第250話
噴水広場で踊りを堪能して移動すること数分。俺たちは1枚の紙に目を奪われていた。
なんと、プリンの大食いだそうだ。さっきクレープを食べたばかりなんだが、甘いものは別腹だ。特別な参加資格とかはないみたいだし、これは参加しなきゃだぜ。
「キミも出るだろう?」
「もちろん――と言いたいところだが遠慮するのだ。さっきのクレープで甘さは満たしている」
赤髪が食べ物に飛びつかないだと!?
「殿の勇姿を見ているぞよぉ」
「わっちも。ゲームとはいえ、プリンの多量摂取は堪えそうだ」
「スイーツは味わうべきと私は思う」
みんなして出ないのかあ。じゃあ俺もやめとこうか。
「シュガー。お前が出る幕はなさそうだ。あれを見てみるといい」
ホワイトストーンが指差す先に見える少女。大食い会場に堂々と座るゴッドバレーの姿があった。
心配そうにゴッドバレーを見つめるベルウッド。大丈夫なのか?
「おーい、ベルウッド」
「……シュガーの兄貴」
「ゴッドバレー、大丈夫なのかよ?」
「わ、分からないさー。食べるプリンの大きさはバケツサイズ。1個食べるだけでも大変さー」
バケツプリンなのか!? そこまで見てなかった。
「あたしたちは、見守ることしかできない。ガチンコ勝負なのだ」
ゴッドバレーを心配するなか大会が始まった。
青いバケツの中にあるのは、これまた青いプリン。食欲が失せる色なんだっけ。こいつはキツいぞ。掬っても掬っても減らないんだろう。出場者の顔まで真っ青だ。
「8人中6人がギブアップ。残る2人によるサドンデスなのだ」
よくもまあやるよ。俺じゃ残れなかっただろう。
ゴッドバレーはバクバクと食べ進めているが、相手はバケツを傾けて飲んでいる。プリンをドロドロに崩しちゃいけないなんてルールはないとはいえ……どうなんだろう。
「「――う!?」」
2人揃って苦悶の表情……どうなっちゃうんだ……!?
手に汗握るっていうのはドキドキもんだよ。
「ウゲェエエエ――!!」
「あ……ちしの……勝ちッス……」
相手のリバースとゴッドバレーの絞り出した勝利宣言。勝負が決した瞬間、割れんばかりの拍手が沸き起こった。
まあ、優勝したゴッドバレーの表情は勝者のものじゃないんだけど。……プリンは暫くいいや。




