第23話
眠い眠い。なぜ僕がこんなことを。向かいに住んでいる幼馴染を起こさなきゃいけないんさー。どうせ起きたところで出てこないんだ。起きようが起きまいが一緒さー。
「おーい転舞ー、起きろさー。もう朝さー」
あいつの部屋の扉をノックして呼びかける。まあ、こんなことで起きるのなら苦労しない。しゃーない。実力行使といきますさー。
「邪魔するさー! 毎日毎日、起こしにいく僕の身にも――!?」
僕は目を疑った。そして反応に困った。ベッドで寝ている中2の幼馴染がパンツ丸出しで寝ていたからだ。
この状況で転舞が起きたとしよう。間違いなく僕にあらぬ疑いがかけられてしまう。それは勘弁願いたい。
「…………」
寝返りを打ってこっちを向いたさー。なんて幸せそうな寝顔なんさー。お腹まで出してるさー。
「どうしよう!?」
こいつがいつ寝ようが起きようがどうだっていい。僕には何の影響もない。だが起こさないといけない。放っておくと四六時中寝ているようなやつだから。無用な心配を生みたくはないさー。
「転舞、起きるさー。朝起きて牛乳飲むんだろう?」
「……むにゃむにゃ……ぎゅうにゅう……牛乳!!」
凄いな牛乳! こいつにとっちゃ死活問題を解決する頼みの綱だけあるさー。
「起きたよう――」
「――きゃあああ!!」
起きて早々グーパンだと!? 一切の手加減ないさー。
「痛いさー」
「あちしの下着を見て帰れると思ってるッス?」
「誰が見たがるさー! 起こしに入ったときにはパジャマが脱げてたさー」
「見たことには変わりないッス。この変態!」
ただでさえ寝起きが悪いのに面倒なことになったさー。仕方ない。こうなれば奥の手さー。
僕の身体に襲いかかるペチャパイ幼馴染を抱きよせて頭を撫でてやると――ほーら、大人しくなったさー。
「少しは冷静になったか?」
「……離せっ。牛乳を飲まなくてはいけないッス」
素直に離してやると逃げるように部屋を出ていきやがった。少し顔が赤くなってた気もするがまあいい。僕は帰るとするさー。
「……ったく。もっと自分に自信持てよ」
転舞の机には紙が無造作に置かれている。走り書きのような殴り書きのような文字がビッシリと。本人以外には絶対に読めない。解読不能。
だけど僕には分かる。これが転舞の叶えたい夢だってことが。だてに14年も幼馴染やってないさー。
「今日は何時にインしようかさー」
まさかこのあと、ゲーム内で遭遇するとは思わなかったさー。




