第244話
神聖王都――アバランティア。エルフやドワーフといった種族もNPCとして存在しているが、特に敵対している様子はなく、仲よく談笑している。街並みはRPGのそれ。まあ、近代的なものもチラホラ見えるが、そこはゲームだしファンタジーだろうし。
F&Dやフロンティア同様、レベルの概念も数値も存在していない。体力表示は色で分かり、装備によって攻撃や防御が上がった場合も色で分かるようになっている。そもそもどうして数値化しないのかと疑問だったのだが、「レベルなんて飾りなんだから無くしちゃえ」というスペシャルアドバイザーの一言で決まったからだそう。
「さて、何をしようか」
俺は何も考えていない。結局みんなに決めてもらおうと思っているのもある。
「貴様はどうしたいのだ」
赤髪ポニテのリバーアイランドが訊いてくる。
俺も含めてアバターを引き継いだようだ。正直安心している。赤髪は赤髪でなくちゃ。
「俺は考えていないんだよ。みんなはどうしたいんだ?」
「ククク。我は任せるぞよぉ」
「わっちも同意見。このゲームについては初心者だからーね」
「折角だ。街をぶらりとするだけでも楽しいことだろう」
「レッドウェルの意見に賛成だ。このホワイトストーン。いろいろと見てみたい」
「異論はないさー。エルフなら弓矢について訊けるかも」
「ただNPCを観察しているだけでもネタになるッス」
「何事も最初が肝心なのです。じっくり過ごしていきましょう」
「初めてのVRゲームで緊張と興奮がごちゃ混ぜしてる」
意見が纏まったみたいだ。まあ、街の探索は基本だよなあ。よーし、行くぞ!




