表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第2章 平日
15/232

15. 帰宅後

 帰宅してから時計を見ると、AM2時半を回っていた。

 疲れているが、高揚感(こうようかん)は抑えきれない。

 今日はとんでもない収穫が数えきれない程あった。女子会メンバーに自慢するのが楽しみだ。


 女子会メンバーとは、LINEで個々の連絡先と、グループLINEを持っている。

 ああ、今すぐ報告したい!百合華は自分の欲望と戦ったが、冷静に考えれば皆すでに眠りに就いているだろう。


 特に夢子には、報告する!と言ったっきりだったのですぐにでも連絡したかったが、この時間はさすがに非常識過ぎる。


 明日、この至福感溢れる怠惰(たいだ)が癒されてから、ゆっくりしっかり、自慢話をしよう。


 百合華はさっとシャワーを浴びて、ベッドに潜り込んだ。


 しかし、眠ろうとしても眠れない。時間だけが過ぎていく。


 醜態(しゅうたい)がバレなかったスマホ…おっと、待ち受け画面を変えなければ。明日でいっか。

 英語を流暢に喋る穂積怜の声。

 穂積怜とMr.Brownellの信頼関係とお別れの瞬間。

 穂積怜の車…助手席…車の匂い……そういえば少し煙草のにおいがした気がした。

 彼は喫煙者なのだろうか。

 ……それとも、彼に彼女が居て、彼女が喫煙者とか?胸がドキリと波打つ。


 いかにせよ、社長の愛人説は排除されたと考えていいだろう。車のお下がりをもらう位だし、社長は穂積怜のことを下の名前で読んでいたから、【ただならぬ関係】なのは間違いなさそうだが…。


 綺麗だったな…穂積怜の運転する横顔。

 高い鼻に、不思議な色の瞳。長い睫毛、透き通るようなつるつるの肌。暴風でボサボサになった黒いウェービーな髪も、かわいかった。


 考え始めるとキリが無い。

 でもふと思ったことがある。


「私、穂積怜のファンじゃない。恋してしまっているのかも…。」



 もしそうなら、週明けから同僚として働くのは如何(いかが)したものか。

 百合華、28才。結婚を意識しても良い年だ。キャリアと結婚、どう両立するか。女子会メンバーでもよく上がる話題だ。


 でも実際に彼氏がいるのは1番大人しい野間宏美だけだ。宏美は寿退社が近いと、メンバー内でもひやかされている。

 その他女子は空想の世界でジレンマを抱えているだけなのだ。


 穂積怜の助手席に乗っただけで結婚を意識する自分に百合華は恥じらいを覚えた。


 でも今日、確実に彼との距離は縮まった。例えそれがほんの少しでも。


 週明けのことを考えると緊張と同時に楽しみではあるけど、もう見つめるだけの目の保養ではない。同僚になるのだ。

 女子会メンバーで、穂積怜とコミュニケーションを取りやすいのは、今の所間違いなく私だ。


 明日、待ち受けの壁紙を変えよう、そしていつものメンバーで久々にランチなんて誘ってみようかな…その場で今日の話を……考えているうちに百合華は眠りの世界に落ちていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ