妹萌えなんてクソくらえっ! 姉萌え最高っっ!!・・・・アレっっ??
どうか軽いお気持ちでお読み下されば幸いです。
内容は少しぶっ飛んだものだと思いますが悪しからず・・・・・
唐突だが、僕は今のラノベ作品における妹至上主義の現状に飽き飽きしている。
春の放送予定アニメの欄を見ても『妹』関連のアニメがあり、夏の放送予定アニメの欄を見るとまたしても『妹』関連のアニメがあり、秋、冬と同様にそれ関連のアニメが散見して見られる。
あまりにも妹がフィーチャーされすぎているのだ。
確かにっ・・・・「妹」という存在が視聴者受けすることは理屈の上では理解している。
守ってあげたい、世話を焼きたい、お兄ちゃんと呼ばれたい、下の子に罵られたいなど様々なものが挙げられる、挙句に可愛い容姿の妹なら尚更だろう。
しかしっ! 僕はそんな妹戦国時代に物申したい・・・・・もうそろそろいいだろう、と。
勘違いしないでもらいたいが、決して数多ある妹関連のラノベを全否定し、敵対する意志は毛頭ない。
某妹ラノベの代表格である、お〇妹・は〇ない・エ〇〇ンガ〇生といった神ラノベたちと真っ向から対立するつもりはないことを改めて言わせもらう。
べっ、別に妹信者様がたの批判意見が怖くてこんな言い訳を敢えて言っているとかでは決してないっ!・・・・・そう、別にそう言うわけじゃなぃ。
つまりっ! 僕が言いたいのはもう妹作品のラノベはもう沢山である、ということだ。
では、何がいったい僕にとっての至高なのかって?・・・・・・そんなの決まってる、僕の求める至高・・・・・それは・・・・・・包容力抜群の姉萌えであるっ!!!
弟を時には優しく見守り、時には世話を焼き、時には甘えさせてくれる尊い存在。
おまけに胸も大きく、スタイルも抜群、抱きしめられると弟であってもドキッと心臓が高鳴ってしまうオプション付き。
んっ?・・・・そんな姉なんて現実には存在しないって?
君たちは何も分かっちゃいない、姉とはそうあるべき存在であり、それは神が決めた絶対の法則っ!
それに第一・・・こんな姉を熱く語る僕がその存在を目にしたことがないとでも?
残念だが、そんな完璧な姉が僕には存在する。
ゆえに、姉とは僕にとっての憧れであり、天使であり、神なのだ。
んっ? 何を言っているのか分からない?
それは致し方ない、ヒートアップしすぎて僕も自分で何を言っているのか少し分からなくなっているからだっ!
こほんっ・・・・・つまり何が言いたいのかっていうと・・・・・・・・僕が単にお姉さん属性萌えの変態であるということ、ただそれだけのお話である。
そして、先程までの僕の姉萌えが好きすぎるゆえに妹萌えを愛する方々への侮辱とも取れる数々の発言をどうかお許しください。
ただ僕は、現状の妹萌え至上主義ラノベより姉萌えに溢れたラノベを愛しているということを主張したかっただけなのだ。
長々と僕の趣味嗜好の話を非常にお見苦しいところをお見せしてしまい本当に申し訳ない。
ここからは僕の完璧な物語をお楽しみください。
チュンッ・・チュンッ・・・・チュンッ・・・・・
「・・・・んんっっっ・・・・・・」
少し開いたカーテンから朝特有の眩しい太陽の光が微かに差し込み、窓の外から小鳥の小さい鳴き声が聞こえてくる。
僕こと、藤沢圭吾は気持ち良い眠りから覚醒し始める。
眠たさで半開き状態のまぶたを擦りながら一生懸命目を凝らして机の上に置いている時計を見ると、現在の時刻はAM6:45。
はっきり言って、予定起床時刻よりも20分早い。
ならば、次に取る行動は一つに限定される、というよりもこれしかないだろう。
つまりは・・・・・2度寝、もう一度目を閉じて眠りに就く行為。
そうと決まれば話は早い、僕はもう一度寝ようと掛け布団に手を掛ける。
(・・・・・んっ?・・・・・)
圭吾が布団をグイッと引っ張ってもビクともしない。
僕一人しかいないはずのベッドで何か引っかかるものなどない場所で掛布団を引っ張ってもビクともしないのである。
明らかにおかしい・・・・・という考えに至った圭吾は、左隣に移動していた掛け布団の方を見る。
スヤ~~・・・スー・・・・スー・・・・スー
すると、そこにはパジャマの胸元が無造作に開き服の上からでも分かるほどの特盛サイズのおっぱいがこれでもかと溢れさせた女性が綺麗な寝息を立てて寝ていたのだ。
まつ毛は長く、枝毛なども一切ない流れるように黒く美しい長髪、アイドル顔負けの整った顔立ちの女性が圭吾の隣で無防備に眠っている。
そして何よりその女性の下がパンツのみを履いている状態だということ。
こんなグラドルとアイドルの両方を掛けたような女性が隣で寝ていれば普通の男性なら驚いたり困惑したり劣情を催したりするのだろうが、圭吾はそのどれでもなかった。
「・・・・またか・・・・・・姉さんはまったく・・・・」
圭吾の反応は溜息交じりの嘆息。
そう、隣で寝ている女性は圭吾の姉、藤沢亜季であった。
とはいえ、今年でもう高校3年生になる姉が高校2年生の弟のベッドに潜り込んで寝ているという構図はいくら姉弟という関係であることを考慮しても非常によろしくない。
さすがにこのままというわけにはいかず、とりあえずこの状況を打開するべく行動を開始する。
「姉さんっ・・・・姉さんっ・・・・ほらっ起きてってば・・・」
とても幸せそうな寝顔をして弟から奪った掛布団を被り気持ち良く眠る姉の肩をユサユサと揺らして起こす圭吾。
すると数十秒後にやっと亜季が目を覚ます。
「んんっ・・・・・ふあぁぁぁ~~・・・もう朝なのね。 ん~~~~~~~~、おはよう圭ちゃん♪」
長い欠伸を漏らした後、両手を上げてグイッと勢いよく身体を伸ばして他の男なら一発で恋に落ちてしまうであろう笑顔を浮かべて朝の挨拶をする亜季。
(まったく・・・弟の僕しかいないからって亜季姉は無防備すぎるっ・・・・下は言うまでもなく論外だけど、上もパジャマのボタンが2個くらい外れて腕を伸ばしたことで胸元がかなり見えてしまってるじゃないかっ・・・・・それに今日は僕のベッドで寝てるなんて、高校生になってからはさすがに一緒に寝るのはやめたはずなのに・・・・まぁ、それでも十分遅すぎるんだけどさ)
圭吾が色々と姉である亜季の問題点を考えていると、先程まで身体を伸ばしていた亜季がニコッと不敵な笑みを浮かべて圭吾の顔をじっと見つめていた。
「可愛い弟の圭ちゃんに起こしてもらってお姉ちゃんは朝からとっても嬉しいな。 だ、か、ら、これは姉からのささやかなお礼だよ♥・・・・・」
そう言って、亜季はゆっくりと目を閉じて圭吾の顔に自分の顔を近づけていく。
亜季は明らかにキスをしようとしているのだ。
さらにそのキスはほっぺなどの冗談で済まされるレベルのものではない・・・・口と口どうしの接触、恋仲の男女がする類のキスなのだ。
当然のことながら、亜季と圭吾は純然たる正真正銘血が繋がった姉弟の関係である。
したがって、いくら仲の良い姉弟であってもこれはさすがに洒落にならないので、姉がこれから何をしようとしているのかを察した圭吾は慌てて亜季の肩に両手を伸ばして動きを止める。
「ちょっ、ちょって待ってよ亜季姉っ! さすがにこれはまずいって! いくら亜季姉が僕の事を溺愛しているからって今みたいな・・・・ほっぺでもギリギリだったのに、口どうしはさすがにねっ? あっ、もしかしてまだ寝惚けてるとか?」
少し冗談めかしたような口調で亜季の行動を諌める圭吾。
圭吾自身も姉である亜季が自分のことを溺愛以上に溺愛していることは十分に理解していた。
そして、今まではそれがあくまで姉弟という関係の中で収まるレベルのものであった。
実際のところ、先程圭吾が言ったようにほっぺなどにキスするという通常の姉弟がしないような少し度が過ぎたスキンシップなどもあったし、それ以外にもかなり際どいこともあったが、それらはあくまでも最低限姉弟の一線を越えないものであった。
だが今回の亜季の行為は、さすがに今までのものとは違い姉弟の関係を完全に超えてしまう類のものである。
だからと言って、今まで姉弟としてギリギリの行為を許していた自分が、姉である亜季に対して強い口調で叱るのもどうかと思ったために、先程のような少し冗談めかしたような口調で諌めたのだ。
圭吾自身もこういった口調で話せば、亜季もいつものように「もうっいじわるなんだから~♪」といった感じで落ち着くだろうと考えていた。
しかし、その圭吾の予想とは裏腹に当の亜季はさっきからずっと黙ったまま。
笑顔で朝の挨拶をしたときはまるで別人のよう、少し俯いてずっと顔を伏せたまま。
少し様子がおかしいと思った圭吾が亜季に話しかけようとすると、バッと亜季の顔が上がる。
「ねぇ・・・・・・・・・そんなに私とするのが嫌?・・・・・・・・」
今まで聞いたことのないような冷たく低い声に、圭吾の背中がゾッと震える。
(いっ一体どうしたっていうんだ亜季姉はっ! こっ、こんな冷たい声なんて今まで一度も聞いたことなんかっ・・・・・いつも優しくて明るくて笑顔の絶えなかった亜季姉だったのにこんな怖くなるなんてっ・・・もしかして、僕が気付いてないだけで何か怒らせるようなことをしてたのかっ?)
あの優しい姉が何の理由もなく怒るなんてありえないだろうという考えに至った圭吾は姉に理由を聞き出そうとする。
「どっ、どうしたのさ亜季姉・・・・そんな怖い顔して。 もしかして、僕が亜季姉を怒らせるようなことを言っちゃたの? そのことはちゃんと謝るから僕に理由を聞かせてほし・・・・・・」
「・・・・昨日・・・・・学校からの・・・・・帰り道・・・・・」
俯きながらぼそぼそっと小さな声で圭吾の質問に対する関連ワードを呟いていく亜季。
(昨日の帰り道?・・・・・・・学校帰りで亜季姉が怒るようなことなんて何もなかったはずだけど・・・・・・)
だが、当の本人である圭吾はいまいちその関連ワードと亜季が不機嫌になるような因果関係を結びつけられないでいた。
それでもいまいちピンとも来ていない圭吾に、亜季は新しい関連ワードを呟く。
「同級生の・・・女の子・・・・・・・・・・抱き・・・・・抱き着いてたよね??」
先程まで俯いていた亜季が最後の言葉だけ強く言い放ちと同時に圭吾との距離を一気に詰めてお互いの顔と顔が数センチのところまで接近する。
「うわっっ!?」
一気に距離を詰められ亜季の顔がいきなり間近に来たこともそうだが、なによりもいつもの優しく笑顔が絶えない亜季の顔も無機質な表情になり、どんよりと暗く底なし沼に吸い込まれるかと錯覚してしまうような黒く濁った瞳に恐怖と困惑と驚きが一気に押し寄せ、身体がまず驚いて声を上げてしまう圭吾。
後ろに下がろうとする圭吾だったが、生憎と後ろは窓際の壁であるためいくら身体を後ろに引こうとしても身体は当然後ろに下がることは出来ない。
後ろに下がれず焦り目の前を向いてもそこには亜季の怖いほどに冷たい無機質な表情が自分を見つめているという背中がゾクリとしてしまうような光景が広がるのみ。
このままでまずいと思った圭吾は、先程の亜季の呟いた言葉をもう一度思い返してみることに。
(きっ、昨日の帰り道で・・・・・同級生の女子・・・・・・・そういえば・・・・・・・・抱き着く?・・・・・・・あっ!! もしかしてっ、アレを見られてたのか!? っていうことは、亜季姉が勘違いしてるのってまさか!?)
冷静に昨日の事を思い返したところ、圭吾には一つだけ心当たりが見つかったのだ。
しかし、そのことはとりたてて気にするような内容ではないはずのもの。
普通の姉弟の関係ならば・・・・・の話だが。
そう、僕たちは普通の姉弟と呼べるような関係性ではないのだ、僕の方はそのつもりなのだが亜季姉の方はいささか溺愛が激しいというか・・・・過ぎるというか・・・・僕の勘違いでなければ、どうやら・・・結婚・・・・を最終目標にしているような・・・・・わかりやすくいえば、弟として好きではなく、一人の男性として愛している・・・・・ように感じられるのだ。
これまでの圭吾に対する様々な過剰すぎるスキンシップ・・・・そして、今日の決定的なまでの本気キス。
だからこそ、起こった大きな勘違いでもあったのだ。
それに気づいた圭吾は、その勘違いを正すべく慌てて亜季に昨日の出来事の経緯を説明していく。
「待ってくれ亜季姉っ! 昨日のことは亜季姉の勘違いなんだっ」
「・・・・・・勘違い?・・・・・どういうことなの?」
「えっと・・昨日の帰り道で同級生の女の子と一緒にいたのはたまたまなんだよ。 帰り道が一緒の方向だっただけの同級生なんだけど、なんか歩き方がふらふらして変だったから大丈夫ですか?って声を掛けようとしたら倒れそうになったから慌てて身体を支えようとしたってわけ。 その子、体調があまりよくなかったらしいんだ、後で事情を聞いたんだけど。 多分、それを亜季姉が偶然目撃して僕とその子が抱き合っているように見えたんじゃないのかな・・・・・・・って亜季姉? ちゃんと聞いてる?」
昨日の経緯を話し終えても俯いたままで何の反応もない亜季。
それを見た圭吾がちゃんと理解したかどうか判断がつかないため亜季に自分の話をちゃんと聞いていたどうかとそれによって誤解が解けたかどうかの両方を含んだ確認をするため心配そうに声を掛ける。
圭吾の言葉を聞いた亜季は、静かに声を発していく。
「ねぇ・・・・・どうしてそんな嘘をつくの?・・・・・・・お姉ちゃんにそんな嘘が通用すると思ってるの?・・・・ねぇ、圭ちゃん・・・・・・ねぇ・・・・」
亜季の反応は圭吾が淡い期待を描いていた理解とは真逆のものであった。
瞳は虚ろになり見られただけで背筋がゾワッとするほど、現に亜季に見つめられている圭吾は恐怖と混乱でどうにかなってしまいそうだ。
普段の明るくて優しい亜季を知っているだけに、その恐怖は余計に増幅されているのだ。
亜季の得体の知れない圧力と恐怖に必死に耐えながら、圭吾は自分の主張を亜季に分かってもらえるよう懸命に訴える。
「ほっ本当だって亜季姉っ! 昨日の事は本当にただの偶然の事故で、亜季姉が思っているようなことは・・・・・・」
そう訴え続ける圭吾の言葉は亜季によって中断される。
「うそよ・・・・そんなのウソ・・・・・私は知ってるもの・・・あんな風に仲良さそうに抱き合って・・・・・あんなっ・・・・」
「だからっアレは!」
「ウソよッッッ!!」
「っっっっっ!!??」
亜季の今まで聞いたこともないような怒声に身体が少し飛び上がるほど驚くと同時に混乱の色が隠せない圭吾。
いつもおっとりと笑顔の絶えない姉からは想像もできない強い否定の言葉。
いつもなら弟である圭吾の意見をここまで完膚無きまでに否定することなど一度もなかった。
しかし、今回に限ってこれほどまでに強い否定をされたことがなかったためか、圭吾の戸惑いは相当なものになっていた。
だが、そんな混乱が収まらず身体が固まったように動けなくなった圭吾の元へ亜季はどんどん体を近づけていく。
「そう・・・・・あの女にそう言えって、私に嘘をつけって言われてるのね?・・・・私が弟を可愛がってるのは有名だからあの女も私に知られるのはまずいって理解してたんだわ」
「なっ、何を言ってるんだよ亜季姉っ! 今日は一体どうしたんだよっ!」
亜季の勘違いはとどまることを知らず、圭吾の先程の説明など最早何の意味も為していなかった。
そして、今も必死に亜季の勘違いをやめるよう投げかけている圭吾の言葉も今の亜季には全く聞こえていない。
「・・・・・だから圭ちゃんは私にまで嘘を・・・・・そこまであの女に誑かされたのね、嘆かわしい・・・・・そんな悪い圭ちゃんには・・・・・姉である私に嘘をついたんだから・・・・・罰を与えなくちゃ・・・・ねっ?」
そして、最後の言葉の後に無機質な顔でニコっと笑いかけながら圭吾の顔を一点に見つめる亜季。
あまりに動作と感情がかみ合っていない薄気味悪い笑顔を向けられた圭吾はヒィッと恐怖の声を上げてしまう。
(うっ、うそだろ?・・・・・こんな今のおかしい状態の亜季姉に・・・・・・僕は一体何をされ・・・・・・あっあれ?? かっ、身体が動かなっ・・・・・なっなんで手首と足首にロープなんてっっっ!!??)
ギチッ・・・ギシッギシッギシッ・・・・・
そう、圭吾の両手足首、計4本のロープがベッドの頭部分にある小さい柱や足元の装飾品の輪っかの部分にぎっちりと結び付けられ完全に身動きが出来ない状態になっていたのだ。
(さっきまでこんなロープなかったのにっ、どうしてこんなものがいきなりっっ!!)
がっっっ!!、と手足を動かそうと力を入れてもロープが完全に伸びきった状態で結ばれており圭吾は両手足が壁に背中をつけて両足を伸ばした状態から全く動けなくなってしまっていたのだ。
しかし、先程までなかったロープがいきなり現れたことを考えている間に、亜季の顔は圭吾の目と鼻のすぐ先に到達していた。
「そんな悪い圭ちゃんには・・・・・もうあの女と一生愛し合えないようにしてあげるね・・・・・これ以上あの女に私の圭ちゃんが穢されないように・・・・・私としても不本意なんだけどあの女としている圭ちゃんを想像するよりかは遥かにマシだから・・・・・でもそれだと私と圭ちゃんの子供が作れないってことになるわね・・・・・でも、いざとなれば圭ちゃん似の子供を養子としてどこかの養護施設から迎え入れて育てていけばいいのよね・・・・そうだわっそうしましょうっ・・・・・うふふっ、ふふふふふふっっ・・・・・・」
そう言って、不気味な笑みを浮かべ薄気味悪く笑う亜季。
そんなおかしくなり狂気じみた姉の姿を見た圭吾は身の危険を本格的に感じ始める。
だが、時すでに遅くいくらこの場から逃げ出そうと身体をジタバタと動かしてもロープのせいで四肢を拘束されているために動けない。
圭吾の背筋はこれから何をされるか分からない恐怖でじっとりと汗ばんでいた。
そんな様子を見た亜季は、より一層の笑みを浮かべて何かを取ろうと右手を後ろ側に回すのだった。
スッ・・・・・・・・・・・・
「ねぇ・・・・圭ちゃんはこの道具って何か知ってる?・・・・・」
「っっっっっっっっ!!!????」
亜季の右手に握られていたモノを見た瞬間、圭吾は驚きと恐怖で全身が震えあがる。
なにせ右手で持っていたものは、注射器と枝などを切るための裁断用ハサミだったからだ。
この二つの道具が意味することは先程の亜季の言葉から想像すれば容易だろう。
罰・・子供が作れなくなる・・・ハサミ・・・・・そう、これだけのヒントがあればこれから亜季がすることなど一つしかない。
男性なら想像もしたくないような恐ろしいことである。
これからされるであろう行為を完全に理解した圭吾は、無駄だと分かっていても理屈ではなく本能で身体を狂ったように暴れさせる。
「あぁぁぁぁぁっっ!!! いやだっっっ!! なっなんでこんなッッッッ!!! くっっクソッッッッなんでっっロープが外れないんだっっ!!! 亜季姉っっ!やめてくれっっ!!こんなっ馬鹿げたこと早くやめるんだッッッッ!!!」
固く結びつけられたロープは圭吾がいくら暴れようと緩まることはなく余計に手足首を圧迫してしまい鬱血状態になり表面がだんだんと赤みを帯びていく。
抵抗してもこの場から逃げられないと悟った圭吾は、最後の手段として亜季の説得を始める。
だが、そんな言葉など今の亜季に通じるはずもなく―――――
「暴れちゃダメよ圭ちゃん、これはお仕置きなんだから・・・・・でも安心してね・・・・・ちゃんと痛みがないようにこの麻酔を打ってあげるから。 可愛い圭ちゃんだから特別にね、私って本当に弟思いのいいお姉ちゃんよね・・・・・じゃあ、早速始めていきましょうか、圭ちゃんっ♡」
狂気じみた笑みを浮かべ本当に楽しそうな声音で自分の名前を呼びながら注射器を片手に近づいてくる亜季の姿が、涙を浮かべ恐怖で身体が震えあがる圭吾の視界に映り込む。
そんな狂った光景に圭吾は――――――――――――
「こっ・・・こんなヤンデレ堕ち属性サイコパスの姉なんて僕は願い下げだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!」
心の奥底からの魂の叫びを上げるのだった。
チュンッ・・チュンッ・・・・チュンッ・・・・・
窓の外から小鳥の泣く声が聞こえ、カーテンの隙間から日が差し込み薄暗い部屋が少し明るくなった朝。
現在の時刻AM6:45。
圭吾は必死に抵抗しようとしていたのか右手をこれでもかと思うくらい天井に伸ばし、じっとりと汗を掻き荒々しい息遣いをしながら目を見開いて意識を覚醒させる。
ドクッッ!ドクンッ!ドクンッ!!ドクンッ!!ドクンッ!!・・・・
圭吾の心臓はまるでマラソンを走り終えた時のような激しい心拍数に達し、胸に手を当てなくても激しい鼓動が感覚として感じ取れるほどであった。
「・・・・・なんだ・・・・・・夢だったのか・・・・・・危うく心臓が止まるレベルの悪夢だったぞアレは・・・・・・」
いきなり目を覚ましたというのに、朝特有の気怠さや眠気は一切なく、夢で本当に良かったという安堵のみが圭吾の心を支配していた。
そう、先程の出来事は全て夢の中でのものであった。
しかし、あまりにリアルすぎたためか夢だと認識した今でも思い出すだけで寒気が襲いあの時の恐怖が鮮明によみがえってくるほど。
あの悍ましい光景をなるべく思い出さないように、冷静になって落ち着くためにふぅぅぅぅ~~~と深呼吸をする圭吾。
そして、数十秒後にやっと落ち着きを取り戻した圭吾は、念のために夢の中で永遠にその役目を終えようとしていたモノの生存確認をするため布団の上から恐る恐るその感触を確かめる。
(・・・・・よかった・・・・ちゃんと、まだある・・・・・やっぱりアレは単なる夢だよな・・・・・・・冷静に考えれば分かりきっていることじゃないか・・・・・・だって・・・・・・・)
そう・・・・第一、弟のアレを愛ゆえに切断するようなサイコパスの中でも最高位に君臨するような性格をした人物がいるはずがないのだ。
まぁ、相当昔に夫のナニを切断して捕まった女性は日本にもいたことにはいたんだけど。
まぁ、そんなことは夢だと分かった今はどうでもいいことだし、今時このご時世にそんな女性がいるはずなんてありえないというもの。
そして、もう一つ圭吾にはあの出来事が絶対にありえないと断言できる根拠があった。
それは―――――――――――――
「んにゅっ・・・・・・すぴぃーーーーー・・・・すぅぅぅぅーーーーー・・・・・・・」
圭吾の部屋の中からどことなく聞こえてくる圭吾以外の気持ちよさそうな寝息。
だが、自分以外の寝息が聞こえてきたというのに圭吾が驚いた様子は一切ない。
むしろ、またか・・・・という溜息が漏れていた。
(はぁっ・・・・さっきから布団の中の身体がいつもより暖かいのはコレのせいか・・・・・それに夢の中で身動きが取れなかったのもきっとコレが理由だな)
そう、圭吾は目を覚まして冷静になり始めた時からベッドの中に違和感を感じていたのである。
腰のあたりをギュッと両手でホールドされ誰かに抱き着かれているという感触を。
そして、その犯人におおよその見当はついていた。
というか、圭吾からすれば犯人など一人しかいないのだ。
そしてその犯人こそ圭吾が先程の悪夢が夢だと確信できる最大の理由なのだ。
自分のベッドで眠っている犯人は分かりきっているが、このままというわけにもいかないため溜息交じりに布団を捲る。
「・・・・やっぱりお前か・・・・・雪葉・・・・・」
そこには、犬の耳と尻尾完備のアニマルパジャマを着ている少女が圭吾をまるで抱き枕といわんばかりに抱き着いて寝ていた。
長く美しいさらさらの黒髪、寝て目を閉じていても愛くるしさが伝わってくる目元、女性なら誰もが羨むような小顔、高校生になってからやけに成長し続ける服の上からでも主張されつつある胸元、強く抱きしめると壊れてしまいそうなほどに細い腰、スカートタイプのパジャマから伸びるスラっと伸びる足、女性らしい小柄な体型。
他の男性にとってみれば、泣いて喜ぶような一生に一度あるかどうかのシチュエーションなのだろうが、圭吾はこんな美少女が横に寝ていても喜ぶどころか至って平静を保っていた。
(このままってわけににもいかないよな・・・・まぁ、ちゃっちゃと起こしますか・・・)
「いつまで寝てるつもりだっ・・・ほらっ早く起きろ・・・・お~い! 聞こえてるのか雪葉っ」
圭吾は少し不満さを表しながらユサッ・・ユサッ・・とスヤスヤ眠る雪葉の肩を揺らして起こそうとする。
しかし、当の雪葉はなかなか起きる気配はなく、『うーーーーーん』っと唸り声を出すだけ。
そんな雪葉の反応を目にした直後、肩を揺らしていた手を止める圭吾。
本当に起こそうと思うなら目を覚ますまで肩を揺らし続けるのが普通だろう。
しかし、圭吾には雪葉を起こすより効率的な起こし方に考えがあった。
「はぁっ・・・・アレをしないといけないのか・・・・」
「・・・・!!・・・・・・・」
面倒くさそうに呟いた圭吾の言葉に、一瞬寝ているはずの雪葉の身体が反応したように思われたが圭吾は敢えて無視することに。
ここで今からすることを止めれば余計に長引くことは目に見えていたし、実際もう経験済みであったからだ。
面倒くさそうな顔をした圭吾は仕方がないと割り切り、寝ている雪葉の耳元にゆっくりと近づいていきそっと呟くのだった。
「・・・もし、今すぐ起きてくれたら雪葉に僕からキスのご褒美をあげるんだけどなぁ~・・・・・」
「圭兄~~~っっ♪♪ やっと私の愛に応えてくれる覚悟を決めてくれたんだねーーーーーっっっ!!!」
先程まで寝ていたはずの雪葉は圭吾の言葉を耳元の至近距離で聞いた瞬間、眠たさなど微塵も感じさせない機敏な動きで圭吾に抱き着こうと飛び起きる。
だが、さすがというべきか、そんな雪葉の行動などまるで最初からお見通しだといわんばかりに圭吾は雪葉が飛び起きる前には既に回避行動に入っており、雪葉の抱きしめようとしていた両手は空を切る結果に。
その結果が不満だったのか、雪葉は抗議の声を上げる。
「むぅぅぅ~~~~・・・・・なんでお兄ちゃんは可愛いくて超愛してる妹のハグを避けたりするのっっ! 普通の兄妹ならここは雪葉を目一杯抱きしめて頭を目一杯撫で撫でしてキスをしてからディープなキスをして身体中を弄りたおして兄妹の一線を越えるのが常識だよっ・・・・・まったく、お兄ちゃんは常識というものが欠落してて妹としては困っちゃうていうか・・・」
うん、我が妹ながらこの子は一体何を言ってるのか全く意味が分からない。
一般常識を持っているという自負がある兄としては目の前の妹が言っていることが理解できないというか理解してはいけないというか。
まぁ、とりあえず言えることは目の前にいるアイドル顔負けの美少女が僕の妹の藤沢雪葉であり、まぁ発言から分かる通り普通の兄妹の関係をだいぶというか世間一般常識とまったくかけ離れて考えている・・・いわゆるブラコンであり、その中でも飛びっきりの超ブラコン体質なのである。
これこそあの夢が絶対的に夢であると断言できる最大要因なのだ。
そう・・・僕には夢の中で出てきた、サイコパス並のヤンデレ以外は完璧な姉など現実世界の藤沢圭吾こと僕には存在していないということ。
僕の切なる強い願望があんな歪んだ形となって夢に現れたということだろう。
あれだけ冒頭に姉とは何たるかこうあるべきだなどと偉そうに語り、あたかも現実に自分が思い描く理想の姉が存在するような言い回しをしたが、僕には理想とする姉がいないどころか自分自身が飽き飽きとうんざりしている完璧なまでの妹が存在するという何とも不本意な環境に置かれてる今現在。
目の前にいる妹を見ながら、圭吾は心の中で―――――――
(はぁっ・・・・・・・どこかに僕の理想とする姉萌え要素を兼ね備えた年上女性はいないのだろうか・・・・・)
と、溜息交じりにそう漏らすのだった。
楽しんでいただけたでしょうか・・・。
圭吾が見た悪夢の内容はサイコパス感が伝わるようかなり過激なものにしてみたのですが、いかがだったでしょうか、楽しんでもらえましたでしょうか?
少しでもこの作品に興味を持っていただけたなら是非今後ともご愛読のほどよろしくお願いします。
評価や感想などお気軽にお待ちしております。
もちろん文章表現の甲乙やキャラについての意見などもびしばし応募しています。
それでは、またの投稿で~~~~!!