第49話
赤井の度重なるストーキングから逃れた俺と結は、家電量販店へ来ている。冷房が効いているからなのが一番の理由だ。
店内ではテーマソングが流れている。ポップな曲調が気分を不思議と盛り上げてくれる。
「あーあーあーあー」
結が扇風機に向かって声を出して遊んでる。結なりに気分を変えようとしているのだろう。けど恥ずかしいからやめてくれ。ほかの客に笑われてるぞ。
「結。新作ゲームがあるぞ」
「新作だと? 何か目玉の作品があったか?」
結がひょこっと顔を出す。ていうか近い。完全に俺と接触しているのにお構いなしだ。
「俺は、特に目ぼしいのはないよ」
「……あたしもないな。惹かれん」
俺と結の好きなジャンルは一致している。パズルやシミュレーションの類いは苦手なのも一致している。新作コーナーに置かれていたのは、ARのパズルゲーとVRの戦略シミュレーションゲーだった。
「そっか。これからどうする? 行きたいところはあるか?」
「ならばゲーセンに行こう。遊べて涼めて快適だろ」
「何か増えてるのかもしれない。久々のゲーセンといきますか」
ゲーセンなんて半年ぶりだ。いつも混んでいるイメージがあるから足を向けなかったんだ。結と一緒なら人混みも耐えられる……かも。




