第２９１話
ワイスの言う通りに進んでみたらなんとまあ。女子が乱暴されそうな現場に来るとは。
今までいろんなＮＰＣを見てきたけど、この子は群を抜いてかわいい。語彙力がないから、かわいいとしか表せない。
「ひっぐっ！ ひっぐっ！」
「もう大丈夫だよ。俺がキミを守る」
エクスカリバーの行方は気になるけど、あの男を放置しとくわけにはいかない。
「あんた。悪いけど大人しくしてもらう」
「黙って捕まるバカに見えるか？」
「いいや。ただのバカにしか見えない」
――相手は剣を持っている。私を使って。
「ありがとうワイス。力を貸してくれ」
エクスカリバーがいない以上、頼れるのはワイスだけ。短剣だけの俺は腰抜けだが、今は違う。
「そんな貧弱な剣で勝てると？ こちとら大剣だ」
「だから？ 大きければいいってもんじゃない。力だけじゃ駄目だ」
レイピアを活かすには突きだろう。力任せに大剣を振り下ろした一瞬を狙えばいける。
「口だけは達者だな！ おらぁ！」
はあああ！？ 大剣を投げ飛ばした！？ 本当に力任せだなあ。脳筋すぎるぞ。
そんで肉弾戦に持ち込む、と。あんたに武器なんか要らないじゃないか。どうして剣を盗んだのか問いつめたいぜ。
――金髪の！
そうだよね。わざわざ肉弾戦に付き合う必要なんかないんだ。とっとと終わらせる。
「ワイスピアー！」
柄にもなく叫んじゃったが決まったぜ。男の身体に一瞬で１００回突く技。オーバーキルだったかも。
「ぐは……！！」
「剣は返してもらう。すぐにギルドの者が来る。傷は癒えるから我慢してくれ」
――金髪の、まだ気づかんか。
「ん？」
――そこの彼女がエクスカリバーだ。
「え！？」
「あーりゅーじぃー！ ごべんばぁざあーい！」
泣きじゃくれる姿までかわいいとは卑怯な。いや、一番卑怯なのは、エクスカリバーということだ。信じられないぞ。
