表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パパは破壊神(デストロイヤー)  作者: 空風林
第一章 北方争乱篇(上)
14/21

◇Two nights carnival その11◇

なんとか間に合いました。

よろしくお願いします。

俺たちは、取りあえず、キャンプを張る事にした。


森の中よりは、見通しのいい湖畔の方が安全だろうという事で、

特に移動はしなかった。


『この異常事態です。

 野生の魔獣は警戒して、

 縄張りを出る可能性は低いでしょう。』


というクラースさんの見解に親父とロタが同意したからだ。


思念リンクに関しては、

現在、俺とロタのみ共有している。


眷属との連絡の関係上、クラースさんは、

デフォルトの術式に切り替えたそうだ。


親父は傷こそ塞がってはいるものの貧血状態で、顔色が悪い。

異世界では、輸血など望める訳もなく、しばらくはこの調子だろう。


カトリーナに至っては、未だ昏睡中。

魔粒子濃度が安定しているエリアに移動するまでは、

回復の目処が立たないばかりか、

長期に渡れば存在維持が危険という状況だ。


そんな訳で、

見通しの悪い森はクラースさんとその眷属が。

湖畔周辺に関しては俺とロタが、

それぞれ、警戒する事になった。


状況は、異世界こちらに来てから最悪と言えた。


象太郎しょうたろう。」


湖岸と山間部の境界線付近を偵察しに行っていたロタが戻ってきた。


「おかえり!どうだった?」

竜種トカゲどもは完全にナリを潜めてたな。

 気配すらなかった。あの様子じゃ、

 暴走とかの警戒は必要はないだろう。そっちは?」

「静かなもんさ。月が綺麗だ。」


俺の言葉に空を見上げるロタ。


「ほう。今日は満月か。」


言うと、俺の座っていた流木に腰掛ける。


「後少しだな。」

「あぁ。森を抜けたら、ざっと150kmってトコか。

 のんびり歩いても2日あれば着く。」


150kmを2日ね。人間界に居た頃なら半泣きしてた所だ。

異世界こっちでは、魔術核が機能するので、

それくらいは正直、どうという事ない。

魔粒子様々というヤツだ。

まぁ、この辺りはその魔粒子が消えているんだけどね。


「それより象太郎しょうたろう

 そんな格好で、お前寒くないのか?」


言われて気づいたのだが、確かに寒い。


何せ、皮ジャンの袖はヘビ夫の毒で溶けてしまい、

タンクトップ状態なのだ。


「寒いけど、上着はコレしか持ってきてないんだ。」


というか、そもそも他にアウターは持ってない。

ファッションに使う金があったら、

ゲームや漫画に使ってしまうからな。


「仕方ないヤツだな。ホラ。」


ロタは亜空間保管庫トランクから、軍事用の洒落っ気のない

ポンチョを取り出し、こちらに放った。


「サンキュ!」


早速羽織る俺。


前から思っていたけど、ロタって本当は優しいよな。

面倒見もいいし。ホント有り難い。


暖かいなぁ。それになんかいい匂いするぞ。

これ、ロタの匂いか?

やべぇ。ちょっと、いや、かなりドキドキして来た。


そう思って、チラっとロタを見ると、

月明かりでもハッキリわかるくらい、

真っ赤になった顔をサッと反らされた。


そこで気づいた。思念リンク繋がったままだ!

慌てて接続を切る俺。


痛恨だ。匂いで興奮とか変態さん丸出しだ。

また嫌われたのは間違いない。


取りあえず、話題を逸らさねば。


「なっなぁ。」

「な、なんだ。」


うっ。やはりぎこちない。


「スクルドってどんな人なんだ?」

「そ、そうだな、、一言で言えば、デカいな。」

「へぇ。巨人族というヤツか。」

「そうだ。」


アレ?会話の潤滑油にボケたつもりが、

なぜか、噛み合ってしまった。


「まぁ、見た目もデカいが、器もデカいぞ。」

「そうか。会うのが楽しみだな。」

「それなんだが、、相談いいか?」

「もちろん!」

「私も早く会わせたいんだが、まずは私一人で行きたい。」


そりゃそうか。状況の分からないとこに全員で行けば、

スクルドの立場上、本意でない行動を

取らざるを得ない場合もあるだろう。


まずは、ロタが単身で真意を確かめ、

しかるのちに、場を設けてもらう方が良さそうだ。


「俺もそれがいいと思うよ。」

象太郎しょうたろうなら分かってくれると思ってた。」


なんだろう。相変わらず、目は合わせてくれないが、

こころなしか、ロタの声がいつもより穏やかな気がする。


「それで、ロタはどうするんだ?」

「何がだ?」

「いや、スクルドのトコに戻るのか、

 俺たちと行くのかだよ。」

「・・・話の流れ次第だな。」

「そうか。そうだよなぁ。」

「そうだ。」

「でも、俺的にはロタが居なくなるのは寂しいなぁ。」

「そ、そりゃ私だって、、

 いや、、まぁ、寂しいとかは関係ないだろ。作戦が優先だ。」

「まっ。そりゃそうか。」

「・・そうだ。」


会話はそこで終わった。


俺たちはしばらく、無言で月を眺めていた。

月明かりは、ほのかに辺りを照らし、

湖面に映るその姿は、さざ波に小さく揺れていた。



ー ヴィージの森10日目 ー


日が昇るとすぐに、俺たちは渡湖の準備を始めた。


クラースさんが手刀で材木を用意してくれて、

ロタの持っていた登山用のロープを使い、

それらを結合させるという流れ作業だ。


結び方はロタの指導によるものだったのは言うまでもない。

作業は順調で、みるみる大きめの筏が完成した。


「良し!完成だ!」

「中々良い出来ですな。」

「ありがとう!クラースさん!」

「それじゃ、二人を起こしてくる。」

「サンキュー!ロタ!」


片手を上げて、背越しに返事するロタ。

いつもの感じに戻っているのが有り難い。


「今日中に森を抜けたいなぁ。」

「順当に行けば問題ないでしょう。」

「問題は、どの辺りまで魔粒子がないかだよなぁ。」

「そうですな。森を抜けたら、眷属を偵察に出してみます。」

「よろしくお願いします。」


そんなやりとりをしていると、親父が起きてきた。

まだ意識の戻らないカトリーナはロタがオンブしていた。


「親父、体調は?」

「ボチボチだぁ。昨日よりは大分いいぞぉ。」

「そうか。じゃあ行くぞ。」

「あぁ。」


俺たちは、渡湖を始めた。

クラースさんが櫓を使い、船を進める。

ホントこの人何でも出来るな。

感心するばかりである。


渡湖は思いのほか順調で、

一時間ほどで俺たちは対岸についた。


いよいよ北の森である。

ここを越えれば、ヴィージの森ともお別れだ。


何事も最後が肝心。気を引き締めて進まねば。


「良し!行こう!」


陣形というほどの人数でもないが、

不測の事態に備え、俺たちは隊形をとって進んだ。


先頭はクラースさん。

眷属の策敵をしながら慎重に進む。


最後尾はロタ。背後からの不意討ちに備える為だ。


そして、真ん中には、俺と親父。

カトリーナは俺が背負うハメになっている。


流石に、貧血でフラフラの親父には頼めなかった。


まぁ、背中の感触は悪いものではなかったので、

ある意味ご褒美だったのだが、意外に重たい。

コイツは胸を除き、幼児体系だからな。


ともあれ、思いのほか道のりは順調だった。

もう、3時間ほど歩いているのだが、

魔獣とは一度も遭遇していなかった。


順調過ぎないか?疑問に思っていたのだが、

森も終盤に差し掛かった辺りでその理由が分かった。


「皆様、少しお待ちを。」

「どうかした?」

「眷属からの報告で、この先に、

 猛毒の霧が立ち籠めている様にございます。」

「ソレって、例の虫のヤツ?」

「いえ、どうやら、昨日の蛇の毒と同質ですな。」

「あっ!」


ヘビ夫が吐いた毒をカトリーナが風で飛ばした。

アレが降り注いだのがこの辺りという事か。

どうりて魔獣がいない訳だ。


「参りましたな。今は無風ですが、

 風が出てきたら、場合によってはこの辺りも危険かと。」


困った。確かにあの毒はヤバい。

かと言って、いつ晴れるか分からないまま

足止めを喰らっていては、今度はカトリーナが持たない。

どうしたものか、、。


『しょうちぃん♡困ってるのぉ?』


いきなり頭の中に直接声が響いた。


『ヴィッシーか?』

『そうよ♡あなたのヴィッシー♡きゃっ♡言っちゃった!』

『悪い。今、忙しいんだ。』

『毒をなんとかしたいんじゃないの?』

『そうだよ。だから、今は、、』

『出来るよ。』

『今、なんて?』

『私、あの毒、解毒出来るよって言ったの。』

『マジか!』

『うん♡初めて出会ったあの日も、

 丁度、周囲の解毒終わったトコにしょうちん達が来たんだよ。

 平気だったでしょ?』


なるほど!そういう事だったのか。


セラフィーナの説明によると、魔術核が結合してる場合、

その瞬間に、力の強い方が表に出る。との話だった。


つまり、ヘビ夫がクラースさんの眷属を毒で殺した後、

力が低下して眠り、入れ替わりで出たヴィッシーが解毒をした。


そのヴィッシーに大ダメージを与えてしまったから、

翌日はヘビ夫のオンステージになったという訳か。


『頼む!なんとかしてくれ!』

『いいけどぉ、、』

『なんだよ。』

『しょうちんの魔術核、カラカラだから、

 私を召還したら、多分、意識飛んじゃうよ。

 それでもいい?』

『ちょいまち。相談する。』


「みんな!ちょっと聞いてくれ!」


俺はヴィッシーとの話をみんなに伝えた。


「毒さえ対処出来れば、森を抜けるのは簡単だ。

 何せ、魔獣と遭遇する事はないからな。

 森を抜けたら魔粒子があるとは限らないけど、

 このままじゃジリ貧だ。俺はやってみたい。」

象太郎しょうたろうがやりたいなら、私はそれでいい。」

「私も異存ありませんな。」

「俺もいいぞぉ。」


満場一致だった。


「良し!じゃ、ヴィッシー!頼む!」


『任せて!ダーリン♡』


その声を頭の中で聞いたのを最後に俺は意識を失った。

そして、俺が意識を取り戻したのは、それから3日後の事だった。


象太郎しょうたろうさん!大丈夫ですか!」

「あぁ。カトリーナ。そっちも気がついたのか。良かった。」

「すぐ、みんなを呼んできます!!」


言うと駆けて行くカトリーナ。

相変わらずせせこましい。


しかし、ここは何処だ?

寝心地がいいというほどではないが、室内のベッド。

異世界に来てから初めてのことだ。


もしかして、スクルドの館に着いたのかと

一瞬思ったが、どうやら違う。


窓の外から喧噪が聞こえる。

どうやら、町の様だ。


異世界の町かぁ。ちょっと見物したいなぁ。

窓から外を覗こうと、俺はベッドから這い出した。

そこに親父とクラースさんを伴って、カトリーナが戻ってきた。


「みんな!」


俺は笑顔で言った。けど、雰囲気がおかしい。


「あれ?ロタは?」

「ロタ様は、単身スクルド様の館に向かわれました。」

「そうか。確かに事前にそういう話にはなってはいたけど、

 ロタのヤツ。せめて俺が気がつくまで待ってからでもいいだろうに。」

「ロタ様もそれは同じ気持ちだったと思われます。」

「えっ?」


一体、どう言う事だ?何があった?


「ロタは捕まって、連行されたぞぉ。」


はっ?捕まった?誰に?なんで?


「おい親父!どういう事だ!!説明しろ!!」

象太郎しょうたろうさん!落ち着いて!!」

「落ち着けるかよ!!連行されたってなんだよ!!」


俺は激昂した。一体何があったというんだ!!

心臓が激しく脈打つ音が頭に響いた。

破壊衝動が捻りを上げて湧き起こってくる。

身体が熱い。燃えそうだ。


その時、俺の肩に手が置かれた。

物凄い威圧を感じ、俺の身体は一気に凍りついた。


象太郎しょうたろう様。ご冷静に。

 全てを見た私が説明させて頂きます。」


声を荒げた訳ではない。けど、スゴい迫力だった。

俺は完全に気圧された。


「クラースさん、、すいません。お願いします。」


クラースさんは順を追って、丁寧に説明してくれた。


俺が召還したヴィッシーは一瞬で周囲の解毒を済ましたそうだ。

そして『みんなまたね!』という言葉を残し、

俺の中に消えたらしい。


その後、俺をクラースさんが、カトリーナをロタが背負い、

2時間ほど森を進んだとの事。


間もなく森を抜けようかという頃、

眷属から報告が入ったそうだ。


森の出口付近に小規模な部隊が展開していると。

そして、3名ほどが偵察の為、森に入ってきたらしい。


クラースさんが状況を伝えると、


『間違いなくスクルド様の手勢だ。

 私が単身で交渉する。みんなは隠れていてくれ。』


とロタが主張した。彼女の意見は正しかった。

大前提として、スクルド部隊とは話し合いをしたい。

戦闘などもってのほかである。

これはパーティー全体の共通認識だ。


しかし、メンバーは、

得体のしれない人間界の二人に、

スクルドとは仲の悪いセラフィーナの側近。

極めつけは、抹殺指令の出されているカトリーナだ。


これほど、交渉に向かない面子もない。

ましてや、相手はスクルド本人ではなく、その手勢。

どの程度、今回の事を知っているのかさえ不明なのだ。


ロタが単身で交渉するのが一番賢明なのは、

迷う余地のない事だった。


結果、クラースさんとロタで、思念リンクを張り、

まずは、ロタが交渉に当たる事になった。


「よお!」


偵察の3人を発見すると、ロタは気軽に声をかけた。


「ロタ様!」

「おまえら、グズんとこの若いのだな?

 こんなトコで何してんだ?」

「昨夜、この先で巨大な光柱が目撃されていて、、」

「ちょっと!!」


説明を始めた一人を中央のヴァルキュリアが制した。


「どうした?」

「ロタ様。貴方には逮捕命令が出ています。

 抵抗せずに大人しく連行されて下さい。」

「ほう?罪状は?」

「逃亡罪です。」

「その命令は何処から出てる?スクルド様では無いハズだが。」

「グッ、グズ様からです。」

「なるほどな。私は、スクルド様の密命を受けて、

 ある任務についていた。今はその帰りだ。

 恐らくグズの奴は状況が分かってないな。」

「そ、それが本当なら、証拠をお見せ願います。」

「密命だぞ。出来るかそんなもん。」

「しかし、、」

「いいぞ。連行でも何でもしろ。

 どの道スクルド様の元に向かう途中だったんだ。」

「ありがとうございます。」


言うと両手を前に出すロタ。

亜空間保管トランクから取り出した拘束具を嵌められる。


『聞こえるか?』

『はい。ロタ様。』

『森を抜けたら、北西30kmに人族の町がある。そこで待機してくれ。

 私は先行してスクルド様に会ってくる。』

『危険では?』

『事前に象太郎しょうたろうと話して決めた事だ。私を信じろ。』

『そういう事であれば、いざ仕方有りませんな。くれぐれもお気をつけて。』

『あぁ。ちょっと行ってくる。』


そう言うと、ロタは偵察トリオに意識を向けた。


「部隊で来てるのか?」

「はい。」

「指揮官は誰だ?」

「アリーサ様です。」

「グズんトコの第一小隊長か。」


また、面倒なヤツを。


「取り敢えず、会わせてもらおう。」


『私が注意を引いておく。上手く迂回してくれ。』

『かしこまりました。』


言うと通信を切るロタ。


「私は湖の向こうから来た。

 情報は欲しいだろうからな。」

「助かります。」

「では行こうか。」


それ以降、今日で3日。

まだ、ロタからの通信はないとのことだった。


象太郎しょうたろう様。如何なさいますか?」

「少し時間を。」

「はい。」


現状は理解した。さて、どう動くべきか。


まず、疑問なのはロタはスクルドに会えたのだろうか?

もし、グズというヤツとロタの関係が良好でないとしたら、

最悪、スクルドに会えていない事も有るかも知れない。

その場合は、即救出に向かわないとロタが危険だ。


「カトリーナ。グズってヤツとロタは仲がいいのか?」

「悪くはないと思います。

 スクルド様の下で双璧を成す副官同士ライバル関係ではありますが、、。」

「ありがとう。」


判断の難しいトコだ。


しかし、ロタは以前に結束が堅いと言っていた。

それに、スクルドからの密命を受けているとロタが言った以上、

スクルドに報告しない訳にもいかないだろう。


つまり、スクルドには会えていると考えるのが妥当だ。

となれば、後は時間か。

森からスクルドの屋敷まで、約2日。

あれから3日経っているという事は、

最短でスクルドに会えたとしてもまだ1日か。


下手に動けばロタの足を引いてしまう可能性が高いな。


「もうしばらく、ロタからの連絡を待ちたいと思う。どうかな?」

「そうですな。今はロタ様を信じて待つのが良いかもしれません。」

「心配だけど、そうなるわよねぇ。」

「待つのはいつまでだぁ?」


位置関係的に、ここからスクルドの屋敷までは

概ね2日くらいだろう。ならば、、


「・・そうだな。明後日一杯まで待とう。」

「で、連絡がなかったらどうするの?」

「スクルドの屋敷に向かう。

 勿論、向かう2日間のあいだに連絡があれば良し。

 なかった場合は、こちらからロタに通信を入れる。」


それでも、通じなかった場合は、、。


「最悪、スクルドの屋敷に乗り込もう。」

次の本編投稿は12日を予定してます。

その前後どちらかに設定資料(キャラ紹介)を挟む予定です。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ