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瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第11章 過去・2
152/232

182. 21年前・10

 織田恭太郎(おりたきょうたろう)は、事故の第一発見者だった。

 仕事が終わって帰宅してからも、その日は本屋の社長になる話を妻にしなかった。酒も飲めなかった。


「どうしたの?調子でも悪いの?」


 妻の優子が心配している。

 恭太郎はことのあらましを妻に話した。妻は絶句していた。


「県立総合医療センターに救急搬送されたらしいんだ。お見舞いに行くべきかどうか悩んでいるんだよ。」


「そうね…突然見ず知らずの他人が来たらその子もびっくりすると思うわ。」


「そっと、花だけ受付で渡して少年に届けて貰おうかな。」


「それでも良いと思う。」


「でも、彼が無事かどうか気になって仕方が無いんだ。」


「でも、昨日の今日でしょう?面会謝絶の可能性もあるわよ。」


「確かにな…花だけ届けてみて、いつ頃だったら面会できるかスタッフに聞いてみようかな。それともお節介だろうか。」


「病室に花があるのは良いと思うわ。何なら私も一緒にいく。あなたの花のチョイスは信用できないから。」


「ああ…助かる。」


 恭太郎は今日は仕事は休みだった。

 優子と共に花屋へ行き、優子が店員と相談しながら花を選んでいるのを側から見ている。バスケットに入った花束を選んだらしい。中々洒落ている。


 恭太郎と優子が病院へつき、病院の窓口で昨晩搬送された少年との面会の希望を伝えると、事務員は内線で確認後、「申し訳ございませんが、現在面会はご遠慮いただいております。」と言った。

 ついでに患者との関係を聞かれたので、「第一発見者です」と告げた。


「お手数ですが、この花を彼に届けてくれませんか?」


「わかりました。お名前頂戴しても宜しいですか?」


織田(おりた)です。オダと書いてオリタ。」


「承知しました。届けておきますね、ありがとうございます。」


「いつ頃になったら面会に来れますか?彼の顔を1度見ないと心配でたまらないのですが…。」


「私にはちょっとわかりません…申し訳ありません。」


「そうですよね、では宜しくお願いします。」


 織田夫妻は対応してくれた事務員に礼を告げ、病院を後にした。


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