198. 植杉から織田へ
「———あ、こんにちは、ご無沙汰しております。植杉です。はい、そうです、綾谷の、にじのゆめの。中々連絡できなくて申し訳ございません。
ええ、先日、織田さんの所の社員の、倉木百合華さんという方が話を聞きに来ました。まるでジャーナリストですね。まあ、号泣し過ぎて過呼吸になりかけていたところはご愛嬌ですね、はははは。
お聞きとは思いますが、僕は今回、怜自身の許可があって、事件のこともお話しました。ええ、概要ですが。
倉木さんですか?そりゃあもうショックを受けてましたね。それはそうですよね。
それでね、織田さん。折り入ってお願いがあるのですがね、怜が退所してからの話を倉木さんにしてあげて欲しいんですよ。
ええ、勿論、怜が「いい」と言ったらですが…。
倉木さんがね、どうしても退所後の怜のことを聞きたがっていて、僕は施設に入所中の怜の話しか基本的にできませんから。
退所後のことは、織田さんが一番良く知っていらっしゃる。
ルールですか?あはは、それも倉木さんから聞きました。なので、前提は怜が許可したら、の場合です。
僕はね、ひょっとしたら、怜は倉木さんに、怜のことを理解して欲しいっていう願望があるんじゃないかって思うんですよ。
じゃないと、例の過去を探って良いなんて言わないでしょう?
倉木さん自身も、何だか事情があって怜の過去を知りたがっている様ですし。そう言った訳なので、お時間のある時に怜と相談していただけますか?
優子さんはお元気ですか?前に体調を悪くされたと聞いたもので。そうですか、屋上に庭園を。いやあ、それを聞いて安心しました。優子さんにもどうか宜しくお伝えください。
また織田さんも、優子さんと一緒ににじのゆめに来てくださいよ。久しぶりに話がしたいなあ。コーヒーですか?勿論、本物をご用意しますよ。はははは。
出版社での怜の仕事ぶりはどんな感じですか?なるほど、怜がプレゼンをしたりするんですか。想像つかないなあ…一度見学に行きたいものです。
織田さんのバーも活気があるようですね、今度僕の方からもお尋ねさせてもらっても良いですか?同窓会みたいで楽しそうじゃないですか。
バーでは美味しいお酒を飲みたいな。え?怜に作らせるって?それはうまい酒になるでしょうね。
ではそういうことで、怜とのこと、宜しくお願いします。
はい、お互いに年ですからね。体調には気をつけましょう。
それでは、失礼します。またお会いする日を楽しみにしておきますね。」