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パパは破壊神(デストロイヤー)  作者: 空風林
第一章 北方争乱篇(中)
21/21

◇え?volutionその5◇

今回は、嵐の前の静けさ的な話です。

よろしくお願いします。

ー スクルド居城・会議室 ー


「もう一刻の猶予もねぇ。俺は行くぜ。」


けたたましく鳴り響く警報の中、ロイは静かに宣言した。


「行くって、一体何処へ?」

「スルトんトコに決まってんだろ!まさか邪魔しねぇよな?」


現在、時刻は23時半。


ヴィージの森までは150km。

今から全速で向っても、到着するのは、

恐らく、7時過ぎになる計算だ。


足場が湿地帯続きなのが痛え!

ロイは歯噛はがみした。


その様子を見ていたグズが、意を決し、切り出す。


「私も連れて行って下さい。」

「死ぬぜ。それも無駄死にだ。」

「覚悟の上です。」

「勝手にしな。おいシヴァ!てめえも来い。」

「行くのはいいが、俺の足じゃ、ついてけないぞぉ。」

「乗れ。俺が背負しょってく!」


シヴァを背負うと会議室を飛び出すロイ。


衛兵が一斉に取り囲んだが、

シヴァを背負ったまま頭上を飛び越えて行く。


「道を開けなさい!」

「グズ様!」

「私は、あの者達と行く所があります!

 貴方達は、城の警護を!」


グズの言葉に、道が開く。


「その剣をこちらに!」


ロイの剣を衛兵から奪う様に取り上げると、

ロイに向かって投げるグズ。


振り返りもせず、片手で受け取ると、

亜空間保管庫トランクに素早くしまうロイ。


速度を落とさず、謁見の間を駆け抜けて、

そのまま外に向かう一同。


ロイの背に揺られながら、

珍しくシヴァは悩んでいた。


さて、どうすっかぁ。


ロイの言っていた事は、本当なのだろう。


それはいい。


問題は、何故、セラフィーナが、

ロタを依り代にしようと考えたかだ。


その理由が分からない。


セラフィーナに聞けば、多少の説明は期待出来るが、

恐らく、真意を明かす事はないだろう。


もし、その気があったのであれば、

事前に話せる機会は、何度かあったハズだ。


となれば、シヴァの目的は、

スルトでも、セラフィーナでもない。


まずは、象太郎しょうたろうと合流しないとなぁ。



城を出ると、一羽の渡鴉レイヴンが飛来し、

一同いちどうの頭上で、旋回を始めた。


すかさず、ロイが左腕をかざす。

渡鴉レイヴンは、すばやく降下し、その腕にとまると、

ロイの顔をジッと見つめた。


恐らく、思念でロイに報告を始めたのだろう。


ひとしきり、見つめ合うと、

渡鴉レイヴンは、再び、空へと舞い上がって行った。


「おい。オマエら。一つ協定を結ばないか?」

「内容によります。」

「お互い、都合が悪い事は言わなくて良い。

 が、嘘はつかねぇ。どうだ?」

「いいでしょう。」

「俺もいいぞぉ。」

「良し、じゃあ、情報をやる。」


言うと、ロイは、スクルドがヴィージに陣を張っている事、

そこに、カトリーナとクラースが合流している事。


そして、竜種が暴れ出しており、

間もなく暴走しそうだという情報を伝えた。


グズは、スクルドの身をしきりに案じたが、

ロイは、冷静に状況を読んでいた。


「スクルドは、竜種の暴走ぐらいでヤラれるタマじゃねぇ。

 が、消耗はするだろう。

 もうスルトの復活を阻止するのは諦めた方がいい。」

「そんな!」


悲痛な声を上げるグズ。


「じゃあ、倒すのかぁ?」

「無理だな。だが、全員で協力すれば、

 多少は弱らせる事は出来るかも知れん。」

「弱らせてどうするつもりだぁ?」

「俺に考えがある。そこは任せてもらおう。」

「・・分かりました。」


弱々しくグズが答える。


「良し。シヴァ。アンタはどうだ?」

「俺は戦力外だぁ。着いたら、象太郎しょうたろうを探すぞぉ。」

「フン。まぁいい。邪魔はすんなよな。」

「それは、象太郎しょうたろう次第だぁ。」

「チッ!しまいにゃ捨ててくぞ!」

「そうカタい事言うなよぉ。」


ロイの頭をポンポンするシヴァ。


「止めやがれ!ったく!」


シヴァめ。忌々しい事、この上ない!


しかし、セラフィーナのヤツは、

妙にコイツらに肩入れしてやがる。


それが、何故かが分かるまでは、

面と向かって敵対するのは下策だ。


なにより、コイツは油断がならねぇ。


目の届かない所に置いといたら、

どんな裏技使ってくるか分かったもんじゃない。


多少面倒でも、手元に置いて、監視した方がまだマシだ。


それに、、、セラフィーナをおびき出すのに利用出来る。


コイツは、向こうに着いたら、

別行動を取るみたいな事を言っていたが、

それは、現実問題不可能な話だ。


なにせ、竜種が暴れ回ってるトコに行こうってんだ。

およそ戦闘力のないコイツには、自由に動き回る事は出来ねぇ。


それは、あの小僧も同じだ。


つまり、コイツを抱えてりゃ、

セラフィーナの方から迎えに来る。


この間は、不意討ちを喰らって、何も出来なかった。

だから、対策を練らせてもらったぜ。


今回は、コッチにも、ちょっとした用意があるんだ。

面と向かって、相対出来れば、充分に勝算が立つ。


そして、セラフィーナさえ抑えちまえば、

後はどうとでもなるってもんだ。


とは言え、問題は時間だ。


幸い、まだ遭遇戦とかは無いが、

この先、どうかは分からない。


間に合わなければ、全てが無駄だ。


そう考えているそばから、

人影が前からやって来るのが見えた。


こんな時間に、こんな場所を一人でうろついてる時点で、

まともなヤツとは思えない。


チッ!また厄介事かよ!


ロイは、亜空間保管庫トランクから剣を取り出し、抜刀した。


「待って下さい!アレは私の部下です!」


グズが慌ててロイを止める。


一同いちどうの目の前に現れたのは、

ヴィージの森に、調査に行かせたハズのアリーサだった。


「アリーサ!良い所に!」

「あっ。グズ。」

「スグにゴーレムを作って!

 湿地を高速で移動出来るタイプのモノを4体!」

「分かった。」


言うと、小さな宝珠オーブを4つ取り出し、

てのひらの上に乗せるアリーサ。


宝珠オーブを見つめ、意識を集中する。


するとてのひらに魔法陣が浮かび上がり、宝珠オーブが光り出す。

どうやら、術式を組み込んでいる様子だ。


「出来た。」


言うと、湿地に宝珠オーブをバラまくアリーサ。

泥が盛り上がり、4mほどのゴーレムが4体出来上がる。


「皆さん!乗って下さい!」


言うと、自らゴーレムの肩に乗るグズ。


「アリーサ!貴方も早く!」

「えっ?私も?」

「そうよ!急いで!」

「分かった。」


全員が乗り終わると、グズがアリーサに命じる。


「大至急、ヴィージの森へ向かって!」

「また?」

「いいから!お願い!」

「分かった。行くよゴーレム。」


アリーサの言葉に一斉に動き出すゴーレム。

相当なスピードだ。


「こりゃあいい!この調子なら、5時間もありゃ着くぜ!」


これで何とか、間に合いそうだ。色々とな。

待ってやがれ。セラフィーナ。目にもの見せてやる。



ー ヴィージの森・北の湖畔 ー


時刻は、3時を少し回っていた。


戦いの興奮も納まったカトリーナが、

就寝準備をしていると、テントにスクルドがやって来た。


「まだ起きているか?」

「スクルド様!」

「ちょっと邪魔するぞ。」

「今。お茶をお淹れ致します。」


すぐにクラースが立ち上がる。


「茶は一つで良い。お前には、コレを持って来た。」


言うと、琥珀色の液体の入った瓶と二つのコップを

亜空間保管庫トランクから取り出すスクルド。


「ほう。アーケヴィットですか。良いですな。」

「イケるんだろ?少し付き合え。」


言うと、コップに注ぐ。


カトリーナは興味津々の視線を向けたが、

完全にスルーされてしまった。


クラースがお茶を持ってくると、

取り敢えず乾杯をする3人。


「今日は助かった。礼を言う。」

「大した働きも出来ず、恐縮です。」

「謙遜はいい。おかげで、最小限の消耗で済んだ。」


クラースに礼をいうスクルド。

その様子を見ながら、

そわそわしているカトリーナ。


「お前も良くやってくれた。感謝してるぞ。」

「はい!ありがとうございます!」

「して、如何なされました?」

「うむ。一つ、特命を持って来た。」

「伺います。」

「今すぐ、北界ここから逃げろ。」


スクルドの言葉に顔を見合わせる二人。


「この状況で逃げろとは、随分と弱気ですな。」


クラースが珍しく挑発的な言葉を口にする。


元、軍人であったクラースは、

スクルドが敗戦を覚悟した事を見て取ったのだ。


その上で、挑発を行ったのには意味があった。


クラースは、スクルドを上官として、気に入っていたのだ。


「転進とでも言えと言うのか?生憎、言葉を飾るのは好かん。」

「しかし、、」

竜種トカゲどものおかげで戦況が変わった。

 ここは、もはや死地だ。我が軍の兵士でもない者が留まる必要はない。」

「我々ではお役に立てぬと?」

「お前らは想定以上に良くやってくれた。

 私の見通しが甘かっただけの話だ。」


そういうと、コップの酒を一気に飲み干すスクルド。

クラースが、新たに琥珀の液体を注ぐ。


「コイツを飲んだら、お前らとはお別れだ。」

「本当に良いのですか?」

「クドいぞ。お前はセラフィーナの配下だろう?」

「おっしゃる通りです。」

「主人から何を申し使ってる?」

「カトリーナ様をお守りしろと。」

「なら、迷う事はないだろう。」

「はっ。」


クラースが説得されたのを見て、

今度はカトリーナが食い下がる。


「わ、私も軍人の端くれです!今、ここを離れる訳にはいきません1」

「軍人なら、上官の命令は絶対だ。反論は赦さん。」


一言で切り伏せられるカトリーナ。

そもそもクラースのかなわぬ相手に太刀打ち出来る訳も無い。


「それにだ。約束したハズだぞ。何があっても生き残ると。」


スクルドの声は優しかった。

しかし、断固とした意思をそこに感じた。

カトリーナは頷くしかなかった。


「わかりました。」


その言葉を聞くと、満足そうにアーケヴィットを飲み干すスクルド。


「では、お別れだ。」

「スクルド様。」

「生きろよ。お前はまだ死ぬには若い。」

「わかりました。」


カトリーナは、深々と頭を下げた。


「丁度、迎えが来たようだな。」

「えっ?」

「カトリーナはここだぞ!」


大きな声を上げるスクルド。

すると、男が駆け込んで来た。


「カトリーナ!」

象太郎しょうたろうさん!」




ー 南西の湿原 ー


時間は、3時間ほどさかのぼり、0時を少し回った辺り。


象太郎しょうたろう達は、黙々と空を飛んでいた。


地下隔絶結界牢ロタのおへやを脱出してから、

既に30分が経とうとしていた。


らしくないセラフィーナの素振そぶりのせいで、

なんか空気が重く、俺達は、ロクに会話もしていないままであった。


しかし、俺には、どうしても気になっている事があった。


ロタにもカトリーナ同様に、

ラグナレクに関わるなんらかの秘密があるらしいという事だ。


切り出せずにソワソワしている俺に気がついたセラフィーナが、

声をかけてくれた。


「我の話が、気になっておるのか?」

「そりゃあ、まぁ。」

「道々話すという事になっておったな。」


もしかして、セラフィーナもタイミングを計ってたのか?


「先に言っておくが、主は、確実に平静では居られぬ話になる。」

「そ、そんなに?」

「うむ。何せ、ギャンブルをしようという話だからな。」

「ギャンブル?」

「負ければ全世界崩壊。勝てば北界半壊。どちらに転んでも大勢死ぬ。」

「ちょっと待てセラフィーナ。そういう冗談は真顔で言うなよ。」

「冗談なら良かったのだがな。」


寂しげに微笑わらうセラフィーナ。


俺は言葉を失った。

代わりにロタが口を開いた。


「おい。何が起こっている?」

「起こるのはこれからだ。」

「勿体ぶんじゃねぇよ。」


ロタの語気に怒りが籠る。

ため息で応えるセラフィーナ。


「スルトを復活させる。」

「なんだと!!どういう事だ!!」

「そのままの意味よ。」

「詳しく聞かせろ!」

「良いであろう。心して聞け。」


セラフィーナは、俺にも分かり易い様に、

丁寧に説明してくれた。


北界では、恐怖の代名詞として語り継がれる

炎の巨人スルトを封印していた結界が、間もなく壊れる。


スルトが解き放たれるという事は、

そのまま、北界全域の崩壊に直結するそうだ。


そのスルトを復活・・させる・・・とは一体?


「もっかい封印する事は出来ないのか?」

「ダメだ。スルトを封印した事により、あの地は、活火山となった。

 本来なら、100年周期ぐらいで噴火するレベルのな。

 そのエネルギーを数千年に渡り、封印で押え込んだのだぞ。

 これが意味する事が分かるか?」


いつもとは違い、真面目な口調のセラフィーナ。

それだけ状況がマズいのだろう。

しかし、難しい話は苦手だ。


「えっと、、噴火したら、大惨事?」

人間界そっちの基準で言えば、VEI8レベルだ。」

「VEIが分からん。」

「概算で言えば、直径60kmくらいの大穴カルデラが出来る計算だな。」


なんだソレ。核ミサイル何百発分だよ。


「この規模の噴火が起きると、その後の気象が激変する。

 最低でも8割以上の生物が絶滅する事になるであろう。

 これは歴史が証明している。」

「お、おい。マジかよ。」


嘘でないのは分かっている。

けど、素直に、はいそうですかと言える話ではない。


「断っておくが、これが、一番楽観的な話だ。

 かなり高い確率で、北界そのものに亀裂が入り、分解、破裂する。

 その影響で、八面体世界全体がバランスを失い、相互に衝突し、

 やがて、全ての世界が崩壊する。」


淡々と語るセラフィーナ。


想像を遥かに上回る規模の話に俺達は、

何のコメントも出来ずにいた。


「スルトを再封印した場合、半年以内に噴火は起こる。

 これは確定された未来である。

 つまり、再封印をするという事は、

 そのまま、現存する全知的生命体の絶滅を意味する。」


それが分かっていないスクルドは、

今頃、スルトを封印しようと必死になっている事だろう。


面倒な話だ。


セラフィーナは、また一つため息をついた。


「スルトは復活・・させなければならない・・・・・・・・・・。これは、大前提だ。」


セラフィーナの言葉に、

ロタは小刻みに震える身体を制御出来ずにいた。


言っている事は当然理解出来ている。


しかし、北界に生まれた者にとって、

スルトへの恐怖は克服しがたいモノであったのだ。


「それじゃあ、倒すしかないのか?」

「それもダメだな。」

「なんでだよ!」

「倒した際、内包したエネルギーが暴走して、

 噴火したのと同じ結果となる。」

「じゃあ、どうすればいいんだよ!」

「落ち着け。それをこれから話そうと言っているのだ。」

「・・悪かった。大人しく聞くよ。」

「そうしてくれると我も助かる。」


セラフィーナは一度、目を閉じ、

大きく深呼吸をした。


そして、目を開くと、迷い無く言った。


「ロタ。貴様にはスルトの依り代となってもらおう。」

「おい!ちょっと待て!」

「大人しく聞くのではなかったのか?」

「聞けるかそんな話!!」


俺は、恐らく初めて、セラフィーナに激怒した。


「よいぞ。殴って気が済むのなら、好きなだけ殴れ。

 そして、気が済んだら、我の話を聴くのだ。」


セラフィーナはさとす様に、穏やかな口調で告げた。


その表情かお見た俺は、何も言い返せなくなってしまい、ロタを見た。

ロタは、不安そうな表情であったが、小さく頷いた。


「ごめん。セラフィーナ。ちゃんと聞くよ。」

「すまんな。」


そう言うと、セラフィーナは説明を始めた。


『スルトの封印は、後4時間ほど、午前、4時38分に完全崩壊する。』


それが、戦闘開始時刻か。


ってか、随分正確な予測だな。

というか、もはや予告だな。


『封じる事も、倒す事も叶わぬ相手であれば、制御するしかない。』


これが、あらゆる可能性を精査した上で、

セラフィーナが出した結論だった。


スルトの依り代と

純度の高い火属性の魔術核を持つ者は、

北界に於いては、極めて珍しい。


というのも、火属性を操るムスペルの一族は、

スルト封印の際、滅亡しているからだ。


現在、火属性を強く宿す者は、いわゆる先祖返りのみ。

しかも、差別を恐れ、皆、ひた隠しにしているのが現状らしい。


そんな背景もあり、確認されているのはわずか2名。


それが、火神ロキと、ロタであると言うのだ。


「ロキだって!!」


俺は、その名前に強く反応した。


「なるほど、気づいていたか。なら話は早いな。

 ヤツにはスルトの制御は無理だ。」

「それはなんでだ?」


俺には、ロキ、というか、ロイは、相当万能に見えた。

ヤツなら、器用にやれそうな気がするんだけど、、。


「ロキは、復讐心が強過ぎる。野心もな。

 その手の輩では、スルトに飲まれるのが落ちだ。」


なるほど。そう言われると、分かる気がする。

しかし、ロタも闘争本能は強そうに見える。


「上辺はな。此奴は、本質的には優しい心根だ。」

「確かに!」

「ここまで共に旅をして来た仲間だ。護りたいであろう?」

「当然だ!」

「簡単な話ではない。場合に因っては、命を懸ける事になるが、良いか?」

「ロタだって命懸けになるんだろ?

 なら、俺もそれでいい。初めて出来た大切な仲間なんだ。」

「その気持ちを大事にせい。そこが生命線となる。」

「分かった。」


セラフィーナは、俺の言葉を満足そうに聞くと、一度遠くを見つめた。

そして、視線を戻し、語り始めた。


「今から我の計画を話す。やるか、やらないかは主ら次第だ。」

「えっ?だって、やらなきゃ世界は滅ぶんだろ!

 やらない訳にはいかないじゃんか!」


とは言え、そんな危険な役割をロタにやらすのは、

正直、かなりの抵抗があるのは確かだった。


「出来るから、やらなければならないという訳ではない。

 人を殺せるわざを身につけている者が、

 人を殺さなければならない訳ではないであろう。」

「それは、、」

「世界の命運は、主らにかかっている。それは、紛れもない事実だ。

 だが、それを背負うかどうかは、主らの気持ち次第だ。

 断っても、恨まん。少なくとも我はな。」


セラフィーナの言葉に、俺はロタを見た。


先ほどまで、不安そうに下を向いて震えていたハズのロタは、

顔を上げ、決意の表情をしていた。


俺は、ロタの顔から視線を外せなかった。


「情けねぇ顔してんなよ。」

「し、してねぇよ!」

「やんよな?」

「あぁ。やる。」

「よし!」


ロタが、穏やかな表情で微笑わらった。

そして、再び、決意の表情に戻り、セラフィーナに向き直った。


「おい。セラフィーナ。私はやるぞ。」

「気持ちは固まったと言う事で良いのだな?」

「あぁ。計画を聞かせろ。」

象太郎しょうたろう。主もそれでいいな?」

「あぁ!」


やってやる。


世界を救うとか考えても、正直、全くピンと来ない。


けど、初めて出来た仲間達との未来を護る為。

そう思えば、俺に迷う理由はない。


俺は、俺なりの理由で決意が固まった。


「では、我が計画を伝える。」


セラフィーナは説明を始めた。


まず、スルトの封印が破れる前に現地に到着する。


しかる後、象太郎しょうたろうはカトリーナ達をピックアップ。


その間に、ロタには、受肉した際に飲み込まれぬ様、精神耐性を徹底的に強化。

更に、スルトの膨大なエネルギーを亜空間に逃し、暴走を防ぐ為の回路を複数設置。

万全を期す為に、様々な術式の書き込みをセラフィーナが行う。


これが第一段階。


次に、集まった全員の精神を共有する術式を構築。

ロタが、スルトの精神に飲まれてしまう事への防波堤を築く。


これが第二段階。


最後に、スルトが復活したら、

攻撃をしかけず、速やかにロタに受肉させる。


攻撃をすると、スルトの闘争本能が刺激されてしまい、

ロタの負担が大きくなってしまうからだ。


受肉と同時に、象太郎しょうたろうは、

聖の極大魔法を、ロタに放つ。


これにより、スルトの凶悪な魔属性や闇属性を排除。


純粋な火属性にする事で、

ロタがエネルギーをコントロールし易くする。


後は、ロタ次第。


というのが段取りだ。最後にセラフィーナはこう締め括った。


『これは、全知的生命体の未来・・をかけたギャンブルである。

 チップは我らの命という事になる。中々良い配当オッズと言えよう。」


配当オッズが良いと言う事は、

それだけ可能性が低いって話だ。


でも、やらなきゃ、そこで終わり確定。


どっかのバスケの監督が言っていたな。


そう。ここで諦める訳にはいかない。


俺とロタは、計画を頭の中で反芻はんすうしていた。

一つとして、失敗は許されない。


「懸念事項が一つある。」

「それは?」

「スクルドだ。ヤツは、スルトを封印しようとしている。」

「マズいじゃんか!ちゃんと説明しないと!」

「我では無理だ。我はヤツに恨まれておる。」

「えっ!また何やらかしたんだ?」

「何もやっとらんわ!またとは何だ、またとは!」

「いやだって、何かやったんだろ?」

「我が、ロタはスルトの依り代に成り得ると会議の場で発言したのが、

 痛く気に入らなかったらしい。」


なるほどな。

腹心のロタが、危険にさらされる情報を公開されたから怒ってるのか。


まぁ。そりゃ当然だな。


「事が起こる前に、説得は必須なのだが、我は交渉事はそれほど得意とせぬ。

 それに、我は、入念には入念を重ね、術式を組まねばならずだなぁ、、」

「分かったよ!スクルドは俺が説得する。」

「そうか!では、頼むぞ。」

「任せろ!」


俺は、力を込めて言った。


俺にも出来る事がある。

それは嬉しい事だった。


何せ、やらされているのではなく、

自分の意思でやりたい事をやれるのだ。


先ほどまで、中天にあった赤い月は、

少し、傾き始めていた。

年度変わりで、公私ともにちょっとバタバタになってしまいました。

長期に渡り、書く事が出来ず、読んでくれている方々には申し訳ありません。

4月の中旬から、また以前のペースで更新します。

よろしくお願い致します。

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