第4話
気まずい。気まずい。気まずすぎて味がしない。せっかくゲームでも味が再現されているのに! 女の子と二人きりだってのにムードも甘さ0だ。
「アイスの1つや2つでメソメソウザい」
「おごってもらっといてそれはないだろう!?」
「おごらせてあげたんだ。感謝しろ」
なんだその言いぐさは! なんでこう上からなんだ。
「もういいだろう。俺は行く」
「待て」
「もうおごらないぞ。俺だって暇じゃないんだ」
こんなやつとはおさらば願おう。
掌でホログラムのボードを呼び出し指を滑らせる。さーて、どこに行こうか。
「出すもの出せと言ったはずだ。アイス1つであたしの気が済むとでも?」
「俺から何を巻き上げるつもりだ!」
もしかしてこいつは盗賊なのか? 俺の装備やアイテムを盗ろうって魂胆か。だとすれば逃げるが勝ちだ。
「何も巻き上げるつもりはない。ただ出せと言っている」
俺の装備は短剣だけ。持ってるアイテムだって拾い物だ。
このゲームは自由なんだ。ただフラフラしているだけでもいい。ただ誰かと喋るだけでもいい。戦いたいやつは戦えばいい。
「キミに出すものなんかない」
「何をそんなにビビっている。あたしはただ、そっちのデータを出せと言っているだけだ」
「はあ?」
意味が分からん。俺を嫌っているやつがなんで?