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瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第11章 過去・2
151/232

181. 21年前・9

 ———長い眠りから目が醒めた。目の前は真っ白……天井か。


 どういう状況か怜はわからなかった。


 眩しい……。目が(くら)んだ。しばらく目を閉じて、ゆっくり目を開けてみた。どうやら枕元の方に窓があるらしい、カーテンはしているようだが、光が頭の上から入り込んできている。



 ここはどこだ。いつここへ来たんだっけ。思い出そうとすると頭痛がする。


 右腕を見ると、針が刺さっている。その針の先についた管をたどって上方を見ると、点滴の袋がぶら下がっていた。

 点滴の袋の周りには、色んなモニターやコンピューターのようなものが並んでいる。


 口元が不快だと思ったら、変なマスクを付けられていた。怜はそのマスクを外した。この方がよほど楽に呼吸ができる。


 病院だ。でも、何故?


 怜はベッドから起き上がった。気分が悪い。病気で病院に来たのだろうか。


 すると数秒で沢山の看護師と、医師がやってきた。


「穂積君、目を覚ましたんだね。横になっておこうか。」


 医師が言った。

 看護師2人が、怜をそっと横にする。すると急激に嘔気に襲われた。


「吐きそう…」


 すると看護師が『ガーグルベース』と言い、


「穂積君、横向くよ。」


 と、姿勢を横向きにされた瞬間、吐瀉物を受ける容器に嘔吐した。しばらく話すことができない位苦しかったが、看護師がずっと背中をさすってくれていた。


 そういえば、見覚えのないパジャマを着ている。入院しているんだろうか。


 嘔吐して早くなっていた呼吸が落ち着いてきた。「もう大丈夫かな?また気分悪くなったら言ってね」と看護師が言い、怜は天井に対して正面向きに寝かされた。


 怜は周辺を見回した。珍しい生物を見るかのように、看護師達や医師が自分を上から覗いて。上を見ると、やはり白いカーテンを引かれた窓。

 個室らしい、他の患者は見当たらない。消毒液のような病院独特の臭いがする。


 怜は聞いた。


「ここ、どこですか。」


「病院だよ。」


 すると医師が怜の横にあった椅子に座り、怜に語りかけた。

 その間、看護師たちは怜の指に器具をつけて報告をし合ったり、何か確認をし合っている。『血圧120/72mmHg……サチュレーション……』


 医師は言った。


「君の名前は?」


「名前…………え?穂積怜。」


「年齢はわかるかな?」


「17」


「通っている学校の名前は?」


「綾谷中学」


「ねえ、先生。おれ、何でここに居るの?」


「うん?わからないかな。ちょっと待ってね、質問を続けるよ。」


「今日は何月何日の何曜日かな?」


「………わかりません。」


「ここへ来る前はどこに居たか覚えてる?」


「にじのゆめ…?わからない。」


「君の兄弟の名前は?」


「蓮ともも。」


「5+3は?」


「8」


「12×3は?」


「36」


「手をグーパーって3回してくれる?」


「はい。」


「これは何?」


「指3本」


「ねえ先生、ここはどこ?何でここに居るの?」


「病院だよ。」


「わからない。今日何してたの?」


「無理に思い出さなくてもいいんだよ。」


「この感覚はある?」


「膝を叩かれてます。」


「そうだね。」


「ねえ、先生。ここはどこ?昨日は何してたっけ。」


「今はゆっくり休もうか。横になっててね。」


 医師はにこりと笑って、部屋を出て行った。

 その後を看護師たちが出て行く。部屋には2名の看護師が残った。


「穂積君、寒い?暑い?」


「普通だよ。」


「じゃあ毛布はかけなくていいかな?ここに置いておくね。」


「ねえ、ここはどこ?おれは何してたの?」

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