ…何回くらいデートとかしたことあるんだろう…

 いや、子どもがいてもおかしくないか。



 変な妄想の世界に入っていた時、はっと思い出したことがある。

 以前弁当を作っていた時、1ヶ月作ったらどこかで奢ってもらうという約束をしたのだった。思い出すと胸焼けがするが、それは一旦置いておいて。

 万一1ヶ月作り続けたとしたら、穂積怜は私をどんな所に連れて行ってくれたんだろう?



 …まさかオリオンじゃないよね。


 百合華は穂積怜と一緒にお洒落なレストランで外食することを想像してみた。笑顔で食べる2人を。

 実現できなかった。

 そう思うと急に胸が苦しくなった。


 いまだ混乱する気持ちの中、明日するストレートな質問を思い出したら少し笑ってしまった。


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