第287話
ボクがボクを握っている不思議な状況。目の痛みなど忘れ、エクスカリバーを凝視してしまう。
――剣は振らなければ重りだ。早くやつを斬り倒せ。
おそらく、デストラの仕業だろう。説明もなしとは。けど本物のエクスカリバーなら、あんなモンスターなんて敵じゃない。
モンスターに剣先を向け威嚇。そして身体を構え、縦に振りきった。
「デリート!」
主の十八番でありボクの十八番。対象物を瞬時に消滅させる技。これで異臭はおさらばだよ。
――何故臭いだけなんだ。
「ボクは剣だ。斬って決着させたい」
――妙なところで律儀な。まあいい。好きにするがいい。
呼吸を整える。余計な力は抜いて、気はまったく抜かず。狙いを定めて駆けていく。ボクに――エクスカリバーに斬れないものはない!
草花が散っていく。気持ち悪い見た目が消えていく。それはボクの勝ちということ。どうだ!
「ふぅ」
――えらく苦戦したな。本来の実力を出せば長引かずに済んだものを。飼い主に似たようだな。
「ボクは飼われてなんかない。ボクと主が似ているだなんてありえない」
――自分じゃ気づかないものよ。さて、どうする。
「草原は面倒だ。別のフィールドに行きたい」
――どこへ行こうと面倒なことになる。街に行く方が賢明だ。
街かあ。上手く歩けるだろうか。剣が上手く歩くコツとかないものか。




