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瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第11章 過去・2
154/232

184. 21年前・12

「嘘だろ!」


 沈黙が流れる。



「嘘だ!嘘だろ!」


 怜はその場に居る看護師、1人1人に聞き回った。皆顔を下に向けて口をつぐんでいる。それが答えなのか……?そんな、まさか。何かの冗談だろう?



「そんな筈無い!」


 怜は点滴の針などを引き抜いて、裸足のまま看護師たちにぶつかり、突き放し、部屋を出て行こうとした。看護師に腕をつかまれ、「穂積君、お部屋に居よう。まだ穂積君の体調は良く無いの。」と言われた。


「そんなこと関係無い!」


 怜はつかまれた腕を振りほどき、部屋のスライドドアを怒りを込めて開き、出て行った。後ろでは看護師がPHSで誰かに連絡している気配がした。


 おれが生きているのに、あいつらが居ないなんてありえない。どこかの部屋で寝ているはずだ。


「おい!おい!蓮!!ももーーー!!」


 怜は叫びながら、一部屋一部屋を探して回った。大部屋の部屋が多かったので、カーテンを開けて人物を確認した。まだ弟と妹は見つからない。



「蓮!もも!どこだよー!起きろよ!!」


 なおも走りながら、カーテンを開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した。他の患者は何事かと見に病室から出て野次馬している者も居た。



 怜は叫べる限界のの大声を出して叫んだ。


「蓮ーーーー!!ももーーーーーーーーー!!」


 そうだ、あいつらは小さいから小児病棟にいるのかも知れない。小児病棟はどこだ、怜は涙と鼻水を流したまま、走り出した。


 そこへ屈強な体格の男性看護師が2人、怜に近づいて来た。


「よくがんばった。部屋へ戻ろう。」


「部屋で落ち着いて話をしよう。」


 男性看護師は優しく声をかけてきた。怜は小児病棟はどこかを早口で聞いた。

 男性看護師たちは首を振った。



「蓮……もも…………蓮……もも……。」


 怜はその場で膝をついて崩れ落ちた。





 ウワアアアアアアーーーーーーー!!!



 怜の慟哭(どうこく)が、病棟中に響いた。怜は頭を抱え、額を廊下に打ち付けた。

 怜は男性看護師2人に両方の脇の下を支えられ、裸足の足をひきずりながら病室へ戻った。人生でこれほど泣いたことは無かった。

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