◇え?volutionその4◇
投稿します。
よろしくお願いします。
ー スクルド居城・謁見の間・隣室 ー
会議室を後にした俺は、謁見の間に隣接した一室に案内された。
部屋の真ん中には、直径1mほどの魔法陣が描かれていた。
件の地下隔絶結界牢は、シェルターの側面を持っており、
基本、この魔法陣での転送以外では行けないそうだ。
転送準備が終わるのを待っている間、
俺が、隔絶結界牢へ行くと聞きつけた数人のヴァルキュリアが、
ロタへの差し入れを持ってきた。
ヴァルキュリア達は、口々に、
ロタによろしく的な伝言を俺に預けてきた。
グズの配下からも結構、慕われている様だ。
ロタ、人望あるなぁ。
そうこうしている内に、転送の準備が整った。
当初の計画とは、かけ離れた方法ではあったが、
やっとロタと再会出来る訳だ。
俺は、両手に差し入れを抱え、
魔法陣の中央に立った。
「準備はよろしいですか?」
「いつでもオッケーです!お願いします!」
「では。いきます。」
その言葉と同時に周囲の景色が揺らいで、
ぐちゃぐちゃになった。
ー スクルド居城・地下隔絶結界牢 ー
揺らぎが収まると、目の前の景色が変わっていた。
地下隔絶結界牢なんて言うから、
うちっぱなしの薄暗い部屋をイメージしてたのだが、
なんか、ちょっとハイソな民家みたいな作りなのには驚いた。
シェルターの側面を持つとは聞いていたが、
逆に、本来がシェルターなのだろうと悟った。
だが、そんな事はどうでもいいか。
なにせ、やっと会えたんだ。
椅子に座り、剣の手入れをしている背中。
間違いなく、ロタだった。
「バカが。やっぱり来やがったか。」
振り返らず、ロタが言った。
「ロタ。久しぶり。」
「お、おう。取り敢えず、茶でも淹れてやる。適当に座っとけ。」
背越しに言うと、そそくさとキッチンらしき部屋に消えていく。
俺は、テーブルに差し入れを置き、
椅子に腰を下ろした。
まだ、何一つ解決した訳ではないが、
心は大分落ち着いたのが分かる。
取り敢えず、今は、それだけで充分だった。
茶を待つ間に気づいたのだが、
久しぶりと言ったものの、
実は、ロタとは4日会ってないだけだっだ。
でも、何だか、ずっと会えてなかったかの様に俺は感じていた。
そもそも俺の人生に於いて、他人とここまで深く関わった事などない。
だから、少し会えないだけで、結構な喪失感があるんだと気がついた。
カトリーナやクラースさんとも、何日か会えなくなるけど、
やっぱ、こんなに喪失感を感じるものなのだろうか?
クラースさんに会えないのは、少し寂しいなぁ、、。
カトリーナは、、まぁ、別に毎日会わなくてもいいや。
俺は自問自答した。
ほどなく、ロタがお茶を持って現れた。
「ほら。茶だ。」
「ありがとう。」
「象太郎も捕まったのか?」
「いや、グズさんが会わせてくれたんだ。」
「フン。グズのヤツもヤキが回ったな。」
ロクに目も合わしてくれない。
えっ?なんか怒ってる?
「もしかして、迷惑だったか?」
「迷惑と言うほどではないが、一手間増えたのは確かだ。」
だよな。どのみち、スクルドが帰還するまで、
ここからは出る事は出来ないだろう。
俺が来た処で、特に何か変わる訳じゃない。
むしろ、久しぶりに取れた一人の時間を
邪魔してしまったかも知れない。
「ごめんな。」
「謝るな。馬鹿。」
「いや、でも、、」
「全く、こんなトコまでノコノコやって来るとは、
本当に馬鹿なヤツだ。」
「そんなにバカバカ言うなよぉ。」
どうやら、来たのは失敗だったか。
まぁ、ロタからしてみれば、こっちがホームなんだもんな。
また判断ミスをしちまったか、、。
さすがに少し凹んできた。
「まぁ、どうせ来るだろうとは思ってたけどな。」
言いながら、差し入れをガサガサ物色し出すロタ。
「えっ?予想してたのか?」
「あぁ。大概、象太郎は、自分の実力も弁えず、
危険な事ばかりするからな。
もし、グズが冷徹な奴だったら、今頃、あの世だぞ。分かってんのか?」
「わ、わるかったな。」
まぁ、確かに今、考えると結構、危ない橋だったのかもな。
人間界の世界で照らし合わせて考えると、
外国人親子が、いきなり軍事基地に乗り込むみたいな話だ。
文化レベルが中世以下の北界なら、
問答無用で処刑されても不思議じゃない。
でも、せっかく助けに来たのに、その言い方はなくね?
それは確かに普段、戦闘はロタ達に任せっきりだ。
タマに頑張っても、ビバもん戦は着くなりノックアウトだったし、
ヘビ夫戦では、周りが見えてなかったせいで、
クラースさんをあんな目に会わせてしまった。
足を引いてる感が満載なのは間違いない。
でも、俺だって頑張ってんだ。
全然うまくはいってないけどな。
「別に悪くはないぞ。むしろ好ましいとすら言ってもいい。
だがな、戦場では、そういう奴ほど早く死ぬ。」
真剣な目で言うロタ。目力がすごい。
美人の真顔というのは、実は結構怖いのだ。
そして、多分だけど、経験上の話なのだろう。
妙に説得力ががあって、俺は少しビビった。
「こ、こわい事言うなよ。」
「怖かったら、少しは自重しろ。心配で見てらんねぇよ。」
「はい。」
えっ?心配してくれてたの?
脅してるの間違いじゃなくて?
完全にガン飛ばしてたよね?
なんか、部活の先輩に説教されてるみたいな気分だった。
と言っても、あくまで、イメージ。
なにせ、俺はバリバリの帰宅部だったからな。
ロタは、言いたい事だけ言うと、俺にはお構いなしで、
差し入れをパクついている。
何と言うか、とても漢らしい。
この全く牢屋感のない、民家的な空間のせいで、
絵面だけ見たら、
『親の留守中に、女の子の家に遊びに来ちゃいましたぁ♪』
みたいな事になっている。
しかし、ロタは、カトリーナとは別の意味で女を感じさせないので、
変に緊張せずに済んだ。
何と言うか、サバサバ度がすごい。
見た目は本当に美人なんだけどなぁ。
俺はそんな事を考えながら、
フレンチフライ的なモノを摘んでるロタを見ていた。
「な、なんだよ。」
俺の視線に気づいたロタが、問いかけて来た。
「いや、別に。」
俺は、お茶に口をつけた。
出された茶は、ものスゴく美味しく感じた。
ずっと喉が渇いていたからなのか、葉が良いのか、、。
「気持ちわりぃだろ!言えよ!」
「お茶ありがとう。スゴく美味いよ。」
俺は、目一杯いい笑顔で言った。
「お、おう。じゃ、もう一杯いっとくか?」
言いながら、ポットから紅茶を注いでくれるロタ。
会話は相変わらず、ぎこちないのだが、
それでも居心地が悪いと感じないのは、不思議だった。
「おい、ロタ。」
「なんだ?」
「もし、邪魔だったら、剣の手入れしてていいぞ。
俺は、勝手に茶でも飲んでるから。」
「イヤ、、まぁ、アレだ。丁度退屈していたからな。
だから、、少し、話をしよう。」
ちょっと予想外の回答だったが、正直嬉しかった。
なにせ、旅をしてきた仲間の中で、
ロタが一番分かりにくい。
悪い印象は全くないし、信頼もしているのだが、
なんか、避けられてる様に感じる事が多かったのも事実だ。
そのくせ、作戦会議とかでは、いつも、俺の後押しをしてくれたり、
大切にしていた剣をくれたり、と優しさ満点だったりもする。
そして、不思議と、会話が無くても、雰囲気だけで、
妙に落ち着いてしまう時があったり、、。
かと思えば、話の途中で、そそくさとどこかへ行ってしまったり、、。
ロタは、とにかく『謎』なのだ。
「いいね!ロタとは、あんま話した事がなかったから、
前から、ちょっと話してみたかったんだ。」
「そうか?私は割と意見は積極的に言ってきたつもりだぞ。」
「いや、作戦会議とかの話じゃなくてさ、
もっと日常会話的な話の事だよ。」
「日常的な、か、、。」
ロタは、少し戸惑った。
戦場から戦場へと渡り歩く毎日を過ごして来たロタには、
むしろ作戦会議が日常的な会話で、今の、とういうか、
今回の旅が非日常そのものだったからだ。
「私の日常は、戦場だったからなぁ。」
「えっ?休みとかなかったの?」
「馬鹿にすんな!休むほど大きな怪我なんかした事ねぇよ!」
おいおい、休みイコール大けがとか、どんだけだよ。
もう、ブラック通り越して漆黒じゃん。
「そういう意味じゃなくてさぁ。
あっ!じゃあ、ロタはどんな時、楽しいって思う?」
「強敵とやりあってる時かな。」
「じゃ、じゃあ嬉しい時は?」
「強敵を打ち破った時だ!」
目を輝かせながら言うロタ。
なにそれ?どこの武人?
本名は武蔵とかじゃないよね?
いや、思いの外、重症だ。
俺の診断では、ステージ4はカタい。
大丈夫か?ちょっと心配になってきたぞ。
そして、同時に気づいた。
戦場が日常のロタからしたら、
俺のとる行動は、ときに、常軌を逸しているんだと思う。
多分、今、俺がロタに対して感じている感覚を、
ロタは戦場で、俺に対し、抱いているのだろう。
なんて不憫なお互い様なんだ、、。
俺は決断した。
「ロタ!」
「な、なんだよ、、」
「今回の件が一段落したら、俺と遊びに行こう。」
ロタには散々世話になってる。
だから、恩返しをせねば!
ロタが俺に、非日常を教えてくれたのだから、
俺が、ロタの非日常、つまり『普通』を教えてやる。
ロタの生き方を否定しようという事じゃない。
日常と非日常。両方知った上で、今の生活をロタが選ぶなら、
当然、尊重するし、友人として応援もする。
けど、戦場以外は知らないとか、
俺の感覚では、どうしても、可哀想だと感じてしまう。
だから、決して、『美人を連れて街を闊歩したい』だけじゃ、、いや訳じゃない。
「きゅ、急に何いい出すんだ!」
「イヤか?」
「嫌ではないが、その、、」
「なんだ?」
「私は、男の人とあまり話した事がなくてだなぁ、、
というか、まともに会話したのは、今回の行軍が初めてでよぉ、、
その、、どう接していいか分かんなくなっちまう時があんだよ。」
あっ!なるほど!それでか!
避けられてる訳では無かったんだ。
けど、考えたら、俺も女の人と二人で街に遊びに行った事などないのだが、
大丈夫なのだろうか?
一瞬、思ったが、まぁ、少なくとも、
ロタよりは世慣れているだろうし、問題ないか。
「大丈夫。俺がちゃんと案内するよ。」
「案内?人間界の街に連れてってくれんのか?」
「そうだ。」
「それは、少し、興味あんな。」
「良し!決まりだ!」
俺は小指を立てて、ロタの間に出した。
「なんの合図だ?それは?」
「いいから、ロタも小指をだして!」
「こうか?」
ロタの小指に、俺の小指を絡ませる。
ロタは、一瞬、驚いた様だったが、
特に文句は言わなかった。
「指切りって言うんだ。人間界では、約束をする時にこうする。」
「指切りかぁ、、なんか物騒な呼称だな。」
「物騒だぞ。何せ、指切りした約束を破ると、針を千本飲む事になる。」
「おい!そんな事したら、相当なダメージを負う事になるぞ!」
「そうだ。だから、必ず遊びに行くぞ。」
「分かった。必ず行こう。」
真面目な顔で頷くロタ。ホント融通が利かないタイプだ。
しかし、普段が普段なだけに、可愛いと感じてしまった。
つい、面白くて、ロタの顔を見てしまう俺。
ロタは、俺の視線が恥ずかしかったらしく、指切りをほどき、
いつも通り、横を向いてしまった。
「そ、それはそうと、外の状況はどうなんだよ?」
「そうだな。今日までの事を話すよ。」
俺は、頭を切り替えて、
俺達の行動を出来るだけ細かく話す事にした。
さすがにロタも切り替えが早く、
業務的の口調になってくれたのは幸いだった。
「ロイ?知らんな。」
「マジで?従兄弟だって言ってたぞ。」
「私は、戦災孤児だ。従兄弟はおろか、両親の顔すら覚えていない。」
「そ、そうなんだ。」
俺がコメントに困っていると、
「私の世代には、そんなに珍しい話ではない。
変に気を使うな。私自身、特に気にしていない。」
気にしていないというよりかは『諦めている』と感じた。
ロタ本人は自覚がないみたいだけど、寂しそうに見えたから。
だからと言って、俺には上手い言葉をかけてやれる訳もなく、、。
まぁ、今、出来ない事をアレコレ悩んでも仕方ない。
今、出来きる事と言えば、状況をきちんと分析して、
この先、どうするかを考える事くらいだ。
なので、俺は気になっていた事を口にした。
「ロイはなんで、ロタを連れ去ろうとしたんだろう?」
「私には、心当たりがない。が、気になるトコではあるな。」
「だよなぁ。」
ラグナレクを起こす為に、どうしてロタが必要なんだ?
これが、カトリーナなら納得がいくんだけど、、。
そこまで、考えて、ハッとなった。
「もしかしたら、ロタにもカトリーナみたいに何かあるのかも。」
「私に?そいつは買いかぶりだ。」
「そうでもないぞ。」
「セラフィーナ!!」
部屋の中に唐突に現れたセラフィーナに、
俺とロタは同時に声を上げた。
「戯けにしては、中々に鋭いではないか。」
愉しげにニヤリと笑うセラフィーナ。
俺達は呆気にとられた。
「折角、二人きりの処を悪いな。邪魔だったか?」
ロタをチラ見しながら言うセラフィーナ。
ロタは、赤くなり、下を向いた。
「一体、いつから!」
「お主らが町を出た処からだ。」
「えっ!そんなに前から?」
「我は、ヤツの動きをマークしていたのでな。」
「ロイか!」
「他に誰がいる?良いか。ヤツは危険だ。」
珍しく真剣な表情でいうセラフィーナ。
「同感だ。アイツは何かヤバい。」
「まぁ、何にしても良くやった。我を以てしても、
この結界を外から破るとなると、それなりに手間がかかる処であった。」
「もしかして、俺の転送に便乗したのか?」
「うむ。これで、そこの小娘を連れ出せるというものよ。
主の手柄だ。誉めてやろう。」
「えっ!出れるのか?」
「中からであれば、雑作もない。」
俺とロタは思わず笑顔を交わし合った。
ロタの笑顔はとても素敵で、思わず見蕩れた。
が、また、スグに顔を背けられた。
「もう少しお主らの乳繰り合いを
見ているというのも一興だったのだが、
そうも言っておれん。何せ、時間がないからな。」
「別に乳繰り合ってねぇよ!」
「まあ良い。出るぞ。」
言うと、セラフィーナは、
部屋の隅に置いてあったオブジェクトに手を当てた。
すると、オブジェクトが輝き出し、
同時に視界が揺らめいた。
ー スクルド居城・会議室 ー
象太郎が出て行くのを見送ると、
グズは一つの提案を出した。
「出来れば、お二人には、スクルド様が帰還するまで、
こちらに逗留して頂きたいのですが。」
「俺は構わんぞぉ。」
「ありがとうございます。ロイさんは如何かしら?」
「一つ条件がある。」
「伺いましょう。」
「俺をロタの警備に加えろ。」
意外な言葉だった。
グズは驚きの表情になり、
シヴァの顔は険しくなった。
「理由をお聞かせ願えますか?」
「断る。」
「聞くまでもねぇぞぉ。」
「おい!余計な事を言うんじゃねぇ!」
声を荒立てるロイ。
お構いなしにシヴァがロイに問いかける。
「誰が来るんだぁ?」
「えっ?」
グズは再び、驚きの声を上げた。
「どういう事ですか?」
「コイツは、誰かからロタを護る為に、
連れ出そうとしてたって事だぁ。」
「チッ!」
ロイは舌打ちする事で、
シヴァの予測の正しさを肯定した。
「ロタを護る為と言うのであれば、
隔絶結界があるここが最適だと思うのですが。」
「その程度じゃ難しいとコイツは思ったんだろう。」
「そんな馬鹿な!あの結界は、
それこそ主神級の力でも無ければ、、、まさか!!」
「そのまさかだよ。」
ロイの言葉に固まるグズ。
「あぁ!もういい!本当はただで情報やるなんてのは、
死んでも嫌だったんだが、言ってやる!
いいか!ここは危険だ。ここじゃ、ヤツからロタを護れん!」
「ヤツとは?」
「セラフィーナだよ!どうせ言ってもグズにゃ分からん!
おい!シヴァ!アンタにゃわかるだろ!」
グズの疑問を一言で切って捨て、シヴァに食って掛かるロイ。
「確かにセラフィーナが相手なら、ここじゃ無理だなぁ。
けど、セラフィーナは俺達の仲間だぞぉ。」
「アンタどんだけセラフィーナの事を知ってんだ?」
「北界来て、すぐに会って、シーチキンをやった。
悪いヤツじゃないぞぉ。」
シヴァの言葉にロイの顔が歪む。
「北界来てだぁ?やっぱ分かってねぇな。
あの日、セラフィーナは、ロタ達を追って行った。
捕まえようとした俺を麻痺させてなぁ!」
そう、あの日、ロイとセラフィーナは、
スクルドと定期会議を行う為に、居城へと向かっていた。
すると、例の神眼持ちが城を飛び出して来て、
その後を追う様にロタが駆けて行くのが見えた。
ラグナレクの鍵を握る二人の尋常ならざる様子に、
ロイはすぐに捕えようとした。
しかし、ロイは追う事が出来なかった。
『無粋な事はやめい。』
言いながら、セラフィーナはパラライズタッチで、
ロイの身体の自由を奪った。
『あの二人は、我が貰う』
そう言うと、妖しい瞳でニヤリと微笑い、
ロイの目の前から一瞬にして消えたのだった。
「つまり、アンタらは、人間界に居たトコから、
セラフィーナに監視されてたってこった!」
これはシヴァにとっても意外な事であった。
その様子を見たロイが、腹立たしげに舌打ちをする。
「チッ!アンタまで出し抜かれてるとなったら、
いよいよ危ネェな。こりゃ。」
ロイの表情が更に険しさを増す。
「いいか!良く聞け!俺には、目的がある!
それが何かは、、、さすがに言えねぇ。
だが、セラフィーナの目的は分かってる!
ヤツは、ロタをスルトの依り代に使うつもりだ!」
その言葉に、それまで沈黙していたグズが、
椅子を蹴って立ち上がる。
「なんですって!!」
「やっと事態の深刻さが分かったか?
スルトの封印が壊れかけてんだよ!
もう、長くはモタねぇ。
今、スクルドはスルトの復活を阻止に行ってるハズだ。
けど、、、無駄だぜ。奴らは全滅する。」
ロイの言葉が、薄暗い会議室に重く響く。
「そんな!!」
「依り代抜きでも、スルトならA2はかてぇ。
A3のスクルド一人じゃどうにもならねぇ。」
「スクルド様はロタの小隊をお連れになっています!」
必死に食い下がるグズ。
しかし、ロイは冷めた瞳で応えた。
「A2だぞ?小隊なんか数に入るかよ。
せいぜい露払いが関の山だろうが。」
言葉を失うグズ。シヴァも沈黙を保っている。
「オマエらが行った処で同じだぞ。何の足しにもならない。
今、俺達に出来るのは、ロタをセラフィーナに渡さない事だけだ。
万が一、ロタを奪われ、スルトが受肉したら、北界は終わるぞ。」
グズは、不覚にも震えが抑えられずにいた。
ロイの話に嘘がない事は、
水晶が光らなかった事から明らかだった。
スルトが封印される以前の惨劇は、
伝説として北界では知らぬ者はいないのだ。
一体なぜ封印が?
いや、今はそれはいい。
それより対策を。
その為には、情報が、、。
「貴方の話は理解しました。
それで、そのセラフィーナという人物は、、」
その時、けたたましい警報が、
砦内に鳴り響いた。
「おい!まさかこれ、、」
「・・隔絶結界が破られました。」
絞り出す様に、告げるグズ。
「セラフィーナ!!!」
ロイは絶叫した。
ー スクルド居城郊外・丘の上 ー
俺達は、気付くと野外にいた。
「ここは?」
俺の問いに、空を見上げたセラフィーナが答える。
「城から、東南に10kmといった辺りだな。」
どうやら、星の位置から判断したらしいが、
2秒とかからなかった。
やっぱすげぇなコイツ。
「のんびりはしておれん。行くぞ。」
「行くぞって何処に?」
「スクルドの所だ。事情は、道々話してやろう。」
言うと、念動力で、
俺とロタを宙に浮かすセラフィーナ。
「うわぁ!」
そのまま、スゴいスピードで飛び始めた。
「こ、これは!」
まるで、舞◯術!!
「セラフィーナ!これ教えてくれ!これ!組めんだろ!術式!」
俺はテンションだだ上がりで言った。
「構わんぞ。事が済んで、お互い生きていたらな。」
珍しく難しい顔で言うセラフィーナ。
「おい。セラフィーナ。なんか、ヤバい事が起きてるのか?」
「これから起こる。」
「これから?」
「そう。これからだ。」
真剣なセラフィーナの表情に寒気を感じた俺達は、
顔を見合わせた。
ロタの横顔を紅い月明かりが照らしていた。
言い知れぬ不安に、俺は強く拳を握りしめた。
次の投稿は、早ければ25日、
遅くとも26日夜になる予定です。
よろしくお願いいします。





