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事件の真相


「え?警察が市村先生を連れていった……?」



 屋上でシジマがこれまでの情報を絞り込んだ日から週が明けた月曜日の朝───カレンより情報を齎されたシノブはその事態の急転さに驚きを隠せない。



 カレンの話ではその日の始業前、学園に警察が来訪したのだという。


 警察から事情を聞かされた学園長は緊急職員会議を開き、市村教諭が警察の捜査案件に何らかの関係がある可能性を通達。世界史の授業は別の授業と入れ替えられた。


 その後、市村教諭は警察と共に学園を後にしたそうだ。


「それって何の容疑?」

「それが分からないのよ。容疑というか任意で事情を聞かれるだけかもしれないし……」


 確かに逮捕であるならば学園ではなく自宅を出る際に行うだろう。では何故学園で……シノブにはそんな疑問が残った。


 市村教諭は普段物静かで素っ気ない人物。しかし、そんな印象とは別に生徒を良く見て評価する公平な人物とも認識されていた。

 少なくとも犯罪とは無縁というのがシノブの印象である。


「ホラ……私もさ?シジマ君から話を聞いてたでしょ?だから……」

「そうね……後で確認してみましょう」


 その後……授業は通常通り行われるかに思われたが、事態が事態なだけに生徒にも動揺が広がる。学園側はそれを憂慮し午後の授業は休講となった。


 当然ながら顧問が居ない為部活動も休止。下校を促される。



 そんな、すっかり人気の無くなった学園屋上にシジマ、シノブ、カレン、城島、竹脇の五人が集まり話をすることになった。


「おい、竹脇。一体どういうことなんだ?」


 肩を竦める城島。だが竹脇自身もこの状況を飲み込めていないらしく、混乱の表情を浮かべている。


「済まない。俺にも良く分からないんだ。どうして市村先生が……」


 しかし、この中で一人だけ平然とした表情の者が居る。真庭シジマである。


「竹脇先輩。そろそろ事情を話してくれませんか?」

「………真庭君」

「市村先生が警察に同行した件と紛失した写真、関係があるんじゃないですか?もっと言うなら、赤坂君が関わる何かがあるんだと思うんですけど……」


 竹脇はチラリと城島を見た。そして苦笑いを浮かべ素直に感心の意思を見せる。


「真庭君……君の言う通りだ。俺は紛失した写真を探して貰うことで赤坂を調べて貰おうとした」

「何でそんな回りくどいことしたんだ、竹脇?」

「犯罪に関わることだからだ。知ってるだろ?ウチの学園は写真部に甘い。だから歴代で素行が悪いヤツがいても隠蔽してきた」

「その話が何で市村と関わるんだ?」

「だから調べて貰っていたんだよ……憶測で良いなら話す。いや……真庭君はもう探り当てたのか?」

「僕もまだ確定には至りませんが、竹脇先輩の気にしている部分までは手が届きそうです」

「説明を頼めるかい?」

「分かりました。間違っている部分があったら修正をお願いします」


 手帳を取り出したシジマはペラペラと項目をめくり書き留めた情報を確認。何やらブツブツ呟きながら線を引く仕草を見せた。 


「あの後更に赤坂君に関わりのある人物を調べました。発端は赤坂君の写真な訳ですから、写真を欲しがる、又は写真があると困る人物が居るのかと……。それで、一時期でも赤坂君と関わりのあった人物を二人に絞りました」


 前回の説明で事務員や生徒は除外されている。城島が裏付けを取った人物達も容疑者から外された。


「一人は小河原という写真部の卒業生。写真部である先輩達は知っていますよね?」

「ああ。確か三代前の部長で面倒見が良い人だよ」

「小河原という人がこれまで写真部に顔を見せたことは?」

「ん~……そう言えば四月からひと月くらい……それ以前は知らないな」

「どんな人でしたか?」

「大学生でスポーツ記者希望とか言ってたな……そんな理由で赤坂と仲が良かった」


 これは写真部全員から同様の話が出ている。だが、シノブは少し不快な顔をした。


「私、あの人嫌いでした。馴れ馴れしくて女子に触ろうとするから」

「そうなのか?言ってくれれば訪問を断ったぞ?」

「市村先生には言ったんです。だから来なくなったんだと思います」

「そうか……」


 写真部の事情を改めて知った竹脇。だがここでシジマから小河原の情報が提示される。


「小河原ナオヤ。山計大学の三年生。父は県会議員の小河原ケンジ。この小河原ナオヤ先輩も関係者の可能性があります。校舎には入っていないので直接の容疑者ではないですけど、赤坂君との関係がどうなのかですね。あとは、化学の緒方先生」


 竹脇は緒方教諭の名を聞き記憶を辿る。それは以前、赤坂が休んでいることの確認をした時のこと。


「緒方先生?ああ……確か赤坂の担任教師でもあるな……」

「そうです。そして卒業生の小河原先輩の担任で今年の校内警備担当でもあります」

「そうなのか……」


 しかも緒方は鍵棚の直ぐ傍の席。化学の授業回数を考えれば行動出来る時間もある。


「でも、それって一番に疑われそうな位置よね?鍵棚の防犯カメラには?」

「いえ……緒方先生は鍵には触れてません。化学……つまり理科室の鍵は棚じゃなく緒方先生の机にあるみたいです」

「じゃあ容疑から外すべきじゃないの?」

「う~ん……何というか寧ろ怪しい気がするんですよ、日比野先輩……。でも、そろそろ絞り込みに入りらないと市村先生の立場も悪くなる。そこで竹脇先輩……」


 更に容疑者を絞るためシジマは勝負に出た。


「赤坂君の写真とデータ、本当は中を知っていましたね?」

「……。盗撮のデータだってことは偶然知った」

「と、盗撮?本当ですか、先輩?」

「隠していて済まない、日比野……。紛失の一日前に全員のメモリーカードの中を確認したんだ……それも偶然。赤坂は自前のメモリーカードと間違えたらしくて、部室の棚にあった」

「……それって市村先生も?」

「ああ。元々は学園長から校内活動の良さそうな写真を見せて欲しいと言われてな」


 学園長は他校との懇親会に持って行きたかったらしく、何枚か見繕ってプリントアウトするよう頼まれたのだという。


「学園長はこのことを?」

「知らない。赤坂の立場が悪くなるからな。写真部だけじゃなく学園側にも不名誉な事態になる。だから……」

「隠蔽したんですね?」

「ああ。赤坂も休んでいたからな……登校したらデータを処分させるつもりだった。そうしたら紛失騒ぎになって……」

「それを知っているのは他に?」

「ウチの部員だけだ」

「そうですか。分かりました」


 そうしてシジマは城島を見る。


「市村先生の任意事情聴取を考えれば急いだ方が良いですよね。だからここからは情報じゃなくて勘……城島先輩。竹脇先輩の話は信用出来ますか?」

「何で俺に聞く?」

「これでも城島先輩のことは信用してるからです。だから城島先輩が竹脇先輩を信じるなら僕も信じます」

「………信じる。竹脇とは付き合い長いからな。コイツが嘘付く時の癖を知ってるんだよ。それがない。だから信じる」

「分かりました。これで写真部は赤坂君以外を容疑から外します。これで容疑者は四人に絞られました」


 赤坂、小河原、市村教諭、そして緒方教諭。 


「何で緒方教諭まで?」

「偶然にしては怪しいからですよ。緒方先生と小河原先輩、そして赤坂君の関係が……まぁ、それは取り敢えず置いておきます」


 ここからは不本意ながら推理になるとシジマは困り顔で口にした。


 現時点での謎は鍵の入手法、いつ写真とデータを盗み出したのか、そしてそれぞれの関係性と動機。



 シジマは情報を元に一同に推論を伝えた。


「それが本当なら実証は大変だぞ?大丈夫か、真庭?」

「……飽くまで推測ですから。今回の役割は犯人探しじゃなく写真とデータを探すこと。見付かれば役割は終わり、見付からなかったら推理は外れて謝るしかないです」

「…………」

「因みに、市村先生は警察に全ては話していないでしょう。市村先生が明日、学校に来た場合は協力を得て実証に移りましょう」

「赤坂も小河原先輩も居ないのにか?」

「方法はあります。赤坂君は市村先生の話を聞けば姿を現すと思います。小河原先輩は盗撮について話があるとでも言えば飛んでくると思いますよ?それは竹脇先輩にお願いしても良いですか?」

「……わかった」

「あ……携帯電話は使わないで下さいね。しつこく嫌がらせされるかもしれないんで」

「そうする。あとは緒方先生か……果たして賛同してくれるだろうか?」

「名目として緒方先生は今年の警備担当ですからね。無視は出来ないでしょう」


 城島の提言で市村教諭や赤坂に余裕を与える為に、明後日に実証という運びになった。


 翌日。シノブはシジマと城島が何やら暗躍していた様子をシノブは目撃したが、敢えて触れなかった。





 そして実証当日──。

 

 場所は写真部の部室。集ったのは教諭三名、生徒九名、卒業生一名……。


「赤坂……久しぶりだな」

「竹脇先輩……」

「辛かっただろ。でも今日で楽になる……」

「………」


 写真部員は六人全員が揃っている。部員でないのはシジマ、カレン、城島の三名。


「私は一体何の騒ぎで呼び出されたんだ?」

「緒方先生。写真部の写真とデータが紛失した件は聞いているでしょう?今後の警備の為にも先ず話を聞きませんか?」

「鹿島先生がそういうならば、まぁ……」


 教師陣は市村、緒方、そしてシジマの担任である鹿島シュウジ教諭が居る。緒方教諭からの警戒を薄くする為に、昨日シジマは事情を全て鹿島教諭に明かした。

 鹿島は熱血体育教諭。生徒の為と説明した時、協力を快諾した。存外良い担任に当たったとシジマは改めて感謝した……。


 そして卒業生……小河原ナオヤ。彼は不快でありながらなも不安そうな表情を浮かべている。

 見た目は何処にでも居そうな大学生の印象。だが、身に付けている腕時計やアクセサリーの種類を見る限り裕福さが滲み出ている。


「竹脇……俺は何で呼ばれたの?」

「事前に説明した通りですよ、小河原先輩。写真部に侵入した『誰か』が赤坂の写真を盗んだ。その中身に関わることなので、赤坂に関わりのある人を全員呼んだんです」

「……俺、関係無いと思うんだけどさ?」


 小河原は赤坂を睨め付けたが、城島が素知らぬ顔でその視線に割って入った。


「まぁまぁ。ハッキリ言って今回の写真紛失は皆迷惑している訳っスから。ウチらミス研部なんて全く関係無いのに巻き込まれたし」

「知らねぇよ、そんなの……てか、お前誰?」

「初めまして、小河原先輩。俺はミステリー研究部の部長、城島と言います。ヨロピコ~」


 明らかに挑発している城島。熱血教諭・鹿島は城島の頭をズビッ!と叩く。


「痛てっ!シュウちゃん、体罰だぜ、それ?」

「シュウちゃん言うな。鹿島先生と言え……城島、他者には礼儀を持って接しろと言ったろ?」

「はいはい」

「ハイは一回!」

「へ~い」


 仲の良い二人を見たカレンはシジマに耳打ちした。



「あの二人、仲良いの?」

「ああ……一年の時の担任だったそうです」

「成る程ね~」

「それより高槻先輩は部活はサボッて良かったんですか?」

「いやぁ……だって、気になるじゃない?」

「ま、まぁ、巻き込んだの僕ですけど」


 いい加減話が進まないのでここで市村が仕切ることになった。


「私は写真部顧問の市村です。今回集まって頂いたのは写真紛失の件です。一昨日、私は警察から聴取を受けましたが、それに関係があるかは今からの話で分かるでしょう。真庭君、頼めるか?」

「はい」


 しばし沈黙した後、シジマはメモ帳を取り出した。

 頁を数枚めくり軽く咳払いした後、一言読み上げる。


「ロータリーディスクシリンダー……それとマグネットシリンダー」


 この言葉に僅かに反応した人物を城島は見逃さない。


「シジマ君、それって……?」

「写真部の鍵ですよ、高槻先輩。部室の鍵はマグネットシリンダー錠。棚の鍵はロータリーディスクシリンダー錠。これ、かなり防犯性が高いんです。特にロータリーディスクシリンダーは正確に複製しないと合鍵にならない」

「合鍵……」

「はい。そんな鍵をそこいらの鍵屋さんで直ぐ様用意するのは無理と考えました。何せ部活で持ち出す以外は常に防犯カメラに映ってますし……ね?赤坂君?」

「…………」


 特殊な鍵二種類。突破口はそこにあった。


「それを容易に造る方法が一つあります。それは発注元に登録番号で合鍵を複製依頼すること。そうすれば慌てることもない」

「どういうことなの、真庭君?」

「日比野先輩、覚えてませんか?赤坂君が鍵を持ち出した日の話……アレ、実は近くのホームセンターに複製依頼があったんです。時間的に見れば近場しか頼れなかったんでしょうね」


 車で十分程の位置にあるホームセンターに持ち込まれた鍵……しかし完全な複製は出来なかった。造った合鍵は部室を開くには至らなかったのだろう。


「店で鹿島先生と防犯カメラを見せて貰いました。映っていたのは緒方先生……」

「なっ!わ、私は知らない!」

「因みに学校と契約している防犯行者にも確認して合鍵依頼を確めましたよ?行者側も声を録音してあるのでその気になれば警察が声紋分析出来ます」

「…………」


 行者に連絡出来るのは学園関係者。それも教師のみである。


「実行犯は緒方先生……あなたですよね?」

「………」

「今回の件は盗撮に関わる話……それを念頭に話を進めましょう」


 写真部員は俄にざわめいたが、竹脇の制止により直ぐに収まった。


「緒方先生が写真部に侵入し写真を盗む……この行為には矛盾があります。第一に何故緒方先生がそんなことをするのか、第二に緒方先生は何故目当てのものがそこにあると知ったのか?」

「赤坂から聞いたんじゃないのか?」

「いいえ。赤坂君は寧ろ事実を隠していた。これは推測ですが、赤坂君は誰かに知らせたい為に写真のデータをわざと取り換えていた」

「それはつまり……」

「はい。赤坂君は誰かに強要されていたんでしょう。それに堪えきれず盗撮のデータを隠した」

「そうなのか、赤坂?」

「……はい」


 赤坂は絞り出すような声で頷いた。竹脇が傍に寄り添い赤坂の肩を叩いている姿を確認し、シジマは話を続ける。


「データの中には多分、盗撮以外に何か犯人に繋がるものがあるんだと思います。だから慌てた犯人は緒方先生に指示を出した……違いますか、小河原先輩?」

「は?何で俺に聞いてんの?」

「あなたが黒幕だからですよ」

「おい……お前、言っていいことと悪いことが……」

「実は昨日、証拠固めに幾つか行動して確かめました。緒方先生が携帯電話を机に置いていたのを確認させて貰ったんです」

「おい!犯罪だぞ、それ!」

「そうですね。でも緒方先生は訴えないでしょう?このままじゃ緒方先生が全ての罪を被ることになる」


 緒方教諭の携帯電話の通話履歴には、未登録の番号から何件も着信があった。

 鹿島教諭はその番号へ電話を掛けるよう頼まれる。


 すると……小河原の電話が鳴り出した。


「取らないんですか、小河原先輩?」

「ちっ!お前ら、俺を犯罪者扱いにしやがって……只で済むと思うなよ?」

「それが本性ですか?」


 シジマは溜め息を吐いてウンザリといった様子で話を続けた。


「この時点で市村先生は無実です。市村先生なら盗撮写真を持ち出して竹脇先輩に擦り付けることも出来た訳ですから。でもそうしなかったのは、赤坂君の今後を心配したからだと思います」

「市村先生……」

「赤坂。元はと言えば私のせいだろう。卒業生とはいえ、すんなり部を案内してしまったからな……それで厄介な相手に目を付けられた。赤坂はあんなに写真好きだったのに……済まない」


 深く頭を下げた市村教諭。赤坂が盗撮のデータを持っていた理由……それが本人の意思でなかったことに安堵の色を浮かべている。


「ところで……小河原先輩は過去に動画サイトで炎上していますよね?理由は盗撮。直ぐにアカウント停止になったみたいですけど……」

「知らねぇよ」

「大学のご友人達はあっさり認めましたよ?全部あなたのやったことだって」

「くっ……アイツら」

「あ……今、認めましたね?」

「お前……生意気な奴だな」

「はい、自覚してます。それで小河原先輩は何で逮捕されてないんですか?」


 盗撮は犯罪。アカウント停止になってもデータを持っている以上通報され逮捕が通常だ。


「何で逮捕されてないの、シジマ君?」

「高槻先輩……小河原先輩の親は誰でしょう?」

「県会議員の……あ!まさかもみ消し?」

「十中八九そうでしょうね。大派閥の政党に属していて次は県知事選を狙ってたみたいですから。国会議員にでも頼んだんじゃないですかね?地方の議員が代議士を頼るなんていうのはザラでしょう?」

「つまり主犯は小河原先輩なのか、真庭君?」

「恐らく。素行の悪さと父親の権力を考えれば、赤坂君を巻き込んで使い走りにしたんでしょう。ただ……」

「他に何かあるのか?」

「そもそも小河原先輩のような人物が学園に来るのは喜ばしく思わない人が居る筈……ですよね、緒方先生?」


 小河原ナオヤの担任も務めた緒方教諭なら、警戒していないのはおかしいとシジマは言う。写真部絡みで何か起こらぬよう市村教諭に忠告をする筈なのだ。

 それが無かったということは緒方教諭が関与している可能性も否めない。


「つまり、真庭君は三者の共犯を疑ってる訳ね?」

「はい」

「………」


 人の関わる調べものは嫌い……シジマのウンザリとした顔付きがシノブの心にチクリと刺さる。


「緒方先生が市村先生に忠告しなかったのは小河原先輩と懇意、若しくは脅されていたか……恐らくそれも盗まれたデータを見れば分かるかと」

「はっ!結局証拠も無いのかよ……お前ら全員、名誉毀損で訴えてやるよ」

「往生際が悪いですね、小河原先輩も。じゃあ質問です。コレ、何ぁんだ?」


 ブレザーのポケットから取り出したのはメモリーカード。表面には『赤坂』と書いたシールが貼ってある。


「なっ!馬鹿な!一体何時……私の机には鍵が……」

「成る程……つまりメモリーカードはまだ緒方先生の机にある訳ですね?」

「あっ……」

「これで全ての証拠が揃うでしょう。市村先生、お願します」

「わかった。待っていなさい」


 市村教諭は職員室へと向かいメモリーカードを取ってきた。そこには『赤坂』という文字が確認できた。


「クソッ!マヌケが」

「マヌケはあなたですよ、小河原先輩」

「何?」

「緒方先生から市村先生が警察に同行した話を聞いたでしょう?あの時点でデータを破壊されたらお手上げだったんです。でも、あなたは盗撮データが惜しくて破棄させなかった」

「…………」

「とにかく、データの中を見れば分かりますから」


 市村教諭は部に置いてあるノートパソコンでメモリーカードのデータを確認。そこには大量の盗撮データと二つのファイルがあった。


「一つは音声か……」


 中身は赤坂が緒方教諭に助けを求めている会話。会話内容から、緒方教諭自身も小河原に脅されていたことが窺える。

 ただ……その内容は援助交際の証拠を握られたものだと知り、鹿島教諭は怒りに燃えた。


「緒方先生……あなたは教師として恥ずかしくないのか!」

「鹿島先生の様な方には分からないんだ。私の苦悩など……」

「私は罪の話をしているんじゃない!あなたが保身の為に赤坂を救わなかったことを言っているんだ!罪の無い生徒を救えないなら教師なんて意味がないだろう!」

「…………」


 緒方教諭はフラフラと壁に寄り掛かる。その目は既に諦めに満ちていた。


「鹿島先生、取り敢えずストップです。市村先生……」

「あ、ああ。もう一つのファイルも音声か……」


 そこには小河原が赤坂を脅す会話が録音されていた。

 初めは巧妙に冗談半分で盗撮をさせ、やがてデータの廃棄段階になった際は共犯と脅した過去を赤坂が語り、小河原はそれを認める発言が収められていた。


 更に小河原は、親の権力をチラつかせ進路や就職の妨害や赤坂の家族にまで類が及ぶと明確に発言している。


「はい、脅迫確定~」


 呆れる城島。小河原はそれまでに無いほど歪んだ顔を見せた。


「ちっ!赤坂、テメェ!」

「ひっ!」

「小河原君。ウチの生徒を脅すのは止めて貰えるか?」

「クソッ!どいつもこいつも、只で済むと思うなよ?」

「その前に小河原先輩は自分の心配した方が良いですよ?ここまで証拠が揃っている以上、県会議員のお父さんでも揉み消すのは無理ですから」

「なら証拠を消しゃあ良いんだよ!」


 小河原は部室の隅にあるカメラの三脚を手に取り市村教諭に殴り掛かった。

 反射的に身を守る市村教諭……だが、小河原の狙いはノートパソコン。


 一同が反応に遅れる中、素早く小河原に立ちはだかり投げ飛ばした人物……それは日比野シノブである。


 赤坂は派手に床に叩き付けられた……。


「ぐ……く、クソッ!」

「せ、先生!早く取り押さえて!」


 シノブより一瞬遅れて動いた鹿島教諭は素早く小河原ナオヤを拘束。市村教諭が取り敢えずロープを用意し縛り上げた。


「な、何ですか、今の……」

「あれ?シジマ君、知らなかったの?シノブちゃんは道場の一人娘で超強いんだよ?」

「へ、へぇ~……」


 日比野シノブはこの場の誰よりも強いという事実にシジマは苦笑いするしかなかった……。


「何、真庭君?」

「にゃ、にゃんでもありません?」

「にゃん?」


 シノブはクスリと笑う。先程までの凛々しさはもう何処にも見当たらないシジマ……すっかり元に戻っていたのだ。



 その後、教師陣と城島、竹脇、そして赤坂を一同は解散となる。


 『学園写真紛失事件』はこうして解決となった……。




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