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第43話
映画館から出た俺と結は、近くのハンバーガーショップに来ている。今日が新商品の発売日らしく、店内は賑わっており、空いているテーブルを探すのにも一苦労。
なんとか座ってトレーに載っているドリンクを飲む。さっき食べたポップコーンのキャラメル味が口に残っているせいなのか、いつもよりもコーラが薄く感じる。俺は氷を抜く派だ。
「始起、このあとはどうする?」
「俺は特に希望はないぞ。結は、行きたいところあるか?」
「ないから訊いている。夏だからと甘くみていたようだ。どこもかしこも人だらけではないか」
「夏休みだししょうがない。暑くても出かけたい衝動に駆られるんだろう」
家にいても「邪魔なんだよ。兄という存在が」と妹に罵られるだけだ。まあ、全員が俺みたいなわけじゃないが、本当は居場所を求めているだけなのだよ。断言はしないけどさ。
「始起。どうやら、このあと近くでトークショーがあるらしい。赤井森夜のな」
赤井森夜……ああ、あの若手俳優か。若手俳優の登竜門というドラマに出まくって人気爆発。大ブレーク中だ。さらに凄腕ゲーマーときている。ちょっと行ってみよう。




