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瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第11章 過去・2
149/232

179. 21年前・7

 海は汚れていて視界が悪かった。気づかなかったが海へ入る前に弥生は窓を開けていた。海水がその隙間からなだれ込んで来る。もちろんこの流れを阻めるものは何も無い。水中なので身体が重い。思うように動けない。


 それでも怜は、蓮とももを抱きしめ続けた。絶対に離すもんか。


 車内の海水は水位をどんどん上げ、鼻と口を塞ごうとしている。蓮とももを横向きに車のルーフ近くに寝かせ、何とか酸素を吸えるようにする。しかし侵入してくる海水のスピードには何をしても無意味なことを悟った。


 弥生の後ろ姿が見えた。海の流れに乗って揺らめいている。もう意識は無いのだろう。

 怜は蓮とももを抱きしめ直した。水中でのその作業は大変だった。しかし怜は今誰よりも大事な2つの命を必死に抱き寄せた。2人の口から大量の空気が吐き出される。2人とも苦しそうにもがきながら目を大きく開け、口を必死に動かしていた。


 (生き延びろ。生き延びるんだ。生き延びてきたじゃないか。)


 弟と妹を抱きしめた状態のまま、怜の口からも大量の空気が漏れた。

 怜の意識はそこで切れた。

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