第38話
えーい! どいつもこいつも見る目ないッス! あちしの世紀の小説をボツとはおかしい! 文句の1つでも言ってやる!
「スーパー不機嫌だな。どうしたさー?」
「この理不尽をぶつけたいッス! ああ!! ムシャクシャするぅ!」
「なになに。『第36回・新世紀革命小説大賞に応募いただきありがとうございます。厳選なる審査と協議の結果、神谷転舞様の作品は残念ながら落選となりました。またの応募をお待ちしております』か。こんなのに応募してたんだ」
「あちしの完璧な小説を落とすとはいい度胸ッス。別の出版社の大賞に応募して後悔させてやるッス!」
いろいろと指摘しているみたいだけど関係ない。あちしはあちしを信じるだけ。自分を曲げたりはしないッス。
「よければ僕に読ませてくれ。お前の書いたものが気になったさー」
「駄目ッス。承にはキチンとした形で読ませたいから」
これも譲れない。承には読んでほしいとずっと前から思っている。けどそれは今じゃない。ちゃんと認められてから読ませたい。
「そうか。っていうか初耳さー。お前の夢が小説家だなんて。意外さー」
「笑いたければ笑うッス。こんなヒッキーが何を夢見てるんだって」
「誰が笑うかよ。夢を持ってるなんて凄いさー。まだまだ遊びたいはずなのに、夢のために時間を割いて書いたんだろう。お前は夢のために頑張ってるんだろう。引きこもりだとか関係ない。お前を指差して笑うやつがいたら、僕がその指を折ってやる。だからお前は折れるなよ」
えっ!? 驚きッス。まさか承に励まされるだなんて。しかも真顔で。ちょっとだけドキッとしてしまったッス。こういうのを不意討ちというんだ。
「承のくせに。バーカ」
お陰でムシャクシャが吹き飛んだッス。持つべきものは幼馴染、か。




