第74話
ククク。我の見た目に油断をしていたようだ。人は見かけによらずと言うのに。
凄まじい刀捌きだったが苦ではない。ベアーちゃんの本領を出すまででもないようだ。
「そんなものか? だいぶ自信があったと見受けられたが」
「フン。まぐれで受け止められた分際で!」
距離をとったか。てっきり手数に任せてゴリ押してくるかと思っていた。冷静さを失っていないようだ。ククク。
「どうする姫。好きに来るがいい」
「その言葉、後悔しても知らんからな!」
消えた――まさか姫は魔法使いなのか? だとすれば面白い者だ。まだまだ充分ゲームは堪能できるのぉ。
この我を底から楽しませてくれるプレイヤーは久しぶりだ。少し本気を出したくなった。
「吼えろ――ベアーちゃん!」
「なぬ!?」
我に近づいたことを後悔するがいい。ベアーちゃんの咆哮は重力を重くする! ベアーハウリングとでも名づけようか。
「ベアーちゃんは優秀な下僕。世界が望む我の下僕。強くて当たり前であろう。ククク」
「……身体が……!?」
「終わりぞよ。楽しかった、姫」
ベアーちゃんの一撃を喰らうがよい。
「――バカな小娘め」
なんだというのだ!? ベアーちゃんの攻撃を受けた瞬間、姫の身体が粒子に!!
「熊に頼りすぎのようだな。身体が留守だ」
(我の背後――!?)
「遅い!」
「ぐはっ~」
み、見えなかった。デコピンされただけなのに痛い。これが姫の戦い。それにしても痛いぞよぉ。
「情けない。戦いはもっと厳しいものだ。デコピンで苦しむな」
「ククク……いつかリベンジしてやる!」
我を負かしたことを後悔させてやる。今はせいぜい強者ぶるがいい! ククク。




