第296話
映画の撮影が終了した。あとは編集やら加工と、映像のプロに任せるのみに。役者は1年後の映画公開までは一区切り。モブでちょこっと出ただけの俺が言うのもなんだけど、映画って大変だよ。
まあ、そんなこんなで後日、俺たちはゲーム内で打ち上げをしている最中だ。映画スタッフとの打ち上げは先日済ましていて、今日は仲間内だけでというわけ。
「なんか楽しいですよね! 無駄に騒いじゃいます」
「乱はいつも楽しそうだけどね」
「そうかな? 妾には分からないや」
氷室のやつ、どさくさ紛れに風祭の胸揉んでるし。中身はオヤジかい。
「あたしたちまで参加してよかったのか。ほんのちょろっと出ただけなんだ」
「それは俺たちも同じだよ。こういうのは楽しんだもの勝ちだよ。主役の赤井とヒロインの白石が楽しんでいるんだ。気にせず楽しもう」
「そうやそうや! わたしは充分に楽しんでるんや!」
「こういう空気、凄く好きです」
百萌も魅羅も独乃も凄くよかったなあ。高性能AIの演技力には引き込まれたぜ。
「赤井さんが俳優なのを再認識したさー。僕、素直に感動しちゃった」
「白石の演技に心が震えたッス」
「そんな! おだてても何もでないよ!」
赤井と白石の演技は本当によかった。あまりドラマで感動しない俺が震えたんだ。オーバーじゃない。
「あたし、ちゃんと演技ができていただろうか」
「今更気にしたってどうしようもないだろう。演技素人にしては上等だろう」
俺だって不安だよ。台詞は一言だけだったけど、その一言に10テイクもやることになるとは。監督の気合いが半端なかったなあ。
「ただ立っていただけのわっちに死角なーし」
水岡さん、それはそれで無念じゃないか?
「主、今日は飲もう飲もう!」
「金髪の、さあさあ!」
エクスカリバーとワイスという2人の美少女からジュースを注がれる俺って、どう映っているのだろう?
「貴様! あたしが注いだのも飲むのだ!」
訂正、3人の美少女からだった。どうして火花散らしているんだ。全部飲むから落ち着いてくれ。
「ククク。殿のハーレム体質が止まらないぞよ」
熊切め、俺で楽しみやがって。俺は結一筋なんだぞ! 誤解だけはしないでくれ。
そんなこんなで楽しい打ち上げは過ぎていった。楽しい時間はあっという間に過ぎていくなあ。




