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夢幻の世界で、無限の時を  作者: PhiA
ー6章ー〈煉獄〉
167/176

-166-Uターンと、食性と、嫌われようと。

たまにpv数が爆発的に増えるのなんなのでしょうか……? その割にブクマ数もポイントも入らないし……不思議ですねぇ

『今日はどこを探す?』

「うーん……取り敢えず、ヴァルハラを離れてみようかと」

『あらかた探し尽くしたしね』


 会話をしつつ移動。その速度は車並……ここ最近、ステータスインフレが止まらない気がしてる。今度落ち着いてステータス確認してみよう。


「ヴァルハラから離れるといっても、どの辺に行こうかな」

『決めてなかったのか……』

「う……だ、だって、オーディンがなかなか口を割らないから」


 おかげで3時間くらい取らされてしまった。その間にレギンは行っちゃうし。戻ってしばき直そうかな。


『言い訳はよいよい。で、どこ向かうの』

「風が導くまま──」

『《狐火》』

「うわっとぉ!?」


 足を引っ掛けるように出現した火球を避け、全身を続ける。


「危ないじゃん!」

『テキトーに旅する方がよっぽど危険だよ!』

「ほー? じゃあデカさだけが取得の象さんは旅のしかた、知ってるんだ?」

『知ってるに決まってるだろ! 予定の立て方、荷物の準備! 君はそのへん全くやらないから怖いんだ!』


 なんてことを! これでも多少は馬車で旅してたんたぞ!


『まぁ……僕の場合、旅というよりは移動だったわけだけど。でも食料やら移動期間やらを計算してた記憶はあるよ』

「あのデカブツそんなこと考えてたのか」

『で、デカブツ……』

「それで、アースはどこに向かったらいいと思う?」

『そうだなぁ……アレスの出身地なんてのは?』

「却下。わざわざ地元に隠れるのはイキリヤンキーのすることだよ。それに、前例的にもそこには行かなかった」

『だよねぇ……全能神のお膝元とか、自殺願望もいいところだよ』


 見つかったが最後、神の雷に焼かれて死ぬだろう。まあもっとも、奴がその程度で死ぬとは思えないが。


『じゃあどうするのさ』

「うーん……やっぱり戻ろうか」

『ええ!? せっかく移動しながら会議してたのに!?』

「ヘイムダルさんに聞くのが早いと思うんだ」

『あー……なるほど。千里眼だね?』


 千里眼。

 あの爺さんは女湯を覗くことに使っていたらしいが、本来の使い方をしてもらえば、きっと奴らの居場所もわかるだろう。


『でも、取り合ってくれるかね?』

「まぁ、無理矢理にでも使ってもらうさ」

『あんまり神様舐めてると足元掬われるよ?』

「油断はしないさ」


 私たちはUターンを決め、再びヴァルハラへと戻っていくのであった。


 ◆


「ところで王サマ、今何してんの?」

「え? あ……これのことか。報告書の確認と整理だ」

「へー……」


 ソファーに座り直す天……レギンレイヴ。

 手伝ってくれる訳では無いんだね。


「暇だなぁ……」


 彼女は一体何をしに来たんだろうか。フリードを心身ともにボコれるくらいだから、相当な手練なのは確かなんだけど……こう、日常生活がだらしない気が──


「今、失礼な事考えてたでしょ」

「いえそんなことは」

「わかるんだよ……藍波で鍛えられた悪口センサー舐めないでよね!」


 あの問題児はここまで僕に迷惑をかけるというのか。


「だらしないなぁと思っておりました」

「なんで口にしたの!?」

「えっ」

「えっ」

「……いや、言えということなのかと……」

「わざわざ悪口を聞きたいやつがいてたまるか!」


 ソファーをぶん投げられたので、【蛟】に食べさせる。あっ、しまった。


「へぇ……面白そうなの、持ってんじゃん」


 慌てて【蛟】を背に隠すが、もっちゃもっちゃとソファーを咀嚼している音が丸聞こえだ。

 だんだんと細められていくレギンレイヴの目からは視線をそらさず、未だに半裸のフリードにハンドサインを送る。


『我、救援ヲ求ム』


 それに対し、フリードの返答は──


『ガ・ン・バ・レ』


「おおいフリードォ!?」

「先手必勝ぉ!」


 執務机を叩き斬られて盛大に書類が舞う。せっかく整理したのに!

 ゴロゴロと床を転がりながら距離を取り、汚らしくゲップをする【蛟】を構える。


「ずんぐりの癖にいい動きするじゃん!」

「光栄ですな」

「喜んでる暇はないぞぉ!」

「【蛟】っ!」


 手加減されているのか、見え見えの太刀筋に対して正面からぶつける。ぶつけることで【蛟】はそれを喰らい、破壊する……


 はず、だった。


『ギョェェェェァ!?』

「っ!?」

「あー……神界産の剣は口に合わなかったみたいだね。ほら、スラム街でゴミくってるような奴らが急に高級食材食べたみたいな」


 打ち付けた部分をごっそりと失わされているレギンレイヴの剣だが、一体何で出来ているのだろうか。

 それにしても、刀身をくねらせて苦しむ【蛟】など見たことがない。まるで即効性の毒でも喰らったかのように のたうち回っている。


「取り敢えず喰った分吐かせないと……」

「ああ、それなら任せて。ていやっ」

『ゴボェァ!?』


 レギンレイヴが【蛟】の柄部分を足で踏みつけた途端、苦しそうなうめき声とともに鉄の塊が吐き出された。


『ウ、ウ……』

「な、泣いてる……」

「よっぽどマズかったんだろうね」


 目のように見える部分から水のようなものを垂れ流す生体剣に少し引きつつ、吐き出された鉄塊を摘むレギンレイヴの方に目をやる。

 こちらの視線に気付いたのか、首を90度に曲げ……ゴキンッていったけど大丈夫かな、あれ。


「……んしょ。ごめんねー、ちょっとばかしスイッチ入っちゃった☆」

「いや、それはいいが……首」

「さてさて、その書類の中からちょっとお借りして……お、これいいじゃん」


 首のことについては触れさせてはくれないらしい。華麗に無視を決め込んだレギンレイヴは書類の山から一枚の依頼書を取り出し、口で指先を切ると勝手に血判を押してしまった。


「魔獣の殲滅依頼……危険だ」

「だーいじょぶ、だーいじょぶ。下界の生き物は基本的に【神性】持ちには届かないから。見た限りCランク以下だし、ライド使わずしてボッコだね」

「はぁ……」


 ランクCがどのくらいの相場かはわからないが、小型魔獣から大型魔獣までいたはずだ。個々の脅威性は低いにせよ、群れともなると話が違ってくる。

 それをたった一人でなど、とてもではないが送り出すことはできない。


「なら、誰か見張りでもつければ? ま、足手まといじゃないなら誰でもいいよ」

「いや、私が出よう」


 さっさと出かけようとする彼女にあてがえる人材など、フリードくらいのもの……しかし、そのフリードは未だに半裸で立ち尽くしている。いい加減立ち直ってほしいところだ。


「へー、王サマ直々に付いてくるんだ」

「足でまといにはならんさ」

「さっきの子は置いてくの?」

「それなんだが……」


 手元の【蛟】をチラリと見ると、なんとなく、目が合った気がした。そして、


『ツレテケ』

「空腹しか伝えて来なかったお前が珍しい……」

『ツレテケ』

「だ、そうだ」

「あ、いや……別にいいんだけど」


 途端に嬉しそうに輝き出す【蛟】にレギンレイヴはドン引きだ。まさかとは思うが……【蛟】、目覚めたか?


「移動はどうするか……」

「私がライドして連れてけばいいよ」

「おお……それは助かるのだが、なんというか申し訳が」


 何から何までしてもらうというのは、一国の王としてどうなのか。しかし、彼女の厚意はすごく嬉しく思う。

 と、それを聞きつけた鳥公が再び顕現して、


『おい! この発酵してウジのたかるような生ゴミより下等で下劣で存在価値皆無なモノを、ライド状態で密着させるというのか!?』


 僕は、彼女──主に彼女の相方──と上手くやっていけるのだろうか。

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