◇Two nights carnival その10◇
よろしくお願いします。
「取り込まれてるヤツを切り離す事は出来るのかな?」
「誰にモノを言っておる。」
「セラフィーナ。」
「ならば分かるであろう。我は天才ぞ。」
「そうか!じゃ頼むよ!」
「頼まれてやらんでもない。しかし、条件がある。」
「なんだ?」
「お主も力を借せ。」
「それは構わないけど、俺に出来る事なんかあるのか?」
「この面子じゃお主にしか無理だな。」
ニヤリと微笑うセラフィーナ。
背筋に冷たいモノを感じた俺は思わず敬語になった。
「い、一応、どんな事か聞いてもいいですか?」
「よくぞ聞いてくれた!良し!
では、浅学なお主でも分かる様に説明してやろう。
我が魔眼で観た処、2つの魔術核は、
結合してから推定で400年ほど経っており、
未熟な者では区別がつかぬほど癒着が進んでおる。
コレを無理に解こうとすれば、
双方の魔術核に裂傷が入り、たちどころに崩壊するのは確実である。」
「えっ?じゃあ出来ないんじゃん。」
「話は最後まで聞けい。戯けが。」
「はい。」
「我は解く事が出来んと言っただけだ。
解けぬものならば、片方のみ、
跡形もなく消滅させれば良い。」
「そんな事が?」
「当然出来る。」
「すげぇ!!」
「ただし、我には出来ん。」
「えっ?」
「お主がやれい。」
いや、なに、その無茶振り。
「やれと言われても、、、。」
「まぁ聴け。魔術核には、属性というモノがある。
通常なら、個人の個性で複数の属性が混在するモノなのだが、
物事には例外がある。
それが精霊だ。精霊は特殊なケースを除き、単一の属性しか持たん。」
「あっ!そう言えば、カトリーナがコイツは精霊だとか言ってたな。」
「お主の知り合いの方は精霊だ。水の単一属性だな。
そして、蛇の方は、精霊ではないが、
魔属性に若干の闇属性が混じってる同一系統混合型だ。
これが何を意味するか分かるか?」
「つまり、魔とか闇にしか効かない魔法を使えばなんとかなる!」
「その通りだ。しかし、ここで問題がある。
此奴は、魔術核の混線で実力を発揮できてはいないが、
元来、ソコソコに強力な存在だ。」
えっ?アレで実力出せてなかったの?
「中途半端な魔法をぶつけても消すのは難しい。
一撃で消さないと、お主の知人の魔術核にも何らかのトラブルが及ぶ危険がある。
そ・こ・で・だ。」
出た!狂気の瞳!!
目を合わせてはいけない。
必死に視線を逸らす俺。
その俺の顔を回り込んで覗き込むセラフィーナ。
表情が愉しくてたまらない事を物語っている。
「お主だ。お主だよ象太郎!!
我に術式を組ませろぉ。聖の極大魔法をなぁ!!」
「そんなのセラフィーナがやってくれよ!」
「出来たら疾うにやっているわ!」
「えっ?」
「良いか。火、風、土、水、光、闇、聖、魔。
我は、8大属性全てに於いて、独自の極大魔法を完成させた。」
素人には具体的な事は分からないが、
カトリーナとロタの表情が、
尋常な話ではない事を物語っていた。
余談だが、クラースさんは、
親父をピックアップに行ってくれている。
「そんな疑う余地のない天才である我にも、
苦手な分野というものがあるのだよ。
光と聖の2属性に関しては、性質上の問題で、
術式に必要な魔粒子量を確保できんのだ。」
あっそれは何となく分かる気がする。
「分かるか?完成させたにも関わらず、
この目で観る事の出来ん無念。
観てみたいだろぉ?観てみたいよなぁ?」
こ、怖いです。
「聖の極大魔法は、あらゆる魔と闇を根源から完全に滅ぼす!
発動されたら最後、いかなる結界も無意味!!
後には塵一つ残らん!!!どうだ?素晴らしいだろう?」
「えっ?じゃあ、もし、それをセラフィーナが喰らったら?」
「我が極大魔法に例外などない!!何人たりとも消滅するわぁ!!!」
大威張りで、無い胸をこれでもかと反らし、高笑いするセラフィーナ。
「そんな術式、簡単に他人に組んでもいいのかよ。」
「たわけ!我とて相手を選ぶわ!
お主の事は、クラースを通して知っている。
それが理由ではダメか?」
術式を組んでもらうってのは、命を預けるのと一緒だって
カトリーナが言ってたな。
でも、この場合、セラフィーナも俺に命を預けるのと一緒か。
『契約はフェアーでなければ意味がない。』
そういや、そう言ってたっけ。
「分かった。頼む。」
「良い返事だ。期待しておくといい。」
眼がヤバい。やっぱ怖ぇな。
「で、どうすればいい?」
「しばらく、ゴロゴロしとれ。
そうだな、、8時間と言った処か。」
「それだけでいいのか?」
「お主、魔術核から魔粒子がゴッソリ抜かれているではないか?
そんな残量で我が極大魔法を使ったら間違いなく死ぬぞ。」
「そ、それは困る。」
「なら、寝ておくが良い。
我は消滅する前に、この蛇から、
毒やら何やら採取せねばならん。」
うわぁ。死刑宣告と同時に解剖宣言されちゃったよ。
さすがに気の毒だわ。
とはいえ、庇う訳にも行かない。赦せヘビ夫。
俺はそそくさと距離を取り、一休みする事にした。
横になってほどなく親父が到着した。
「象太郎ぉ。良くやったなぁ。」
頭をわしゃわしゃしてくる親父。
「やめろって!」
今回は誉められる様な事はしてない。
むしろ、反省事項は山盛りだ。
「それより、親父、大丈夫なのかよ?」
「あぁ。カトリーナの回復魔法は結構きくぞぉ。」
「そうか!なら良かった!」
ゴロンと仰向けで寝転がる俺。
親父が隣に座る。
「なぁ。親父。」
「なんだぁ?」
『俺は役に立ってるか?』そう聞こうかと思ったが、やめた。
役に立っていると言われても、役に立ってないと言われても、
結局、落ち込むという事に気がついたからだ。
人に聞いたってダメだ。
解答はいつだって自分で出さないと意味がない。
要は、自分が納得出来るか、出来ないかだ。
それは、正しいとか、間違ってるとか、
そんな事とは全く別の話。
周りの評価なんかどうだっていい。
仮に大きな失敗をしたとしても、
自分自身が心から納得してさえいれば、
きっと気持ち良く生きていける。
そんな気がした。
「どうかしたのかぁ?」
「なんでもねぇ。ちょっと寝るわ。」
「そうかぁ。俺も寝よぉ。」
全く呑気な親父だ。でも、、
そこまで考えると、俺は意識を失った。
夢を見ていた。
上も下もない変な空間を漂っている夢。
暗闇の中に浮かぶいくつもの光がとても綺麗で、
近寄ろうとするんだけど、自分の意志で動く事が出来ない。
ただただ、漂っている。目には見えない流れに乗って。
どこかから、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「象太郎!起きろ!」
目を覚ますと、ロタがいた。
「あぁ。おはよう。ロタ。」
「セラフィーナが呼んでるぞ。」
どうやらパシられた様だ。
「分かった。すぐ行く。」
俺は親父と共に、起き抜けのままボサボサ頭で、
セラフィーナ達に合流する。
セラフィーナは、ヤバい色の液体が入った瓶を亜空間保管に収納している最中だった。
どうやら遂さっきまで、素材集めは続いていた様だ。
ヴィッシーB改めヘビ夫は、牙やら、皮やら、色々採取され、
既にボロボロだった。
「おぉ!来たか!では早速術式を組むとしよう。」
「頼む。」
セラフィーナは俺の鳩尾の辺りに右手を当て、
集中を始めた。
親父に組んでもらう時とは若干、趣きが違ったので、
少し緊張する俺。
「力を抜かんか!やりにくいであろう!」
「あっ!すまん。」
えっ?力むとやりにくいんだ。
しかし、時間がかかる。
書き込む術式とやらが複雑なのだろうか。
何にせよ、無言の時間が妙に気まずい。
そして、ちょっと、腹がむずがゆい。
「よし。完璧だ。我ながら素晴らしい!」
セラフィーナは手を放し、ご満悦の様子だ。
「これで、もう、その極大魔法とやらが使えるのか?」
「極大魔法はいきなりは放てん。
まずは、魔術核に意識を向け、
断罪と唱えよ。」
「分かった。」
魔術核に意識を向けか。さっきむずがゆかった場所でいいのか?
「断罪」
唱えると、俺の背後に次々と、シルバーに光る魔法陣が浮かび上がる。
「よし!いいぞ!ここまでは順調だ!」
セラフィーナが満足そうに頷く。
「こ、この後どうすればいいんだ?」
「魔法陣の色が金に変わるまで待て。
変わったら、あの蛇に手を当て、
『存在消滅』
と唱えよ。」
「わ、分かった。」
「良し、では、我々は退避じゃ。」
言うと、全員を集め、結界を張るセラフィーナ。
「おい。牛娘。」
「は、はい。」
「ちょっと来い。」
「はい。」
恐る恐る近寄るカトリーナ。
そのカトリーナの肩に手を置くセラフィーナ。
「神眼を使い、良く観ておくといい。」
カトリーナは返事をしない。否、出来なかった。
身体が完全に麻痺していたからだ。
ダイレクト回線でセラフィーナの声が脳に響く。
『驚く事はないぞ。別に取って喰おうという訳ではないでな。』
『何を!!』
『パラライズタッチだ。これは真祖の固有スキルで、
術式ではないから、周りは一切気づかないぞ。観念せい。』
『そんな!一体、何が目的ですか!!』
『なに、お前に神眼の使い方をレクチャーしてやろうと思ってな。』
言うと、カトリーナの魔術核をいじり、神眼を発動するセラフィーナ。
いきなり覚醒モードだ。しかし、一瞬光った瞳の中央に光が収束する。
『こ、これは!?』
カトリーナは驚愕していた。
眼の前に観たことの、いや感じる事の出来なかった宇宙が広がっていた。
魔粒子、分子、原子、電子、陽子、素粒子、
この宇宙を形成している最小単位の小さな存在たち。
それら一つ一つの細やかな動き全てが視覚情報となって、
全身の毛穴、いや、自身を構成する細胞、もしくは、更に小さな存在に、
濁流の様に流れこんでくる。
存在と存在が絡みあい、唸りをあげ、
やがて大きな流れに成って行く。
これはなに?宇宙との一体感を感じる。
『どうだ?これが宇宙の真理の破片であり、刻そのものよ。』
セラフィーナの声が脳のどこか遠くで響く。
というか、氾濫する数多の情報の一つとして知覚したが、
情報量の膨大さによって、小さく感じるというのが妥当だった。
そして、象太郎の準備が終わった。
『存在消滅!!』
極大魔法が発動された。
金色に変わった魔法陣が、ドーム上に展開し、ヘビ夫を包んだ。
その直後、矢継ぎ早に幾条もの光の槍が放たれる。
放たれた槍は、まるで吸い込まれる様に、
次々とヘビ夫に突き刺さっていった。
そして、槍が刺さる度に、ヘビ夫を中心に、
どんどん光量が上がり続けていく。
その眩しさに視界が白一色になった瞬間。
光が中央一点に収束し『プツリ』テレビの電源を切ったかの様に、
一気に暗闇に変わった。
完全なる漆黒。1mm先も見えない。
大地さえ消失してしまったかの様な何も感じられない世界。
無限とも思える刹那の後、
収束点から放たれた光の柱が天に突き刺さる。
膨大なエネルギーが空に吸い込まれていくにつれ、
徐々に景色が戻る。
最後の光が天空に消えた後、静寂だけが残った。
何が起こったのか認識するのも説明するのも困難な状況。
そう。二人を除いては。
『視たか?』
『・・・はい。』
『なら、授業は終わりだ。』
言うと麻痺を解くセラフィーナ。
カトリーナはその場にへたり込み、そのまま意識を失った。
「おい!カトリーナ!」
慌ててロタが駆け寄り、抱きかかえる。
シヴァは、満足そうなセラフィーナに歩み寄って、
小声で問いかけた。
「カトリーナに何をしたぁ?」
「なに、神眼の使い方を少しレクチャーしてやったのよ。」
「余計なことをしてくれたなぁ。」
「主がそれを言うか?
そもそも此奴に神眼を与えたのは主であろう?」
「あぁ。」
カトリーナの介抱をしていたロタは、
二人の会話を聞いてしまった。
神眼を与えた?どういう事だ?
「此奴には素養があるぞ。
遅かれ早かれ、本来の力に目覚める事になるであろう。」
「そうかぁ。」
話はそこで終わった。
セラフィーナが、クラースを伴い、
象太郎の元へと向かったからだ。
シヴァもゆっくりと歩き出す。
シヴァの背に向けていた視線を、
腕の中のカトリーナに戻す。
無邪気な顔で眠るカトリーナ。
その寝顔を見ていると、なぜか、
ロタは不安な気持ちになった。
一方、象太郎は、尻餅をつき、ヘタリ込んでいた。
「なんだったんだ、、今の、、」
クラースさんの魔法を見た時、凄まじいと思ったが、
コレはその比じゃない。
敵に向かって放つのではなく、
世界そのものに向かって放つ。
そんな感覚だ。
初めて自分の意志で使った魔法がコレかよ。
「どうだ?極大魔法を撃った感想は?」
「セラフィーナ。・・そうだな、、とんでもねぇ。」
「はははっ!そうかそうか!!うんうん!」
「一体なにが起こったんだ?」
「知りたいか?では教えて進ぜよう!
彼の術式は3工程にて敵を消滅せしめる。
即ち、分解、圧縮、放出だ。
まず、魔や闇といった負の属性に対し、
追尾機能を持たせた聖なる光槍で、魔術核を一つ残らず分解する。
次に、分解された粒子の再構築を防ぐ為、核融合レベルまで圧縮する。
そして、その強大なエネルギーに指向性を持たせ、
残らず、この宇宙の外に放逐する。
放逐されたエネルギーは極めて小規模な宇宙になるが、
維持するのに必要なエネルギーには満たぬので、やがて自壊するであろう。
簡単に説明するとこんな感じだ。」
簡単じゃねぇよ。
ただ、、とてつもなくヤバい魔法だと言う事だけは伝わった。
「すげぇな。」
「恐れいったか?」
「あぁ。恐れ入った。けど、俺にはちょっと過ぎたおもちゃだ。
悪いけど、術式を消してもらえないか?」
あんなの民間人が核兵器を個人所有してるようなもんだ。
強くなりたいと言う思いはある。
けど、これは違う。
力は、それを得る過程において、その使い方を学ぶモノだと思う。
与えられた巨大な力を、上手に扱えるほど俺は器用な人間じゃない。
「仲間を守りたくはないのか?」
「守りたいさ。けど、、」
「ならば、持っておいて損はないぞ。」
「俺には過ぎた力だ。」
「そうか。ならば、消すのではなく、封印しておくとする。」
「封印?」
「解除鍵は、クラースに渡しておく。
お主が使うに値する器になったと自らで判断し、
かつ、クラースが必要と考えて初めて使えるという事だ。どうだ?」
「それなら。」
「賢明な判断だ。お主が皆を守ろうとすれば、
いずれ、必ず必要になるであろうからな。」
「必ず?」
「良い。確定された未来など無いと、我は信じたい。
検証はこれからだがな。」
セラフィーナは何を言っているんだ?
「ククク。面白い。実に面白いぞ。クラース!!」
「はっ!」
「我は、この者どもを痛く気に入った!
粉骨砕身せよ!この茶番で一人たりとも死なす事は赦さん!
良いな?」
「この命にかえましても。」
「良し。では、我は行く。少しやる事が出来たのでなぁ。」
「ちょっと待ってくれ!まだ聞きたい事が!」
「慌てるでない。いずれまたな。」
言うと掻き消す様に消えるセラフィーナ。
「行っちまったか、、。」
「象太郎様。」
「ん?」
「あちらはどうしましょう?」
「あちら?」
クラースさんの視線をおうと、
そこには一人(一匹?)の人魚がいた。
セミロングの茶髪に、円な眼。
童話に出てくるイメージからすると、やや童顔だ。
見た目は18歳くらいか?
まぁ、異世界なので、当てにはならないが。
それにしても、目のやり場に困る。
なにせ、上半身は裸なのだ。
人魚はジッとこちらを見ていたが、
俺の視線に気づくと、物凄い勢いで後ろを向かれた。
えっ?これ、俺が悪い感じ?
どうしたって見てしまうよね?男だもん。
それにしても、色白で綺麗だ。
見るからに華奢な身体は、
簡単に折れてしまいそうですらあった。
あの恐竜みたいなのとは大違いだな。
ヘビ夫の影響だったという事か?
そんな事を思いながら、眺めていると、
チラッとこちらを見る人魚。
目が合うが、再び、視線を反らされる。
「おまえ?もしかしてヴィッシーか?」
「ヴィ、、ヴィッシーって何!?
まだ婚約もしてないのに勝手に名前つけないで!!」
婚約?ナニソレ?
「まぁ、いいや。」
「まぁ、いい?」
「それより、昨日は悪かったな。」
「謝ったって許さない!すっごく痛かったんだからね!」
「悪かったよ。アレにはちょっとしたすれ違いがあって、、
だから、もう一度話せて嬉しいよ。」
「すれ、、違い、、。そ、そう。
まぁ、恋にはそういうのも大事よね。」
鯉?コイツ鯉の人魚なのか?
「そ、それで、何の用?」
「謝りたかっただけだから、もう、特には、、。」
「えっ?それだけ?」
「あっ!大事な話があった!」
「ナニ!!」
「あんな事があった後に、こんな頼みごとをするのは、
ちょっと図々しいかも知れないんだけど、、」
「な、なによ、、別にいいわよ。は、早く言いなさいよ!」
「俺たち、湖を渡りたいんだ。」
「ハァ?」
「えっ?ダメかな?」
「ダメじゃないけど!別の話があるでしょ!」
「別の話?」
「はぁ、これだから陸上生物は!
空気は吸うだけじぁなくて読みなさいよ!」
「えっと、、ごめん。分かんない。」
「何よ!突然現れて!ナンパしといて!!」
「えっ?あれは、、」
「ゆっくり話も出来ないままお別れして!
再会したかと思ったら戦うハメにになって!
あんなスゴい魔法使って!助けてくれて!
それに、、お礼を言う前に謝るとか!!
もう、運命じゃない!王子様じゃない!」
「あっ、いや、、」
「まぁ、でもぉ♡
既に名前まで決めてるとかぁ♡
嬉しかった♡早く婚約しましょ♡きゃっ♡」
ナニソレ?魚類の風習?
『象太郎様。』
あっ!まだ思念リンク切れてなかったんだ。
『何?クラースさん。』
『彼のお嬢様は精霊にございます。
象太郎様との婚約を望まれている様子。
如何なさいますか?』
『契約!』
『はい。この機に象太郎様も
精霊に選ばれし者になられては?』
『いや、いいのか?』
『良いと思います。彼のお嬢様は、かなり強力な精霊にございます。
こんな好機そうそうあるものではございません。ご決断を。』
『クラースさんがそう言うなら、、』
「ねぇ♡ナニしてるのぉ♡
ジラさないでぇ、、は・や・く♡ちょうだい♡きゃっ♡」
「な、なにを?」
「ナニじゃなくてぇ、返事よ♡返事♡」
「分かった。契約しよう。」
「嬉しい♡じゃあ貴方の名前を教えて♡」
「斯波象太郎だ。」
「じゃあ、しょうちんね♡」
『小チン』と書く訳ではないだろうな?
「しょうちぃん♡私の名前を呼んでぇ♡」
「ヴィッシー。」
口にした瞬間、眩い光が俺とヴィッシーを包んだ。
「キャア♡もう我慢出来ない♡私を全部受け止めてぇ♡」
言うと、尻尾で跳ねて、抱きついてくるヴィッシー。
物理的な意味で受け止めようとしたのだが、
そのまま俺の身体の中に消えていった。
代わりに、俺の胸には一つの紋章が浮かび上がっていた。
「無事、契約終了ですな。」
「えっ?契約ってこれで終わり?」
「はい。これで象太郎様も
精霊に選ばれし者にございます。」
まるで実感が湧かない。
ふと振り返るといつの間にか親父がいた。
何となく様子がおかしい。
「親父、なんかあったのか?」
「カトリーナが倒れたぁ。」
「カトリーナが!!」
「お前の魔法を神眼で見ちまったからなぁ。」
「大丈夫なのか!」
「普段なら、2時間もすりゃ回復するんだがなぁ。」
「普段なら?どういう事だよ!」
「説明は苦手だぞぉ。」
クラースさんに視線をふる親父。
「現在、この辺りには魔粒子が存在しません。」
「えっ?」
「象太郎様の極大魔法で出来た
光柱の勢いに巻き込まれて、吸い上げられた様子。
完全に真空状態ですな。」
「それって、、?」
「この場に留まる限り、回復は見込めません。」
「じゃあ、移動しよう!」
「それも慎重に行わねばなりません。」
「どうして?」
「象太郎様は極大魔法の使用で魔粒子がほぼ空です。
私とシヴァ様も回復に相当エネルギーを使い残量が乏しく、
カトリーナ様に至っては神眼の使用で存在維持ギリギリの状態です。」
「それって!」
「ロタ様以外、全員戦力外という事になります。」
マジか!今、強力な魔獣の群れにでも襲われたらひとたまりもない!
「取りあえず、二人と合流して朝を待とう。」
時刻は現在23時。日が昇るまでには、まだ大分時間があった。
今回、少し盛り込み過ぎたかもしれません。
分かりにくかったら申し訳ありません。
次回更新は、9日夜を予定してます。
よろしくお願いします。





