第34話
俺の名前はシュガー。つまりはゲーム中である。
目の前に建っている家をボケーッと眺めているが、俺の家ではない。お! 家主が出てきたぞ。
「何を突っ立っている。さっさと入れ」
赤髪ポニテのリバーアイランドが出迎えてくれた。フリル付きのエプロンを着けている。残念ながら裸ではない。
「勝手に入るわけにはいかないだろう。というか勝手に入れない」
「勝手に入ってきたら殺すがな」
「斬りたいだけじゃないかよ!」
家が建っているのは草原。つまりフィールド。PKできちゃうわけだ。
「刀は斬ってこそだ。フフフ」
不敵な笑みを浮かべながら俺を見つめる赤髪。持っているものが刀でなければかわいいのにと思いつつ、新築の中へと足を踏み入れた。
鼻をつくのは新築の匂い。間取りは1LDK。テーブルの色は白。どういうわけかイスは4脚。
「何をしている。さっさと座れ」
言われるがまま赤髪の向かいに座る。テーブルに置かれている花瓶を何気なく見ていると、俺の視界に赤髪が入ってきた。
「どうした?」
「それは造花だ。それよりも気づかんか? 今日のあたしの格好を」
赤髪は、立ち上がるやクルリと回る。俺にエプロン姿の感想を求めているようだ。
「似合ってるぞ。なんだか新妻っぽい」
「にっ、新妻っ!?」
赤髪はオドオド照れだした。照れるくらいなら訊かなきゃいいのに。いいものが見れていいけど。




