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瞳洸(どうこう)  作者: 内山潤
第10章 職員
136/232

136. 植杉・3

「おっと、もうこんな時間だ。今日はこれ位にしておこうか。明日は、入所してからのきょうだいの話をするよ。」


 22時過ぎであった。


「明日は何時くらいから…どれ位お話を聞けますか?」


「明日は僕、休み取るから。1日中お話はできますよ。施設のご案内もしようと思ってる。それでいいかな?」


「ご迷惑じゃありませんか?」


「怜のためでもあるんだ。喜んで協力するよ。」


「すみません…。いや、ありがとうございます。感謝します。」


「謝られるより喜ばれる方がそりゃ嬉しいな。」


 ははははっと植杉は笑い、2人で事務所を出た。


「明日は8時くらいに来てくれるかい?ここのドタバタがある程度去った後で、ここの朝食を食べてもらいたいんだ。美味しいよ。」


「私、食に目がないんです。楽しみにしておきます!では8時くらいに。失礼いたします。」


 百合華は礼を言い、車に乗ってスマホでインターネットカフェを検索した。怜たちが生まれ育った五谷市より若干都会の綾谷市では、結構近くにネットカフェがあることがわかった。


 植杉が施設に戻ったのを確認して、百合華はネットカフェへと移動した。


 基本、スマホがあるので、インターネットで検索が必要な時はいつでもできるが、パソコンの方が扱いやすい。百合華は、にじのゆめを再度検索してみた。


 ホームページはかわいいイラストが沢山で、施設紹介や行事の案内などが載っている。

【1日のじかんわり】という項目をクリックしてみた。


 6時半起床、学校へ行く子は学校へ、幼稚園の子は幼稚園へ。

 年齢によって就寝時間は違うが、一般的な家庭と同じような生活リズムが整っているのがわかる。


 日々の疲れが蓄積していたのだろう、百合華は段々眠くなってきた。夕飯を食べ損じたが、お祭りでいくつか食べ物をつまんで来たので空腹感は無かった。

 明日に備えて早く寝よう。

 リクライニングチェアをなるべくフラットにして、百合華は目を閉じた。


 翌日。

 百合華は7時半頃目が覚めた。そして焦った。約束は8時だ。アラームをかけていたのに、気づかなかった…。

 急いで会計を済ませ、にじのゆめへ移動した。


 なんとか8時前に到着することができた。入り口にあるインターフォンを押す。


「理事長さんとお約束している倉木と言います。」


「どうぞお入りください。入ったらまっすぐ進んで右手。食堂があるから、来てくださいね。」


 おばさんの声で応対があった。

 朝の施設の様子は夜とは全然違った。ちょうど、園児たちが登園する準備をしているらしい。小さくてかわいい子ども達がワイワイはしゃいでいる。職員さんは忙しそうだ。


 年齢や性別ごとに生活スペースは違う、と昨日植杉が言っていた。パッと見る限り、それぞれのスペースは大きく余裕がありそうだ。インターフォンで言われた食堂へ着くのに、思った以上に歩かなければならなかった。


 食堂に入るとその広さに驚いた。昨日見た事務室と同様、木の温かみに溢れた丸い空間だ。天井も高い。まるでレストランのようだ。

 その広い空間の中に、植杉は座っていた。


「おーい。こっちこっち。ちゃんと眠れたかい?」


「ギリギリになってしまいすみません。はい、眠れました。」


「いやいや、ギリギリじゃないよ。さ、さ、座って座って。」


「おしゃれで美味しくて好評のレストラン、って感じですね。」


「美味しいかどうかはまだわからないじゃないの。これからこれから。」


「そうですね、あ。何か来たようです。」


 厨房のスタッフが

「はい、どうぞ。スープは熱いから気をつけてくださいね。」

 と言って、プレートに乗った朝食を運んでくれた。


 パンにスープにポテトサラダ、それにたこさんウィンナーが3つとバナナと牛乳。シンプルなメニューだが、聞くとパンもスープなどの具材も施設で作っているらしい。


「うちの園では食育も大事にしててね。添加物や農薬とかにも気をつけて食材を選んだりしているんだ。結局自分たちで作った具材が1番安心なんだよね。」


 ひっひっひ、と植杉は笑い、


「それじゃ、いただきましょうか。」


「はい、いただきます。」


 2人で朝食を食べた。

 愛情がこもっている。シンプルだけど、1つ1つの具材の味が際立っている。ここの子ども達は、沢山の愛情がこもった食事を食べて成長しているんだ。

 百合華はあっという間に完食した。


「美味しかったです。ごちそうさまでした。」


「うん、いい味が出ていたね。それじゃあ、昨日の面談室に移動しようか。」


 2人は歩いて面談室へ向かった。

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