第8話
赤髪がボードを呼び出して武器を装備する。
それは綺麗な綺麗な日本刀。見るからに斬れ味よさそう。あんなので斬られたら即死だ。
「首を落とす。言い残すことはないか?」
「まるで俺が悪人みたいな言い方で」
「あたしの胸を揉んだのは罪だ。セクハラだ。打ち首だ!」
胸を揉んで打ち首かあ。あれは事故なんだけど。これはあくまでゲームだぞ。仮想の身体なんだぞ。
「打ち首は勘弁を」
「神や仏が許しても、あたしは許さん! 覚悟!!」
あー死んだ。はい死んだ。ゲームとはいえ、初めて死んだ。
日本刀を装備して赤髪ポニテへと変化した美少女に打ち首にされてしまった――あれ? いくらなんでも俺の独白長くね? 痛みもないしあれれのれ?
「も、もしもーし。打ち首はまだでございますぅ?」
「あっ、あたしの胸! どうだった!」
「どうって?」
「やっ、柔らかかったかと訊いているっ!」
どうして殺すことから胸の感想に? そりゃあ柔らかかったけど。サイコーによかったけど。正直に答えれば許してくれちゃったりするのかね。
「サイコーした!!」
よし。俺は嘘をついてないぞ。正直に答えてやったぞ。
「そっ、そうかっ! それはよかった。フフッ」
なんだなんだ? 自分の身体に腕を回してモジモジ始めたぞ! 顔を赤くしてるし様子がおかしい。なんかヤバい。
「その日本刀。妖刀なんじゃないか」
「ただの刀だ。フフッ」
「おい。俺は結局どうなるんだ」
「あたしの胸を褒めた分、大幅に減刑してやる。あたしとフレンドになれば許してやる」
なんだそれ。こいつ、別の意味でヤバくないか?
フレンドになればってつまり、俺のデータを見せろってことじゃん。まさか友達が欲しかったのか?
「嫌だと言――」
「――覚悟!!」
どうやら図星らしい。まったく。友達になってくださいっていう態度じゃなかっただろう。仕方ない。フレンド枠は余裕綽々だ。なってやろう。